eぶらあぼ 2017.3月号
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44とか。「『愛の死』に身も心も奪われて引きこまれてしまう悲劇的陶酔感」がより広い空間で、いかなる変容を見せてくれるか興味は尽きない。ダンス・ファンのみならずオペラ・ファンにもお勧めしたいステージである。勅使川原三郎 シアターX公演『トリスタンとイゾルデ』濃密なる“生と死”のダンス文:渡辺真弓4/26(水)~4/30(日) シアターX問 KARAS 03-6276-9136 http://www.st-karas.com/ 年頭からリムスキー=コルサコフ作曲『シェラザード』で濃密なデュエットを繰り広げて感銘を与えた勅使川原三郎と佐東利穂子。その直後、勅使川原と佐東は渡欧し、パリ・オペラ座の2017/18シーズン発表会見に出席、10月にバレエ団に振り付けする新作(音楽:エサ=ペッカ・サロネンのヴァイオリン協奏曲、演奏:諏訪内晶子)への意気込みを語るなど、今年も精力的な活動を展開中だ。3月に、昨年「あいちトリエンナーレ2016」で演出を手がけたモーツァルトのオペラ《魔笛》を神奈川と大分で再演すると、4月は両国のシアターXで、「言葉と音楽とダンス」をテーマにしたシリーズの一環として、ワーグナー作曲『トリスタンとイゾルデ』の舞台が待っている。これは、昨年、本拠地のカラス・アパラタスの<アップデイトダンス>で初演したものを装いも新たに再演する試みで、よりブラッシュアップされた舞台がお目見えすることだろう。 初演では、4時間の壮大な楽曲を約1時間に凝縮、勅使川原と佐東は、大河のうねりに身を任せるように「生と死」のダンスを踊り、オペラを見たような充足感を与えたのが記憶に新しい。創作の動機は、ワーグナーの驚異的な音楽だった©KARAS新国立劇場 ドニゼッティ《ルチア》(新制作)“ベルカントの新女王”が耳目を奪う!文:柴田克彦3/14(火)18:30、3/18(土)14:00、3/20(月・祝)14:00、3/23(木)14:00、3/26(日)14:00 新国立劇場オペラパレス問 新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999 http://www.nntt.jac.go.jp/opera/ 今年前半の新国立劇場オペラで目を引くのが、新制作のドニゼッティ《ルチア》だ。モンテカルロ歌劇場との共同制作で、2019年に同劇場での上演が決まっている、というだけでも興味津々だが、何と言っても今回は、“ベルカントの新女王”オルガ・ペレチャッコのタイトルロールに熱視線が注がれる。 ロシア生まれの彼女は、フェニーチェ歌劇場、ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、メトロポリタン歌劇場、パリ・オペラ座といった第一線の舞台に、《リゴレット》ジルダ、《愛の妙薬》アディーナ、《椿姫》ヴィオレッタ等の主役で次々とデビュー。飛ぶ鳥を落とす勢いでスター街道を駆け上がっている。その魅力は、艶やかで輝かしい美声と最高度の歌唱技術、そして美貌と相まった稀有の存在感にある。特に伸びやかな高音と鮮やかなコロラトゥーラには、ただ惚れ惚れするばかりだ。 《ルチア》で期待の中心はやはり、恋人の裏切りに絶望して狂気に陥ったヒロインが歌う「狂乱の場」。超絶技巧と演技力を駆使しながら10分以上にわたって錯乱状態を表現する、オペラ史上屈指の見せ場だ。ここでペレチャッコが満場を魅せること必至。しかも、通常フルートが受け持つ助奏が指定通りにグラスハーモニカで奏される今回は、幻想味もさらに増す。1~2月にメトロポリタン、ウィーンに出演後、その勢いのまま日本でのオペラ&新国立劇場初出演を果たすペレチャッコ。世界最注目の歌姫が最高の時期に登場するこの《ルチア》は、文句なしに必見・必聴だ。オルガ・ペレチャッコ

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