eぶらあぼ 2017.2月号
149/177

160CDCDCDCD第6回仙台国際音楽コンクールピアノ部門優勝 キム・ヒョンジュンフォーレ:イヴの歌◎閉ざされた庭◎幻影◎幻想の水平線/奈良ゆみロマンス/小野明子&野平一郎ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付」/ベーム&ウィーン・フィルモーツァルト:ピアノ協奏曲第19番 K.459ブラームス:ピアノ協奏曲第1番キム・ヒョンジュン(ピアノ)パスカル・ヴェロ(指揮)仙台フィルハーモニー管弦楽団フォーレ:イヴの歌、閉ざされた庭、幻影、幻想の水平線奈良ゆみ(ソプラノ)モニック・ブーヴェ(ピアノ)ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ/イザイ:詩曲第2番「紡ぎ車に寄せて」/ストラヴィンスキー:ペルゴレージの主題と断章と小品による組曲/エルンスト:ロッシーニの《オテロ》の行進曲とロマンスによる華麗な幻想曲/ワーグナー:ロマンス 他小野明子(ヴァイオリン)野平一郎(ピアノ)ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付」カール・ベーム(指揮)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ジェシー・ノーマン(ソプラノ)ブリギッテ・ファスベンダー(アルト)プラシド・ドミンゴ(テノール)ヴァルター・ベリー(バス)ウィーン国立歌劇場合唱団収録:2016.6/24,25、日立システムズホール仙台(ライヴ)フォンテックFOCD-9733 ¥2400+税コジマ録音ALCD-7207 ¥2800+税ナミ・レコードWWCC-7827 ¥2500+税収録:1980.11、ウィーンTOWER RECORDS/ユニバーサルミュージックPROC-1992 ¥1143+税韓国芸術大学ののち、現在アメリカのピーボディ音楽院で学ぶキム・ヒョンジュンが、2016年仙台国際音楽コンクールピアノ部門に優勝した際のライブ録音。本選でパスカル・ヴェロ指揮仙台フィルと共演した2曲の協奏曲を収録。モーツァルトの第19番K.459では、品のある優しい抑揚とともに歌心を存分に発揮している。特にすばらしいのはブラームスの第1番。作品の世界に入りこみ、とても自然なやりかたで感情を表現してゆく。重くよく通る音を無理なくのびのびと鳴らして、小柄な体格の不利などもまったく感じさせない。しなやかな強さを持つブラームスで魅了する。(高坂はる香)フォーレ晩年の連作歌曲が、一人の歌い手によって一枚のアルバムにまとめられた、世界初のディスク。晩年の彼は、現在ではほとんど知られていないような詩人の作品への付曲を好んで行っている。聴力を失いかけていた彼にとっては、詩から極彩色と浮遊感、そして自然な人間の感情を見出せるかどうかが重要だったのだ。フォーレ晩年の歌曲に書かれた簡素な旋律や和声から浮かび上がる幻想の世界を描き出すには、演奏者は極力自己を廃し、音楽の求める世界に浸らなければならないが、この奈良ゆみとモニック・ブーヴェの演奏を聴けば、それが体現された演奏に出会うことができる。 (長井進之介)2016年は、ヴァイオリンの巨匠ユーディ・メニューインの生誕100周年だった。それを記念し、巨匠の“最後の弟子”であり、国際的に活躍する小野明子が、師との温かな思い出を縦糸に、19世紀末〜20世紀初頭を生きた作曲家たちの友情を横糸に、心を込めて編み上げたアルバム。全く色彩の異なる7作品が、深みある音色と変幻自在な表現で結び付けられて、不思議な共鳴を起こす。しかも、作品ごとに、受け継いできた歴史まで、紐解かれてゆくよう。そして、繊細な表現で彼女の美点を余さず引き出す、野平一郎の名サポートもさすが。小野自身の筆になる解説も、余韻を与えてくれる。(笹田和人)カール・ベームの死の前年、最後の交響曲録音。晩年のベームはテンポが遅くなり、ピリオド楽派の影響で、速いテンポが主流となりつつある現代では異彩を放つ。しかしベームの演奏には、このテンポでなければ出てこない細やかな彫琢や深い味わいがある。この「第九」もそうで、冒頭楽章から、オーケストラと一体となった気迫のこもる圧倒的な響きは感銘深い。対位法的なテクスチュアや緩徐楽章の変奏の美しさはどうだろう。さながら天上の慰めのよう。終楽章の歓喜主題の弦楽変奏や「抱き合え」の弱音部もとてもきれい。最後はついに熱い祈りとなる。巨匠の芸に脱帽。(横原千史)

元のページ  ../index.html#149

このブックを見る