eぶらあぼ 2016.12月号
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44アヌ・タリ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団ベートーヴェン「第九」特別演奏会美貌とカリスマ性を兼ね備えた話題の指揮者が登場文:飯尾洋一ベルリン・フィル八重奏団8人が織り成す親密で精緻な音の会話文:山田治生12/17(土)、12/18(日)各日19:00 サントリーホール12/22(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール12/25(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp/2017.1/22(日)14:00 横浜みなとみらいホール(神奈川芸術協会045-453-5080)、1/31(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール(ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040) http://www.japanarts.co.jp/他公演2017.1/19(木)りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館(TeNYチケット専用ダイヤル025-281-8000)、1/21(土)川西市みつなかホール(072-740-1117)、1/24(火)東京文化会館(都民劇場03-3572-4311)、1/25(水)杉並公会堂(03-5347-4450)、1/27(金)愛知県芸術劇場 コンサートホール(中京テレビ事業052-957-3333)、1/28(土)兵庫県立芸術文化センター(0798-68-0255)、1/29(日)三島市民文化会館 ゆぅゆぅホール(055-976-4455) いよいよ「第九」の季節が到来。日本独自の風習として定着した暮れの「第九」だが、毎年さまざまな顔ぶれの指揮者による「第九」を聴き比べることができるのだから、考えてみればずいぶんとぜいたくなことである。 今年の「第九」のなかで、フレッシュさという点で特に目をひくのはアヌ・タリ指揮東京フィルによる「第九」。エストニア出身の女性指揮者アヌ・タリの来日は久しぶりではないだろうか。美貌の指揮者として話題を呼んだアヌ・タリだが、自ら創設したノルディック交響楽団の首席指揮者を務め、レコーディングではECMレーベルで母国の作曲家トゥールの作品集を録音したり、2013年からはフロリダのサラソータ・オーケストラ音楽監督に就任するなど、着実にキャリアを積み重ねている。一段と経験を積んだアヌ・タリの今を聴 ベルリン・フィル八重奏団は、“小さなベルリン・フィル”と呼ぶにふさわしい。80年以上の歴史を持ち、メンバーを交代させながら続いてきた。現在は、第1コンサートマスターの樫本大進が第1ヴァイオリンを務め、エルサレム弦楽四重奏団の創設メンバーであった首席ヴィオラ奏者のアミハイ・グロス、フィンランド出身の首席コントラバス奏者のエスコ・ライネ、ベルリン・フィルの“顔”の一人であるクラリネットのヴェンツェル・フックス、世界最高のホルン奏者というべきシュテファン・ドールら、ベルリン・フィルのトップ・メンバーがこのアンサンブルに参加している。 今回はその曲を演奏するためにこのアンサンブルが結成されたという、シューベルトの八重奏曲が取り上げられる。弦楽器5つにクラリネット、ファゴット、ホルンが加わった編成から、ベルリン・フィルのエッセンスが聴こえてくるだろう。1時間に及ぶ大作で、室内楽の醍醐味と小さなスーパー・オーケストラの魅力が満喫できる。近年はますますく好機が訪れた。小川里美、向野由美子、宮里直樹、上江隼人の独唱陣に東京オペラシンガーズの合唱が共演する。どんな「第九」が誕生するのか、大いに期待したい。 なお、「第九」と合わせて演奏されるエッレルの「夜明け」も興味深い作品だ。エッレルの名は日本ではなじみが薄いが、母国では「現代エストニア音楽の父」と称えられる作曲家である。小品ながらワーグナーやR.シュトラウスを思わせるような豊麗な響きで彩られた秀作であり、新鮮な喜びをもたらしてくれることだろう。室内楽に力を入れている樫本大進がどんな演奏を聴かせてくれるのかも楽しみ。そのほかに、ニールセンの「軽快なセレナード」、ドヴォルザーク(シェーファー編曲)の「5つのバガテル」(八重奏版)が演奏される。ニールセン作品は、3つの管楽器と低弦楽器の五重奏。フックスとドールの妙技が聴きもの。ドヴォルザーク作品の原曲は弦楽器3つとハルモニウムの四重奏だが、特別に編曲された八重奏版で聴く。アヌ・タリ ©2004 Warner Classics. Photo:Chris Dunlop©Simon Pauly

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