eぶらあぼ 2016.12月号
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168CDCDCDCDブラームス:交響曲第1番 他/メータ&ウィーン・フィルニューイヤーメリーゴーランド~ロシアからの音楽年賀/レオニード・グルチン&ユリヤ・レヴピアニストのチェロ/平野玲音&ペーター・バルツァバ信長貴富 歌曲集~歌うためには~/佐藤恵津子&小原 孝ブラームス:交響曲第1番、悲劇的序曲ワーグナー:《ローエングリン》第1幕・第3幕への前奏曲ズービン・メータ(指揮)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団レーピン:「カーニバル・ナイト」による幻想曲/ハチャトゥリアン:剣の舞/プロコフィエフ:「シンデレラ」よりアダージョ/ショスタコーヴィチ:「馬あぶ」よりロマンス/スヴィリードフ:「吹雪」よりワルツ/ゴロローボフ編:ニューイヤーメリーゴーランド 他レオニード・グルチン(チェロ)ユリヤ・レヴ(ピアノ)ベートーヴェン:ヘンデル「ユダ・マカベウス」の主題による12の変奏曲/バルツァバ:チェロ・ソナタ/リスト:忘れられたロマンス/ショパン:チェロ・ソナタ/モシェレス:メロディックな対位法練習曲第10番/サン=サーンス:白鳥平野玲音(チェロ)ペーター・バルツァバ(ピアノ)信長貴富:歌うためには、歌曲、不完全な死体、鬼ごっこ、寺山修司の9つの俳句による歌曲集「わが高校時代の犯罪」、ほほえみ、しあわせよカタツムリにのって、夕焼け、「ポール・エリュアールの三つの詩」 他佐藤恵津子(メゾソプラノ)小原 孝(ピアノ)信長貴富(鍵盤ハーモニカ) 他ユニバーサルミュージック/TOWER RECORDSPROC-1982 ¥1143+税コジマ録音ALCD-9166 ¥2800+税収録:2016.4/9、サントリーホール ブルーローズ(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00607 ¥3000+税ナミ・レコードWWCC-7821 ¥2500+税若きメータの名演が復刻で蘇った。交響曲以外は初CD化。ブラームスは40歳時の録音だが、溌溂としてイキが良く、しかも細部に目配りが利いた快演となっている。この交響曲第1番も冒頭から充実しており、ウィーン・フィルの弦も美しい。再現部やコーダに突入する箇所の高揚はオーケストラが一体となって凄まじい。終楽章も生き生きとしたリズムが躍動し、再現部終わりの下降ストレッタからコーダにかけての、息詰まる頂点の充実ぶりはどうだろう。ワーグナーは30歳時の録音で、繊細に移ろいゆく弦の美感は、まさに天国的といっていい。(横原千史)白樺の林の向こうに佇む、可愛らしい色遣いの小屋。暖炉の炎の傍らで聴こえてくるのは、きっと、こんな調べに違いない。ここには、私たちが漠然と描く、“ロシア”のイメージが詰まっている。ハチャトゥリアン「剣の舞」を除いては、当盤に収録された作品の題名を知っている人は少ないだろう。その多くは、ソビエト時代に、映画やバレエのために生み出された作品。でも、初めて聴くのに、なぜか懐かしい。そして、思い入れもたっぷりに、温かな音色でこれらのメロディを紡ぐのは、日本を拠点に活躍する、2人のロシア人演奏家。どこか望郷の気持ちも、忍ばせているのかも。 (笹田和人)東大大学院修士課程修了後にウィーンで研鑽を積み、現在は日本とウィーンで演奏活動を行う平野玲音。異色の経歴がもたらしたであろう幅広い視野は選曲にも活かされている。ベートーヴェンやリスト、モシェレスの知られざる作品をはじめ、共演者であるバルツァバが作曲した日本初演曲、さらにショパンのソナタ…という組み合わせの妙には驚かされる。またその選曲を反映するように、平野の音色は非常に多彩で、作品ごとに違った表情を見せる。だが全体を通してあたたかい語り口は一貫していて、どんなに激しい楽想になってもそれは崩れることがない。(長井進之介)信長貴富は2001年の日本音楽コンクール第2位など受賞を重ね、主に合唱曲の分野で評価の高い、気鋭の作曲家。幅広く活躍する佐藤恵津子からの働きかけで、主に合唱作品からの編曲を核に、歌曲集を織り上げた。これらは寺山修司ら個性的な詩作に基づくが、「独唱ならではの書法があると気付いた」と信長が語るように、違った意味を孕んで言葉が伝わる。このため、温かな声を大切に、日本語の発音自体にも気遣いを見せる佐藤。“弾き語り”で知られるピアノの小原孝のそっと寄り添う名サポートぶりも光る。作曲者自身も鍵盤ハーモニカで表題曲に参加、雰囲気の醸成に一役買っている。(笹田和人)

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