eぶらあぼ 2017.2月号
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48ミハイル・プレトニョフ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団このマエストロならではの20世紀ロシア音楽プログラム文:飯尾洋一シンフォニー・ブランチコンサート Vol.9 梅村知世(ピアノ)情熱あふれるシューマンの魅力を凝縮して文:飯田有抄第107回 東京オペラシティ定期シリーズ2/23(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール第890回 オーチャード定期演奏会2/26(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp/コンサート 2/24(金)11:00 ザ・シンフォニーホールプレセミナー 2/24(金)10:00 ザ・シンフォニーホール ロビー 問 全日本ピアノ指導者協会03-3944-1583/ザ・シンフォニー チケットセンター06-6453-2333http://www.piano.or.jp/ 東京フィルの多彩な指揮者陣にあって、特別客演指揮者ミハイル・プレトニョフが果たす最大の役割は、ロシア音楽の真髄を聴かせてくれるという点だろう。プレトニョフの選曲からは、有名曲ばかりではなく日頃聴く機会の少ない作品も含めて、ロシア音楽の全貌を知らしめようという気概が伝わってくる。 そのプレトニョフが2月に組んだのは、20世紀ロシア音楽プログラム。ストラヴィンスキーの「ロシア風スケルツォ」と、プロコフィエフの晩年の作品である「交響的協奏曲」(チェロ協奏曲第2番)、ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」(1945年版)が演奏される。 「火の鳥」の組曲版といえば、一般的によく演奏されるのは1919年版だが、後に改訂された1945年版が選ばれているところにプレトニョフの意図がにじみ出ている。というのも、1952年に書かれたプロコフィエフの交響的協奏曲も、やはり若き日の作品であるチェロ協奏曲第1番を改作したもの。こちらは過去の素材を用いた再創造というべきもので、「火の鳥」とはやや事情が異なるにせよ、「若き日の作品を円熟した筆で書き改めた」という点で両作品は共通項を持っている。若年期ならではの旺盛なインスピレーションと、晩年の書法による、時を超えた“一人共作”のおも 日本の若手ピアニスト界は、今や高い実力を持った層が厚く、国内外での活躍も目覚ましい。大阪のザ・シンフォしろさがあるはず。 交響的協奏曲でソロを務めるのは、2015年チャイコフスキー国際コンクールで第1位のアンドレイ・イオニーツァ。巨匠と新鋭の共演も興味深い。刺激的な一夜となるだろう。ニーホールは、日本のピアノ教育に多大な貢献を成すピティナと連携し、午前11時からの『シンフォニー・ブランチコンサート』シリーズで新時代のピアニストたちを次々と紹介している。 2月のシリーズ9回目に登場するのは、昨年のシューマン国際コンクールで最高位(1位なし2位)に輝いた梅村知世。大阪生まれで東京芸大を首席で卒業し、同大学院を修了。ベルリンで研鑽を積み、第34回ピティナ・ピアノコンペティションで特級グランプリを受賞した経歴も持つ。立体的にフレーズを奏で、鮮やかにハーモニーを響かせる梅村が、このブランチコンサートにオール・シューマンプログラムで臨む。アンドレイ・イオニーツァ ©Thomas von Wittichミハイル・プレトニョフ ©上野隆文©Atsushi Kakefuda「飛翔」「蝶々」「献呈」といったシューマンの文学的な感性がほとばしる名曲の他、後半は2台ピアノ版によるピアノ協奏曲イ短調を聴かせる。共演は引く手数多のピアニスト、菊地裕介。二人が音楽的な知性をぶつけ合いながら、シューマンの強烈な音楽世界を届けてくれるだろう。なお開演1時間前に開かれる「プレセミナー」(限定100名、講師は菊地)で、「聴きどころ」を楽しく予習することもできる。 同シリーズでは7月14日に、昨年の同コンペティションで4万5千人の頂点「特級グランプリ」に輝いた尾崎未空が出演予定。今後もフレッシュな出演陣に注目だ。

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