eぶらあぼ 2016.12月号
46/187

43飯守泰次郎(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団名匠ならではのドイツ・ロマン派と湯浅譲二の深き世界文:江藤光紀ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団『カーネーション-NELKEN』「愛」をめぐるバウシュの傑作、28年ぶりに日本で上演文:渡辺真弓第686回 東京定期演奏会12/9(金)19:00、12/10(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp/2017.3/16(木)~3/19(日) 彩の国さいたま芸術劇場 12/3(土)発売問彩の国さいたま芸術劇場0570-064-939 http://www.saf.or.jp/ 日本フィル12月定期には、ドイツ音楽の巨匠・飯守泰次郎が4年ぶりに登場する。飯守は若き日に、マンハイム、ハンブルクとドイツの名門歌劇場で活動、1970年代以降はワーグナー音楽の総本山・バイロイト音楽祭でも経験を積むなど、現場叩き上げのマエストロだ。現在は新国立劇場オペラ部門芸術監督として腕を振るい、昨年から始まった《リング》全曲上演では自らタクトをとって間然とするところのないリードをみせた。 さて、その飯守が今回組んだプログラムは、ブラームス、シューマンというロマン派の大家に、日本作曲界の長老・湯浅譲二を組み合わせたもの。 湯浅の「始源への眼差Ⅲ」は、宇宙、人類のはじまりに鳴っていた音楽に理知的にアプローチする。管弦楽の特性を生かし、湯浅らしい明晰な思考がダイナミックに展開される。飯守&日本フィルが2005年に初演しており、再演となる今回は一層クリアな表現へと研ぎ澄まされていくのではないだろうか。 現代舞踊の世界に大きな衝撃をもたらしたピナ・バウシュが亡くなってすでに7年になるが、その遺志を継いだヴッパタール舞踊団は精力的に活動を続けている。最近では、2014年に彩の国さいたま芸術劇場で『コンタクトホーフ』を上演したのが記憶に新しい。それから3年。今度は、こちらもバウシュの傑作『カーネーション』(1982年初演)を携えてやってくる。 この作品は、タイトルそのもののピンクのカーネーションが何千本も舞台に敷き詰められ、それだけでも壮観だ。バウシュが南米チリのアンデスの谷間で見たカーネーション畑の美しさに触発されて制作したものだそうだが、今から27年前の1989年に日本で上演された際は、国立劇場の舞台が鮮やかな花の絨毯に生まれ変わり、大きな反響を呼んだ。音楽は、ガーシュウィンの名曲「The Man I Love」やシューベルトの「死と乙女」など。花畑の上では、 ブラームス「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」では、アシスタント・コンサートマスターの千葉清加、そしてソロ・チェロ奏者の辻本玲がソリストとして登壇する。今後の日本フィルの未来を担う二人の俊英のお披露目として、楽団の期待を反映した起用だろう。ダンサーたちがウサギのようにぴょんぴょん跳びはねたり、四季を表す仕草をしながらライン・ダンスを披露したり、皆で記念撮影のポーズをとったりと、観る者の心に次々に強烈なイメージを刻みつける。最後は、ダンサー自身の口か 渋めのブラームスの後はシューマンの交響曲第3番「ライン」。デュッセルドルフの管弦楽団の音楽監督として同地に赴任した折り、シューマンはライン川の光景やそれにまつわる様々に大いに触発された。この曲にはそんな当時のシューマンの大らかな気分があふれている。ら、なぜダンサーになったかが説明される。カーネーションの鮮烈な印象と共に、「愛」の可能性についても考えさせる作品である。今回は久々の貴重な上演なので、ぜひともバウシュの創造性の根源に触れてみたい。Photo:Oliver Lookピナ・バウシュ ©Wilfried Krüger飯守泰次郎 ©青柳 聡千葉清加辻本 玲 ©竹原伸治

元のページ 

page 46

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です