eぶらあぼ 2017.2月号
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クァルテット・ウィークエンド エルデーディ弦楽四重奏団弦楽四重奏のみに託されたベートーヴェン最晩年の高貴なるメッセージⅢ室内楽ファン必聴の重厚なプログラム文:笹田和人2/19(日)14:00 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク  03-3532-5702http://www.triton-arts.net/©成澤 稔 楽聖が、弦楽四重奏だけに託したメッセージとは。その頂に挑んだ、後世の作曲家の軌跡とは。ソリストとして活躍する4人の精鋭によって組織されたエルデーディ弦楽四重奏団が、その答えを詳らかにする。 同四重奏団は1989年、蒲生克郷と花崎淳生(ヴァイオリン)、桐山建志(ヴィオラ)、花崎薫(チェロ)の東京芸大出身者で結成。翌年からアマデウス四重奏団のメンバーの指導を受けるなど、音楽性を磨き上げ、国内外で活躍している。 ベートーヴェン最晩年の作品を軸に、その真髄に迫るシリーズ第3弾。今回は、全6楽章構成の第13番を取り上げる。しかも、第6楽章は決定稿のロンドではなく、初稿にあたる「大フーガ」を置く。「作曲者の最初の意思を尊重しようと…」と蒲生。ここへ組み合わせるのは、ブラームスが長い時間をかけ、40歳の年にようやく完成に至らしめた第2番。蒲生は「自分の形になるまで待ち、作風を凝縮させた彼の作品と、“立ちはだかる壁”だったベートーヴェンをまとめて聴くのは、興味深いはず」と語る。ティル・フェルナー ©Gabriela Brandenstein542/14(火)19:00 横浜みなとみらいホール(小)問 横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000 http://www.yaf.or.jp/mmh/横浜芸術アクション事業マーク・パドモア(テノール) × ティル・フェルナー(ピアノ) 「冬の旅」「冬の旅」の真の姿を求めて文:宮本 明 語るように歌う透明で繊細な美声のシューベルトは濃厚な物語性を持つ。この数年、それを日本でも繰り返し聴けるのは、リート・ファンには堪らない体験だ。現在50代半ばのマーク・パドモアが、シューベルトの三大歌曲に取り組み始めたのは40歳を過ぎてからだという。まさに満を持してという言い方がふさわしい。一昔前まで低声歌手のレパートリーというイメージだった「冬の旅」だが、もともとテノールの音域で書かれていることはよく知られている。低声用は、全曲を一様に下げるのではなく、曲ごとに任意に移調しているので、原曲の24曲の調性関係は崩れているのだ。つまり、青春のさすらいをテーマにしたミュラーの詩にテノールの声のほうがふさわしいというドラマトゥルギー的な問題以上に、シューベルトの意図した響きが聴けるのが原調によるテノールの演奏だ。ウィーン生まれのティル・フェルナーが、シューベルトのエッセンスをさらに色濃く加えてくれるだろう。マーク・パドモア©Marco Borggreve ©Marco Borggreve2/7(火)19:00 トッパンホール 問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 http://www.toppanhall.com/他公演 2/4(土)兵庫県立芸術文化センター(小)(完売)、2/5(日)宗次ホール(052-265-1718)ロナルド・ブラウティハム(フォルテピアノ) 現代人の感性に訴えかける鮮烈な音楽性文:笹田和人 時代ごとの語法をきっちりと踏まえて、モダンとオリジナル、双方の鍵盤楽器を弾き分け、現代人の感性へ訴えかける鮮烈な音楽を生み出す、オランダの鬼才ロナルド・ブラウティハム。真冬のリサイタルで、親密なモーツァルト、熱きベートーヴェンで、ききての心に暖かな灯をともす。 ルドルフ・ゼルキンらモダン・ピアノの巨匠の薫陶を受け、近現代作品を得意にする一方、フォルテピアノで古典にも取り組み、自由闊達なプレイで聴衆の心を鷲掴みに。モーツァルトのピアノ協奏曲の全集録音を完結したばかり。ベートーヴェンのピアノ作品全集は、なお続行中だ。 今回は、19世紀初頭のアントン・ヴァルター製作のフォルテピアノを基に、アメリカの名工ポール・マクナルティが手掛けたレプリカの銘器を使用。前半では、青年期のモーツァルトによる佳品ソナタ第5番・第12番に、30代でしたためた美しい「ロンド イ短調」を。後半では、第8番「悲愴」に第18番、第17番「テンペスト」と、ベートーヴェンの3つの傑作ソナタを弾く。

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