eぶらあぼ 2016.11月号
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78東京オペラシティ リサイタル シリーズ B→C(ビートゥーシー)松田 弦(ギター)11/5(土)19:00 高知県立美術館ホール問 高知県立美術館088-866-800011/15(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999http://www.operacity.jp松田 弦(ギター)ギターの持つ多彩なサウンドを追求したい取材・文:渡辺謙太郎Interview レゲエ・ミュージシャンのような独特のヘアスタイルが印象的だが、実際はクラシック・ギタリスト。1982年高知生まれの松田弦は、趣味でギターを嗜む父によって、“弦”と命名されたそうだ。彼はこれまでに、東京国際ギターコンクールやアントニー国際コンクールなど、国内外の8つのコンクールで優勝。録音もすでに数タイトル発表している。そんな若手実力派が、東京オペラシティ『B→C』に登場する(彼の地元・高知でも同一公演を開催)。 松田のギターは、透明感のある美しい音色と正確無比なテクニックが特長。今回はその持ち味を存分にいかして、ギターの新境地を拓く。 「前半の冒頭では、20世紀イタリアの作曲家シェルシの『コタ―シヴァ神の3つの踊り』の第1曲を演奏します。秘境の大地の鼓動を思わせる作品で、ギターを膝上に横に寝かせて扱います。もう1曲、1960年ブラジル生まれの作曲家&ギタリスト、カンペラの『パーカッション・スタディⅠ』も含め、ギターの持つ打楽器的な魅力をクローズアップします」 J.S.バッハ作品は、「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番」と「リュート組曲 BWV995」を演奏する。 「『ソナタ第3番』は、原曲の最低音とバロックチューニングがもたらすような響きを際立たせたくて選びました。そのために調弦をすべて半音下げ、さらに一番低い第6弦をF♯に上げて演奏します。また、『BWV995』は無伴奏チェロ組曲第5番と同一の作品ですが、ギターだとチェロのように音が伸びないので、今回は和音を適宜加える予定です」 松田が「前々から自分に合いそうだと感じていました」と語るのが、後半に弾く20世紀アルゼンチンの作曲家ヒナステラのソナタだ。 「ギターはアルゼンチン人にとって特別な楽器と語っていたヒナステラが、生涯に唯一作曲した傑作がこのソナタ。ギターの技法を極め尽くした書法で、ありとあらゆる特殊技法が使われています。特に最後の第4楽章は、クラシック・ギターというジャンルを超越したカッコよさが魅力です」 そして後半のラストは、今年が没後20周年にあたる武満徹の最後のギター作品「森のなかで」で締めくくる。 「武満さんの作品は、学生時代に『フォリオス』を初めて弾いた時から、その作風に深く共感してきました。今回の『森のなかで』は、東京オペラシティが武満さんと縁が深いことや、没後20年だからといったこととは関係なく、自然な流れで辿り着いた選曲。ギターの純粋な美しい響きを全身で感じ、お聴きいただければと思います」12/14(水)19:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677 http://www.proarte.co.jp今川映美子(ピアノ) パリゆかりの作曲家たち Vol.Ⅱ~Variations~“ヴァリエーション”の世界への誘い文:飯田有抄©武藤 章 音楽的な円熟味と、聴衆からの人気を益々着実なものとしているピアニスト今川映美子。真摯な作品解釈とその実現度の高い演奏により、聴き手に新たな気付きや充足感をもたらしてくれる。そんな今川が2014年に完結したシューベルト・ツィクルスに続き、2015年から新たにスタートさせたシリーズが『パリゆかりの作曲家たち』だ。 第2回目を迎える今年は、バロック時代から近代までと年代的に幅広い6名の作曲家を取り上げる。プログラムに貫かれているテーマは「変奏曲」だ。ラモーで開始し、モーツァルト(K573)、クララ・シューマン(op.20)、モンポウ、フランク(op.18)の作品を経て、フォーレ(op.73)で締めくくるという、多彩なヴァリエーションの世界へといざなう。唯一、モーツァルトの「アダージョ K540」のみソナタ形式の作品だが、悲痛なロ短調が挿し色のような存在感を放つ。今川のアイディアとセンスの光る一夜となりそうだ。

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