eぶらあぼ 2017.4月号
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178CDCDCDCDチェンバロ+パーカッションⅢ/ローラン・テシュネ&藤本隆文交響詩「ローマの祭り」/昭和音楽大学 昭和サクソフォーン・オーケストラ展覧会の絵/生水敬一朗&北村 聡ショスタコーヴィチ:交響曲第6番・第9番/ラザレフ&日本フィル金子仁美:歯車~ギリシャ民謡によるA・B/久木山 直:X [iks]/糀場富美子:美しき謀計の織り手/法倉雅紀:延喜の祭禮第5番/三瀬和朗:西天の夕星/大家百子:QUATRE/松下功:チェンバロ独奏のための「さざ波に」/権代敦彦:Venus op.102 他ローラン・テシュネ(チェンバロ)藤本隆文(パーカッション)ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」/モリネッリ:ニューヨークからの4枚の絵/リスト:メフィスト・ワルツ第1番/レスピーギ:交響詩「ローマの祭り」昭和音楽大学 昭和サクソフォーン・オーケストラ榮村正吾(サクソフォーン)有村純親、松原孝政、大森義基、福本信太郎(以上指揮)J.S.バッハ:幻想曲 BWV572よりグラーヴェ、パッサカリアとフーガ BWV582(以上、生水編)/松浦伸吾:2人のためのアダージョ/山下康介:即興的カプリス~2台のバンドネオンのための/ムソルグスキー(ラヴェル/生水編):組曲「展覧会の絵」生水敬一朗、北村 聡(以上バンドネオン)ショスタコーヴィチ:交響曲第6番、交響曲第9番アレクサンドル・ラザレフ(指揮)日本フィルハーモニー交響楽団コジマ録音ALCD-9087 ¥2800+税マイスター・ミュージックMM-4004 ¥3000+税ディスク クラシカ ジャパンDCJA-21037 ¥2500+税収録:2016.5/20,21、2015.10/23,24、サントリーホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00619 ¥3000+税芸大で教鞭を執るテシュネが演奏会と並行して取り組んでいるCD録音で、パーカッションとのアンサンブル曲が収められている。ほとんどが初演となる全14曲はそれぞれ5分前後の小品だが、珍しい組み合わせだけに両者の接点から何を引き出すのかという創意が作曲家によってまるで異なる。旋律線が変容し、無窮動のリズムのうちに協奏が生まれたかと思えば、打楽器の多彩な音色の中にチェンバロが同化していたりと、その多様性が楽しい。公演時のサブタイトルにギリシャが入っているからなのか、チェンバロという楽器がそうさせるのか、古代をイメージさせる詩的な表現が多いのも印象的だ。 (江藤光紀)彼らが紡ぐ独自のサウンドは、もはや、ひとつの“ジャンル”を確立したと言って、過言ではない。当盤も、新鮮な驚きに満ちている。冒頭のベルリオーズにせよ、締め括りのレスピーギにせよ、本来は各楽器の多彩な音色を活かしたオーケストレーションの妙で知られる作品。しかし、あえて均質な音色を与えられたことで、旋律やハーモニー、楽曲構造、そして表現そのものの面白さが浮き彫りに。ここへ、現代イタリアのモリネッリによる、サックスのために書かれた作品のジャジーで豊かな色彩感と、リストの超絶技巧ピアノ曲からの編曲の意外性が加味され、面白い反響を生む。 (笹田和人)日本初のクラシックのバンドネオン奏者である生水敬一朗によるアルバム第3弾。ここではマルチなバンドネオン奏者である北村聡と全曲で共演しているが、本作では特に「展覧会の絵」の編曲と演奏が見事だ。ラヴェルのアレンジを元にしたとのことだが、もとよりこの楽器2つだけで全ての音を演奏することなど出来ない訳で、そのため音符を省略したりもしている。しかし、ここではこれが原曲なのではないか、というようなオリジナルな音世界を展開している。2台のバンドネオンの絡み合いによる微細なテクスチュアや音色の変化を聴くのは大変に楽しい。広くお薦めしたい。 (藤原 聡)圧倒的な成果をあげ続けたラザレフ指揮日本フィルのショスタコーヴィチ・シリーズ。いわゆる“大曲”ではない2曲も、ラザレフの手にかかれば劣らぬ重みをまとい、白熱のライヴになる。特に、軽快な曲とみなされがちな第9番は、古典的なフォルムは歪めずに、予想外の濃厚さや禍々しさ、メッセージをえぐり出し、作品の認識を一新させた圧巻の名演だった。第6番も張りつめた抒情から爆発的な熱狂まで、このコンビの本領発揮。結尾の狂乱は完璧なイン・テンポで悠揚迫らぬ大行進に変貌、その“異様なまでの立派さ”が生みだすものは…。会場での衝撃を追体験できる1枚だ。 (林 昌英)

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