eぶらあぼ 2017.2月号
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36NISSAY OPERA 2017 プッチーニ《ラ・ボエーム》新訳の日本語上演で楽しむプッチーニの傑作文:岸 純信(オペラ研究家)下野竜也(指揮) 読売日本交響楽団「新世界」に託す有終の美文:柴田克彦6/18(日)、6/24(土)各日13:30 日生劇場問 日生劇場03-3503-3111 http://www.nissaytheatre.or.jp/ 2/1(水)発売第195回土曜マチネーシリーズ3/18(土)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール第195回日曜マチネーシリーズ3/19(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール第94回みなとみらいホリデー名曲シリーズ3/20(月・祝)14:00 横浜みなとみらいホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp/ 日生劇場のオペラの快進撃が続いている。昨年の《セビリアの理髪師》と《後宮からの逃走》で、熱心なファンのみならず、“オペラ初体験”の少年少女たちも大いに楽しませたからである。客席の筆者も、若者たちの歓声や溜息を目の当たりにして嬉しくなった。その成功の源は、やはり、「内容を分かりやすく伝えたい」と願う作り手側─演出家を代表格に─の高い志。曖昧な表現を排し、「誰が何を、何のためにやっているシーンか」を明確にすることで、観客が物語をありのままに受けとめるよう、自然に導いたのである。舞台の出演者勢も、ピット内の指揮者&管弦楽団も、ドラマを分かち合いたいという思いで一丸となっていた。 さて、この日生劇場が来る6月に取り上げるのは、近代イタリア・オペラの傑作、プッチーニの《ラ・ボエーム》である。内容は19世紀パリの下町に暮ら 読響の今シーズンを締めくくるのは、首席客演指揮者の下野竜也。3月でその任を終える実力者が有終の美を飾る。2006年から正指揮者、13年から現ポストで同楽団と関わってきた下野は、意欲的なプログラムと精力的な演奏で高い評価を確立。スクロヴァチェフスキ、カンブルラン両シェフを巧みにフォローしてきた。中でも最大の偉業が、日本では前代未聞に等しいドヴォルザークの交響曲全曲演奏。従って今回最後に置かれた交響曲第9番「新世界より」は、下野&読響の集大成的な意味合いを有している。しかも近年の読響は充実顕著。万感の想いをこめた下野渾身のタクトのもとで、濃密かつ感動的な「新世界」が展開されるに違いない。 パッヘルベルの「カノン」とフィリップ・グラスのヴァイオリン協奏曲第1番が並んだ前半のプロも目を引く。カノンと後者のミニマル・ミュージックは“反復”が共通項(あえて言えば「新世界」も序奏動機が反復される)。加えてグす若者たちの青春群像劇だが、今回特に注目されるのは、日本語訳詞(宮本益光の新訳)で歌われること。言葉が瞬時に理解されたなら客席もより活気づくし、登場人物たちの一挙手一投足も観る人の強い共感を呼び起こすに違いない。また、今回のキャスティングも目を惹くものに。ソプラノの砂川涼子、ラスの協奏曲にはバロック風・パッヘルベル風の動きも垣間見えるという、下野の面目躍如たるカップリングだ。ちなみにグラスの協奏曲は、抒情的な美しさと明快なダイナミズムを湛えた音楽で、同曲の生体験だけでも行く甲斐がある。ソリストは、09年ハノーファー国際コンクールを最年少で制して以来、国際的な活躍を続け、NHK大河ドラマ『真田丸』のテーマ演奏でも注目を浴びた人気奏者・三浦文彰。彼のエネルギッシュかつ繊細なソロもむろん聴き物だ。テノールの樋口達哉といった人気の名歌手を中心に、バリトンの大山大輔、桝貴志を始め中堅・新星の実力派が賑やかに集う。指揮はイタリア・オペラの若き権威たる園田隆一郎、演出は新進気鋭の伊香修吾。管弦楽は新日本フィルハーモニー交響楽団。情熱たっぷりの熱演に期待したい。 4月から広響の音楽総監督=“新世界”に赴く下野の、最後まで清新な「音世界」を満喫しよう。桝 貴志樋口達哉大山大輔砂川涼子園田隆一郎©Fabio Parenzan三浦文彰 ©Yuji Hori下野竜也 ©読響

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