eぶらあぼ 2017.4月号
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79第27回 ワンダフルoneアワー5/19(金)15:00 19:30 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700 http://www.hakujuhall.jp/藤木大地(カウンターテナー)話題の逸材が歌う「詩人の恋」取材・文:室田尚子Interview 現在の日本のクラシック界における“時の人”藤木大地。それは、2012年に日本音楽コンクールで史上初、カウンターテナーで優勝した時の大センセーションをしのぐニュースがもたらされたからだ。今年4月、ウィーン国立歌劇場にライマンのオペラ《メデア》ヘロルド役でデビューするのである。 「ウィーン国立歌劇場の舞台に立つことは夢のひとつだった」と語る藤木が、テノールからカウンターテナーに転向したのは11年。それからわずか6年で夢の舞台に立つことになったのだから、彼の実力のほどがわかる。しかし、この転向は大変ではなかったのだろうか。 「テノールとは違う筋肉を使うのでそこを鍛えること、コロラトゥーラなどのテクニックを身につけること、それ以外は、これまでに学んできたことがすべて役立っています。発声も同じ。ただ“楽器”が変わっただけです」 その楽器を使っての活躍は、オペラにリサイタルにと、まさに八面六臂。そんな藤木がこの5月にHakuju Hall『ワンダフルoneアワー』で歌うのは、なんとシューマンの「詩人の恋」だ。ピアノは松本和将。 「声楽を始めた時からフリッツ・ヴンダーリッヒが好きで、彼が歌う『詩人の恋』を聴いていつか自分も、と思っていました。彼が亡くなった歳である36歳を超えて、彼に近づきたいという思いから選びました」 カウンターテナーというとバロック・オペラの声種というイメージが強いが、そうした固定観念にも藤木は挑戦しているようだ。 「みんな、それぞれ自分が持っている楽器で音楽を演奏しています。僕は、“僕の楽器”でできることをする。それが、今回は『詩人の恋』だった。ただそれだけのことです」 ただそれだけのこと、がなかなかできない。いや、それは技術的なことだけではなく、音楽家としての精神がとても「自由」だからこそ可能なのだろう。その「自由さ」は4月にリリースされる初CD『死んだ男の残したものは』(キングインターナショナル)にも現れている。松本和将、加藤昌則、福田進一、大萩康司、西山まりえといった共演者とともに演奏する曲目には、古今の日本歌曲、アイルランド民謡などが並ぶ。 「共演者は全員、これまでコンサートでご一緒したことのある方たちです。彼らとやるならこれだ、ということで曲目を選びました。それにウィーン・デビューの日に劇場に置いてもらえることになったので、日本歌曲を多めに入れたんです。これが日本の音楽だよ、って言えるように」 考え抜かれたプログラム、鍛えられた身体、そして何より自由な精神。「新世代のカウンターテナー」藤木大地が歌うシューマン「詩人の恋」とシューベルトの歌曲を、彼が愛するHakuju Hallでぜひ体験したい。6/30(金)19:30 文京シビックホール問 シビックチケット03-5803-1111 http://bunkyocivichall.jp/夜クラシック Vol.13 福間洸太朗(ピアノ) 吉田 誠(クラリネット)知的でクリエイティブな奏者によるフレンチ・プログラム文:高坂はる香吉田 誠 ©RamAir. LLC 通常の演奏会より遅めの19時半開演、トークをはさむ親しみやすいスタイルでありつつ、クラシックファンも大満足の充実した内容で人気の、文京シビックホール『夜クラシック』。Vol.13には、クラリネットの吉田誠とピアノの福間洸太朗が登場する。 共演は昨年以来2度目。吉田が「クラリネットのデュオ作品はピアノも内容が濃いので、絶対いいピアニストと演奏したい」と福間に声をかけたことで実現に至ったそう。 オープニングテーマ曲の「月の光」に続くプログラムとして、ともにパリ国立高等音楽院留学経験のある二人が選んだのは、フランスにかかわりのある作品たち。それぞれのソロも楽しみだが、特に期待が膨らむのはデュオの演奏。独特の色彩があふれるサン=サーンスのクラリネット・ソナタ、舞曲的要素の強いミヨーの「協奏的二重奏曲」や武満徹の「ワルツ」など、それぞれで鋭敏な感性を発揮してくれるだろう。刺激を与えあう知的でクリエイティブな二人の共演、お聴き逃しなく。福間洸太朗 ©Mark Bouhiron

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