eぶらあぼ2017.5月号
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172CDSACDCDSACD3つのコラール~20-21世紀の無伴奏チェロ/安田謙一郎セルツェ~ショパン名曲集/浦山純子サクバットの祈り/宮下宣子&三浦はつみモーツァルト:レ・プティ・リアン(全曲版)/飯森範親&山響ヒンデミット:無伴奏チェロ・ソナタ/カリムリン:同第2番/シュニトケ:響く文字、オレーク・カガン追悼のマドリガル/高橋悠治:石/安田謙一郎:3つのコラール/黛敏郎:BUNRAKU安田謙一郎(チェロ)ショパン:前奏曲第25番、バラード第1番、アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ、子守歌、舟歌、ノクターン第20番 遺作「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」浦山純子(ピアノ)J.S.バッハ:ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ第1番~第3番、コラール「シオンは物見らの歌うを聞けり」、コラール「主よ、人の望みの喜びよ」 他宮下宣子(サクバット)三浦はつみ(オルガン)モーツァルト:バレエ音楽「レ・プティ・リアン」K.Anh.10(299b)、交響曲第48番(K.111&K.120)・第50番(K.161&K.163)・第51番(K.196&K.121)・ヘ長調K.Anh.223(19a)飯森範親(指揮)山形交響楽団マイスター・ミュージックMM-4005 ¥3000+税アールアンフィニ(ソニーミュージック/ミューズエンターテインメント)MECO-1038 ¥3000+税録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9008 ¥2500+税オクタヴィア・レコードOVCL-00629 ¥3200+税チェロ界の重鎮・安田謙一郎の新譜はなかなかに刺激的だ。技のキレを盛り込んだヒンデミット「無伴奏チェロ・ソナタ」こそ分かりやすいが、中央アジアの鄙びた歌といった風情のカリムリン「ソナタ第2番」の後、シュニトケの2曲で無重力状態へと入り、その先の高橋悠治「石」では人を食ったグリッサンドから耳をそばだててよーく聴かないと分からない特殊奏法まで、ユーモラスな音の身振りを愉しんだ。安田の自作「3つのコラール」もタイトルから連想される曲調の裏をかくとんがりぶりで「まとまるの?」と心配になったが、黛の「BUNRAKU」できっちり着地。巨匠にしてこのアクロバット。 (江藤光紀)「セルツェ」と題された浦山純子の新譜はショパン名曲集。「名曲集」とはいっても、単に親しみやすいアルバムを目指した訳ではないことは、冒頭に前奏曲第25番を配していることからもわかる。優しく吐息を吹きかけるような下行する音型で開始する前奏曲に導かれ、ワインレッドを基調としたジャケットからも漂う香気に包まれる。自然な流れでいざなわれる「バラード第1番」では、休符やフレーズ間の間合いを効かせ、ショパンの内に秘められた熱を伝える。あえて朴訥と語るように奏でる「子守歌」、声部間の凹凸を繊細に伝える「舟歌」は繰り返し聴きたくなる名演だ。 (飯田有抄)日本の女性金管奏者のパイオニアである新日本フィルのトロンボーン奏者・宮下宣子が、16〜18世紀に活躍した同楽器の前身サクバットでバッハを奏でたアルバム。宮下は、金管古楽器にも積極的に取り組む、この道の第一人者である。本作は、3曲のヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタを柱にした選曲がまず特徴的。触れる機会の少ないサクバット独特の柔らかく渋い音を知り得る点は当然貴重だし、隠れがちなガンバのソナタを再認識しながら、バッハの新たな世界や音楽の奥深さを味わえる点が大きな魅力だ。三浦はつみのピュアなオルガンの効果も特筆される。(柴田克彦)「レ・プティ・リアン」は、パリ時代に作曲したバレエ音楽で、全21曲中8曲が真作と推定される(“全曲”収録は珍しい)。モーツァルトの交響曲全集を近くリリース予定の飯森範親と山響はこの小曲集でも味のある演奏を実現。快活な楽想がにぎやかに展開される序曲、エコー効果が秀逸な第9曲、短調の陰翳で変化に富む第18曲など、存分に楽しませてくれる。全集に含まれなかった交響曲では、第48番で15歳の神童ぶりをみせつける。生き生きとした躍動感と生命力の噴出はどうだろう。第50番もドラマティックな変化と展開など、原曲のオペラの雰囲気を彷彿とさせる。 (横原千史)

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