eぶらあぼ 2017.2月号
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43中村恩恵 × 新国立劇場バレエ団『ベートーヴェン・ソナタ』ダンスで迫るベートーヴェンの内面文:渡辺真弓秋山和慶(指揮) 東京交響楽団「70」が並ぶ、超レアな記念公演文:柴田克彦3/18(土)、3/19(日)各日14:00 新国立劇場(中) 1/21(土)発売問 新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999 http://www.nntt.jac.go.jp/dance/第96回 東京オペラシティシリーズ3/5(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp/ ネザーランド・ダンス・シアターなどヨーロッパを中心に活躍した後、日本に拠点を移して活動している中村恩恵が、新国立劇場バレエ団のために新作を振り付ける。タイトルは『ベートーヴェン・ソナタ』。聴覚を失いながらも、交響曲からピアノ・ソナタに至るまで数々の名曲を残した作曲家ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの音楽に、そのドラマティックな人生を響き合わせようという試みである。 中村は、約2年前に貞松・浜田バレエ団にピアノ・ソナタ第14番「月光」で作品を創った時以来、ベートーヴェンに強く共感。今回は、作曲家の人生そのものであるソナタ形式のコンテクストの中で、大作曲家の人生をナラティブに語ると同時に、舞踊によるアブストラクトな世界との出会いを演出しようとするもの。自分に「おまえ」と呼びかけるベートーヴェンの日記に着想し、中 現在のオーケストラ公演で、これほど面白いプログラムは稀だろう。2016年シーズンに創立70周年を迎えた東京交響楽団が、それに因んで「作品番号70」の3曲を取り上げる。しかも作曲者のチョイスが意外性十分だ。指揮は桂冠指揮者の秋山和慶。1964年に同楽団を指揮してデビュー後、40年にわたって音楽監督・常任指揮者を務めた、70周年記念に相応しい名匠であり、本プロは、隠れた名作の演奏実績も光る彼の真骨頂と言っていい。 まずは生演奏の稀なハイドンの交響曲第70番。この曲、実は第4楽章がフーガで書かれており、研究者ランドンが「同曲がなければ、モーツァルトの『ジュピター』のフィナーレは生まれなかった」と述べた重要作である。このほか「二重対位法のカノンの一種」と記された第2楽章など、ハイドンならではの妙味にこと欠かない。次いではフルート、クラリネット、ヴァイオリンという珍しいソロ楽器が興味をそそるク村と名コンビを組んでいる首藤康之がルートヴィヒを、物語世界を引っ張るベートーヴェンを福岡雄大が演じ、二人一役の手法を取るのが注目される。ベートーヴェンの甥カールに井澤駿、その母ヨハンナに本島美和、ベートーヴェンの恋人ジュリエッタに米沢唯、「不滅の恋人」アントニエに小野絢子と、キャスティングも最強である。 「ベートーヴェンの美しく力強い音楽ロンマーの協奏交響曲作品70。曲は、同時代のハイドン、モーツァルトばりの愉悦感溢れる音楽で、コンサートマスターの水谷晃、フルートの相澤政宏、クラリネットのエマニュエル・ヌヴー両首席奏者が並ぶ独奏陣も、70周年を祝うにこの上ない。そして唯一メジャー(?)なショスタコーヴィチの交響曲第に力を得て“生きる喜び”を観客の皆様と共有したい」と中村は新たな出会いに挑戦する熱い思いを語っている。9番作品70。1948年に上田仁指揮の同楽団が日本初演を行った(世界初演のわずか3年後!)記念すべき作品であり、「第九」的大作への期待に肩透かしを食わせた軽妙な音楽は、万人が愉しめること請け合いだ。 本公演は2度と体験できないこと必至ゆえ、ぜひとも足を運びたい。中村恩恵振付『Who is “Us”?』(2013年)より 撮影:鹿摩隆司左より:秋山和慶/相澤政宏 ©N.Ikegami/エマニュエル・ヌヴー ©N.Ikegami/水谷 晃 ©N.Ikegami

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