eぶらあぼ 2017.2月号
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41sonorium 共催シリーズ2017 『映像と音楽』 音楽の展覧会:森をめぐって映像と現代音楽を気軽に体験文:笹田和人小林研一郎(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団この上なくドラマティックなチャイコフスキー文:柴田克彦第688回 東京定期演奏会3/3(金)19:00、3/4(土)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp/ チャイコフスキーといえば、コバケンこと小林研一郎の十八番中の十八番。しかし「マンフレッド」交響曲を取り上げる機会(そもそも同曲の生演奏自体)は滅多にない。それが3月の日本フィル定期で実現する。長く親密な関係にある桂冠名誉指揮者コバケン&同楽団においても24年ぶりというから貴重だ。 本作は、過去の罪にさいなまれ、魔女から妖術の伝授を受けて解放を願うマンフレッドが、アルプス山中をさまよった末、かつての恋人の亡霊に出会って死を迎える…といったバイロンの劇詩に基づく音画的な交響曲。最大の魅力はチャイコフスキーの見事な管弦楽法で、交響曲第4番と第5番の間の作だけにその筆致は成熟度が高く、オルガンも用いた多彩なサウンドは、生演奏でより真価が発揮される。コバケンは、ロンドン・フィルを指揮した最新のチャイコフスキー交響曲全集の一環として2014年に録音。あらゆるフレーズを意味深く語らせた雄弁な演奏を展開し、壮大なドラマを創出している。それゆえ今回のライヴへの期待は、限りなく大きい。 前半はチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。1989年日本人の父とハンガリー人の母のもとに生まれた金子三勇士がソロを弾く。ハンガリーで学び、2008年バルトーク国際ピアノコンクール等で優勝後、内外で活躍するこの俊英は、ハンガリー繋がりと相まってコバケンの信頼も厚く、演奏はやはり力強くパッショネイト。幾多の共演を重ねたマエストロ&日本フィルともども、熱い音楽を聴かせてくれるに違いない。 ここは、濃厚なチャイコフスキーにどっぷりと浸ろう!音楽の展覧会 森をめぐって本公演 2/26(日)15:00 19:00 (2回公演)こどものためのミニ公演 2/26(日)12:00 sonorium問 音楽の展覧会実行委員会080-3535-5566 http://raumraum.jp/exhibitingmusic/ 東京・永福町の閑静な住宅街の一角、理想的な音響とシンプルで格調高い美しさを兼ね備えた小ホール「sonorium」。審査を経た参加公演に共催補助金を提供して開催されている『映像と音楽』は、天井高6メートルの白壁に美しい映像を投影し、質の高い演奏と共に楽しむ、新感覚のコンセプトが好評のシリーズ。8年目を迎える2017年も、4つの独創的なステージが展開される。 シリーズ最初の公演は、映像空間演出家の向井知子と作曲家の伊藤弘之によるプロジェクト『音楽の展覧会:森をめぐって』。このプロジェクトは、「美術の展覧会のように自由に立ち寄れる空間で、気軽に体験できる映像と現代音楽を」との発想からスタート。複数プロジェクターでのマッピングによる映像絵画展と、四分音(半音をさらに半分に割った音程)を多用した「美しく揺らぐ繊細な音響」を創り出す伊藤によるコンサートを融合させて、立体感ある“森”をホール内に現出させる。西川竜太指揮の器楽アンサンブル「In the Dim Light」や及川夕美(ピアノ)による「響きの森へ」など、伊藤の作品のライヴ演奏や録音済みの音源と、向井の映像とのコラボレートが核に。ゲストスピーカーとして音楽評論家の白石美雪(15:00開演)や三菱一号館美術館の野口玲一・学芸グループ長(19:00開演)を交えての公開トークも行う。また、本公演の前に、子どもを対象としたミニ公演(12:00開演/約30分間)が開かれる。 今年のシリーズは他に、岡本祥子のピアノソロと岡本尚子の映像・解説で進行する『ショパンとドビュッシー~所縁の地を巡って~』(5/7)、鶴園紫磯子(ピアノ)を軸に河村晋吾(ピアノ)、駒井ゆり子(ソプラノ)の演奏で展開される『パリ1920年代、エコール・ド・パリと漂流の芸術~映像とかたりで綴るコンサート~』(5/20)、映像ディレクションに岸野優一を迎える『8link Journey』(「8link」はサックス/パーカッション/作曲&ピアノの3人によるユニット)(7/1)の3公演が開催される。伊藤弘之向井知子金子三勇士 ©Akira Muto小林研一郎 ©浦野俊之

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