eぶらあぼ 2017.4月号
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文:渡辺謙太郎 写真:中村風詩人知れば知るほど奥深くて楽しい、大人の世界へ 近年、東京を中心に、昼から営業するバーが増えている。2013年に荒木町にオープンしたBar El Laguito(バー・エルラギート)もそのひとつで、営業開始は15時から。紀尾井ホールにも近く、公演の前後にもお薦めだ。 店主の本多聡さんは、新宿の「rit bar(リット・バー)」や、「Bar le Parrain(バー・ル・パラン)」を経て、この地で独立。「rit」では当時店長だった菅野仁利さん(現「Bar Brüder(バー・ブリューダー)」オーナー)の下で働き、「le Parrain」では本多啓彰さんに師事した。いずれもこの連載に登場した名バーテンダーだが、彼らの印象や自らの接客スタンスをたずねると、次のような答えが。 「菅野さんは“動的”で、一緒に山登りをする兄貴のような存在。本多さんは静的で父親のような方でしたね。僕が目指すのは、両者をバランスよく備えた接客です」 「le Parrain」と同じく、映像系美術制作会社「ヌーヴェルヴァーグ」が内装を手がけた店内は、カウンター6席、2人掛けソファーのテーブルが2つ、そして4人掛けテーブルの半個室という洗練された空間。半個室の前には窓があるため、昼間は自然光が差し込んだ美しいひとときを演出する。 「息苦しいのが苦手なので、アールデコ調の内装を、重厚なテイストを得意とするヌーヴェルヴァーグにお願いしたのです。同業者やお客様からは、じゃあ何で彼らに頼んだんだって言われましたけれど(笑)」 店名は、キューバ産の高級葉巻「COHIBA(コイーバ)」の工場にちなんだもの。店内には現在、50~60種類、約6000本の葉巻が保管され、お酒と相性のよい1本を選べるのも大きな魅力になっている。 今回のカクテルは、ザクロとカルヴァドスの「ジャックローズ」をチョイス。果汁が多めのフレッシュな1杯で、お供の葉巻は、キューバ産「Romeo y Julieta(ロメオ・イ・フリエタ)」の短めな「ペティコロナ」。一般的には、バーも葉巻も敷居が高いと思う方が多いかもしれないが、入門者に向けたアドバイスを本多さんは次のように語ってくれた。 「ひまつぶし的に吸うことが多いシガレットに比べ、“時間を作るために吸う”のが葉巻だと思います。僕は昔、クラシック音楽と無縁でしたが、『le Parrain』の本多さんやお客様の影響でオペラが大好きになったんです。新国立劇場に初めて行った時はとても緊張しましたが、実際にオペラを観てみたら意外と難しくないし、想像以上に面白くて(笑)。だから、バーも葉巻もオペラと一緒で、まずは飛び込むことが大事。その先には、知れば知るほど奥深くて楽しい、大人の世界が広がっています」Bar El Laguito(バー・エルラギート) 東京都新宿区荒木町2-14 アイエス2ビル 3F [月~土]15:00~0:00  日曜 ¥1000  03-5315-4866紀尾井ホールInformationコンサートの余韻を美味しいお酒とともに味わえるホール近くの素敵なバーをご紹介しますBar El LaguitoVol.8荒木町オーナー・バーテンダーの本多聡さん205

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