eぶらあぼ 2017.2月号
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162CDSACDCDSACDメランコリー/斎藤雅広バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ第2番 他/郷古 廉レガシー ベートーヴェン&ショパン/黒岩 悠はるかチャイコフスキー:交響曲第4番/ユロフスキ&ロンドン・フィルプーランク:メランコリー/シュット:かわいらしいエチュード/セヴラック:ロマンティックなワルツ/ショパン:幻想即興曲、前奏曲第15番「雨だれ」/マスカーニ:アヴェ・マリア/メンデルスゾーン:春の歌/ドビュッシー:月の光/シューマン:トロイメライ 他斎藤雅広(ピアノ)J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番、無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ第2番郷古 廉(ヴァイオリン)加藤洋之(ピアノ)ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」、エリーゼのために/ショパン:幻想即興曲、ワルツ第6番「子犬のワルツ」、夜想曲第2番、ポロネーズ第6番「英雄」黒岩 悠(ピアノ)チャイコフスキー:交響曲第4番ウラディーミル・ユロフスキ(指揮)ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団ナミ・レコードWWCC-7826 ¥2500+税オクタヴィア・レコードOVCL-00614 ¥3200+税アルトゥス・ミュージックALT-349 ¥オープン収録:2011.3/19、ロンドン(ライヴ)エイベックス・クラシックスAVCL-25916 ¥2000+税斎藤雅広が2017年のデビュー40周年を目前にリリースしたアルバム『メランコリー』。プーランクの同名の曲に始まり、甘く歌い上げるマスカーニの「アヴェ・マリア」や瀟洒な香り漂うメンデルスゾーン「春の歌」など、熟練の感性が光る歌いまわしで名曲が新鮮に響く。ショパンの小品は感情が静かにあふれだすような表現で、思い切った抑揚も自然になじむ。シュットやセヴラックなど、斎藤が長年弾き続けてきた名曲、磨き上げられたテクニックで奏される技巧的作品も挟まれ、幅広い聴き手を満足させる。いろいろな心境に静かに寄り添ってくれそうな、洗練された名曲アルバムだ。(高坂はる香)ウィーンを拠点として活躍する郷古廉のオクタヴィア・レコードからのセカンド・アルバムは前作同様にバッハとバルトーク。この新鋭ヴァイオリニスト最大の特質は線の太い素晴らしい美音と確かな技巧(音程の良さは特筆)だろう。バッハはその持ち前の美音を駆使して、各曲を大らかで豊潤な音色に料理し、大変に聴き映えする見事なもの。耳のご馳走と言うほかない。対してバルトークでは音楽に厳しさが増し、特に長大な第2楽章での楽想の描き分けが上手い。随所で登場する特殊奏法も、それ自体が出しゃばり過ぎることなく全体の流れの中で効果的に処理される。大器の予感。(藤原 聡)『レガシー』と銘打つ黒岩悠の第2弾アルバムは、ベートーヴェンとショパン。イタリアはイモラ国際ピアノアカデミーで研鑽を積み、国際的な音楽祭から引っ張りだこの黒岩が、膨大なレパートリーから取り出した瑞々しい音楽。丁寧に紡ぎ出すベートーヴェンの「熱情」や、通常の倍近い5分をかけて演奏される「エリーゼのために」には、勢いよりも深みを立体的に構築しようとする姿勢が聴き取れる。「幻想即興曲」「子犬のワルツ」「夜想曲第2番」「英雄ポロネーズ」といったショパンの名曲も、上品かつ愛情に満ち、消えゆく残響の隅々まで美学を感じさせる。(飯田有抄)新星指揮者が次々に現れる中、ロンドン・フィルを率いて10年、そろそろ中堅の域に差し掛かってきたユロフスキがまだ来日していないのは意外。これは今秋の両者の来日を占うのに恰好の一枚だ。金管のファンファーレは歯切れがよく、続く弦もつややか。展開部でテクスチュアが厚くなるところも臆せずぐいぐいと突っ込んでいく。そのまっすぐなリードが爽快だ。第2楽章も長大なクレッシェンドがまぶしいが、その後の木管の装飾つきの主題回帰は対照的に細やかだ。リズミカルな第3楽章に続き終楽章もテンポよくパンチを効かせて始まり、あまり深い押しや引きは作らずハイテンションで駆け抜ける。(江藤光紀)

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