eぶらあぼ 2017.2月号
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164SACDCDSACDCDフランソワ・クープラン ヴィオルのための音楽/平尾雅子ブラームス:交響曲第2番 他/P.ヤルヴィ&ドイツ・カンマーフィルチャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 他/若林 顕J.S.バッハ:パルティータ 第1集/コルネリア・ヘルマンクープラン:クラヴサン曲集より「子守唄またはゆりかごの中の愛し子」、ヴィオル組曲第1番・第2番、クラヴサン曲集第1巻より「ガルニエ」、新コンセール集より第14番 他平尾雅子(ヴィオラ・ダ・ガンバ)アリーン・ジルベライシュ(チェンバロ)坂本龍右(リュート/ヴィオラ・ダ・ガンバ)ブラームス:交響曲第2番、大学祝典序曲、悲劇的序曲パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメンチャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番、ドゥムカ「ロシアの農村風景」、ララバイ op.16-1(ラフマニノフ編)、ノクターン op.19-4、ロマンス op.5 、悲しい歌 op.40-2若林 顕(ピアノ)アレクサンドル・ラザレフ(指揮)日本フィルハーモニー交響楽団J.S.バッハ:パルティータ第2番・第3番・第4番コルネリア・ヘルマン(ピアノ)コジマ録音ALCD-1163 ¥2800+税ソニーミュージックSICC-10239 ¥3000+税収録:2016.5/8、東京芸術劇場(ライヴ)他オクタヴィア・レコードOVCT-00126 ¥3200+税カメラータ・トウキョウCMCD-25043 ¥2500+税わが国きってのヴィオルの名手・平尾雅子が、フレンチ・バロックの巨匠クープランの佳品の深層へ分け入る。2曲のみが残された「ヴィオル組曲」を軸に、クラヴサン作品からの編曲などを収録。共演には、フランスの歴史的鍵盤楽器の第一人者であるジルベライシュ、リュートとヴィオルの両方を能くする坂本龍右を迎えた。特に編曲作品では、楽器の組み合わせから熟慮したという。地の底で噎び泣いたかと思えば、次の瞬間には大空へ羽ばたき、時に情熱的で、時に茶目っ気を纏う平尾のヴィオル。決して「優美」の一言では片付けられぬ、幅広い表現力が、いかんなく発揮されていく。(寺西 肇)パーヴォ・ヤルヴィ&ドイツ・カンマーフィル待望のブラームス交響曲ツィクルス第1弾。弦8型という作曲者が指揮したオーケストラと同程度の編成による演奏は、両翼に分けたヴァイオリンの掛け合いの効果の明晰化やヴィオラのシンコペーションのリズム効果など、ともすると埋もれがちな楽曲の繊細なテクスチュアを見事に浮き上がらせる。と同時に、ブラームス的な情感の深さも見事に表出している点は第1楽章導入部や息の長いコーダ部分を聴けば明らかだ。2曲の序曲も名演で、「悲劇的序曲」での沈滞、「大学祝典序曲」でのユーモラスかつ意識的なフレージングの妙など聴き所多数。(藤原 聡)ライヴによる協奏曲とセッションによる小品を組み合わせたチャイコフスキー・アルバム。これは若林顕の円熟と充実を如実に示す見事な内容だ。協奏曲は明晰なタッチで描かれたスケールの大きな演奏。中でも第2楽章のこまやかな動きと甘美な表現が耳を奪い、曲全体のロマンティックな高揚感にも魅せられる。スクリャービン作品の共演で意気投合したというラザレフの気迫漲るサポートも、白熱の名演に大きく貢献。小品における気品を湛えたセンチメンタリズムや抒情性も素晴らしく、チャイコフスキーのピアノ曲の魅力を再認識させられる。万人にお薦めの1枚。(柴田克彦)J.S.バッハ国際コンクールで1996年に最高位入賞を果たし、モダン・ピアノならではの表現を追究、バッハ演奏の未来を切り拓くコルネリア・ヘルマン。2012年から取り組んでいるバッハ録音の第4弾は、「パルティータ」全6曲のうち、第2〜4番に対峙した。バロック音楽に対するマナーを踏まえつつ、バス旋律のタッチを1音ごとに変えて推進力を持たせるなど、高所から低所へと落ちる水のごとき、自然な音楽の流れは相変わらず。一方で、第2番第1曲の序奏部で余韻を大胆に断ち切るなど、時にセオリーとは逆をゆく発想も実践に移し、奏者のさらなる進化が聴いて取れる。(寺西 肇)

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