eぶらあぼ2017.5月号
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176BDDVDCDCDCDフォー・シーズンズ/ダニエル・ホープファゴットと弦楽器による室内楽/前田信吉ショパン・ライヴ・アット・サントリーホール/仲道郁代トリビュートロジー/モルゴーア・クァルテットヴィヴァルディ:四季/ニルス・フラーム:アンブル/マックス・リヒター:スプリング1/エイフェックス・ツイン:アヴリル 14th/チリー・ゴンザレス:8月の疑念 他ダニエル・ホープ(ヴァイオリン)チューリヒ室内管弦楽団 他ロゼッティ:ヴァイオリン、ヴィオラ、ファゴット、チェロのための四重奏曲/ガル:ファゴットとチェロのためのディヴェルティメント/ダンツィ:ファゴットと弦楽のための四重奏曲前田信吉(ファゴット)景山誠治(ヴァイオリン)百武由紀(ヴィオラ)花崎 薫(チェロ)ワルツop.34-1「華麗なる円舞曲」、夜想曲第20番「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」、バラード第4番、練習曲第3番「別れの曲」、バラード第1番、ピアノ・ソナタ第3番 他仲道郁代(ピアノ)キース・エマーソン:タルカス、スティル…ユー・ターン・ミー・オン、トリロジー、悪の教典#9第1印象パート1・同パート2、悪の教典#9第3印象 他モルゴーア・クァルテット【荒井英治 戸澤哲夫(以上ヴァイオリン) 小野富士(ヴィオラ) 藤森亮一(チェロ)】ユニバーサルミュージックUCCG-1765 ¥2800+税コジマ録音ALCD-9170 ¥2800+税収録:2010.2/21、サントリーホール(ライヴ)ソニー・ミュージックSIXC-18 ¥6000+税(BD)SIBC-216 ¥5000+税(DVD)日本コロムビアCOCQ-85332 ¥3000+税「四季」に愛着をみせるダニエル・ホープがマックス・リヒター作品に次いでこの曲を取り上げた。アルバム前半にはヴィヴァルディの同曲を演奏し、そして後半にはそれを詩的源泉としてチャイコフスキーの「四季」よろしく1曲ずつ12ヵ月分=12曲(+補遺)を収録、いわばホープ版の「四季」。その12曲はラモーからワイルやシューマン、そして件のリヒター、チリー・ゴンザレス、何とエイフェックス・ツインにまで及ぶ。対応したホープ自身のコメンタリーと、12人のアーティストによるヴィジュアル作品掲載のブックレットと併せて、聴き手にもイマジナリーな「四季」が召喚されよう。 (藤原 聡)長く日本のファゴット界を支えてきた名奏者・前田信吉。今年75歳でさらに表現を深める彼が、気心知れた弦楽器の名手たちと、知られざる、しかし滋味あふれる佳品集を録音。古典の2作は曲名通りの楽器の役割で、ロゼッティでは合奏体の一部として溶け込む一方、ダンツィではファゴットと弦楽の協奏曲といった趣で主役を張り、技巧的で表現の幅が大きい。ファゴットの多様な魅力を伝える選曲で、4人の棘のない澄んだ響きがなんとも心地よい。その2作に挟まれた20世紀のガルのデュオ作品は、スパイスをかけ過ぎたような珍妙な音楽で、同楽器のユーモラスな面もおさえる。(林 昌英)故・小林悟朗が監督を務めたこの映像作品を通して仲道の音楽に耳を傾けると、彼女が真摯な姿勢、芯のある力強い音色、溢れる歌心によって、ショパンの作品に込められた、あらゆる生身の感情を音に昇華させていることが伝わってくる。とりわけ最後に演奏される「ソナタ第3番」では、ショパンがあらゆる困難に打ち克とうと音楽で闘った姿が透けて見えてくる。プログラム中盤では1840年製のプレイエルを使用しての演奏も行われる。ヒストリカルピアノのあたたかい音色と仲道の多彩かつ誠実な演奏の融合からは、よりリアルなショパンの“声”が聞こえてくる。(長井進之介)男たちの熱き思いが、ほとばしる。ベートーヴェンを軸としたクラシックのみならず、彼らが敬愛するプログレッシヴ・ロックの名曲を、弦楽四重奏で気合いと思い入れこもった快演で聴かせ、旋風を巻き起こしているモルゴーア・クァルテット。今回は、昨年3月に急逝したプログレ界の先駆者キース・エマーソンを偲び、彼が創設した伝説的バンド「EL&P」の名曲群に挑んだ。クラシックの技巧を駆使するのみならず、ノン・ヴィブラートで弓を押し付けて音圧を強調したり、過激なポルタメントでギターをなぞったりと表現は自在。“モルゴーアのプログレ”は、ひとつのジャンルとなった、と言えよう。(寺西 肇)

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