eぶらあぼ2017.5月号
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30浦安音楽ホール外観客席数303の贅沢で親密な空間 オープン前のコンサートホールに足を踏み入れると、まだ響きの洗礼を受けていない純度の高い空気や、新築物件ならではの香りに迎えられ、ごく自然に期待感が高まってくるものだ。多くの人が“夢の楽園”を訪れる千葉の舞浜からひと駅、JR京葉線の新浦安駅に隣接する複合ビル内に生まれた「浦安音楽ホール」。客席数303という、コンパクトでありながらも豊かな響きを有する「コンサートホール」を中心に、客席が可動式で音楽・演劇・ダンスなどいろいろな公演に使用できる「ハーモニーホール」(201席)、さらには音楽活動をする市民たちが気軽に集えそうな5室のスタジオなどを併設した施設である。 正式なオープンは4月8日だが、3月25日にいち早く、関係者などを対象とした「音響テスト&プレミアム試奏会」が行われた。 会場となった「コンサートホール」は、天井が高いシューボックス型。ゆるやかな階段状の傾斜が特徴である1階席(13列、最後列は車椅子席)には、後方左右に14席ずつの、中2階席とでもいうべきコーナーがある。ステージの高さがあまりないためか、最前列から3列目まで(4列目との間に通路がある)は出演者と至近距離となり、まさに「目の前で」といった状況で生々しい音楽と緊張感のある(またはリラックスした)パフォーマンスを受け止めることになるだろう。諏訪内晶子(ヴァイオリン)、仲道郁代(ピアノ)、ジャン=ギアン・ケラス(チェロ)、河村尚子(ピアノ)など、内外の一線アーティストたちが登場する2017/18シリーズの豪華なラインナップを見れば「このアーティストの演奏をこんなに間近で!」と興奮する方も多いはずだ。 もちろん1階席は(中2階のようなボックス風のコーナーも含め)、どこであってもステージから近いため、音楽もストレートに客席へと届くはずだ。2階席は正面が3列で全65席、そして左右のバルコニー席(11席ずつ)があり、こちらも視覚的には申し分ない。2階両サイドから見渡すと、ホール全体が段々畑のような印象も受ける。様々なアイディアが駆使されて生まれる鮮明で豊かなトーン 今回の「プレミアム試奏会」では、アコーディオンの御喜美江、ヴァイオリンの水谷晃、ヴィオラの馬渕昌子、そしてチェロの丸山泰雄が、ソロやデュオ、トリオ、全員でのクァルテットなどで演奏を聴かせた。筆者は2階席正面の最後列、もっとも天井に近い場所で聴いたが、まず驚いたのは明快かつ鮮烈な音が届くことであり、しかも和音を構成するそれぞれの音の粒までもがはっきりと聴けたことだ。豊かな響きをもつアコーディオンのソロはもちろん、ヴァイオリンとヴィオラのデュオやチェロを加えたトリオにおいてもその印象は変わらず、神経を集中すれば、弦楽器のライヴ感を象徴する弓と弦の摩擦音までも聞こえてきそうな勢いである。 もちろんヴィヴィッドな音だけではなく、2階席は壁や独特のライヴ感がある音響と、音楽家の姿を身近に感じられる空間、そして思わず目を見張る充実したコンサートのラインナップ。首都圏にまたひとつ、新しく個性的なホールが誕生した。取材・文:オヤマダアツシ4月8日、浦安にクラシック音楽の新しい拠点が誕生!浦安音楽ホールURAYASU CONCERT HALL

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