eぶらあぼ 2016.11月号
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70第6回 野島 稔・よこすかピアノコンクール優勝記念公演鶴澤 奏 ピアノ・リサイタル11/23(水・祝)14:00 よこすか芸術劇場問 横須賀芸術劇場046-823-9999 http://www.yokosuka-arts.or.jp鶴澤 奏かなで(ピアノ)これからはひとりの演奏家としてピアノと向き合いたい取材・文:長井進之介Interview 今年の4月23日から6日間にわたり開催された第6回「野島稔・よこすかピアノコンクール」。全国から集結した参加者が2つの予選を経て10名にまで絞られ、リサイタル形式の本選に臨んだ中、第1位を勝ち取ったのは鶴澤奏。東京音楽大学ピアノ演奏家コースで学ぶ若きピアニストだ。美しい音色、旋律を丁寧に紡ぎ出す歌心が高く評価されての受賞となった。 「本選後の懇親会で、審査委員長の野島稔先生がお褒めの言葉として『いいところまで来ているよ』とおっしゃってくださいました。野島先生は審査の際に音質をかなり重視するということでしたので、そのような暖かいお言葉をいただくことができたのはとても嬉しかったです」 11月23日に開催される優勝記念リサイタルでは、コンクールで高い評価を得たショパンの「幻想ポロネーズ」をはじめ、ラフマニノフやドビュッシー、モーツァルトにチャイコフキーと、多彩な作品を演奏する。 「すごく大きな音が出せるわけではないので、最近までラフマニノフの演奏を避けていました。でも学内の試験や今回のコンクールでソナタ第2番を弾いてみたところ、意外と違和感なく弾くことができ、苦手意識がなくなりました。そこで、リサイタルにもラフマニノフを入れたいなと思い、以前から大好きな『ショパンの主題による変奏曲』を中心に選曲しました」 これまでにも多くのコンクールで入賞を重ねてきた鶴澤だが、第1位は意外にも今回が初めてだという。その後、環境や心境の変化はあったのだろうか。 「光栄な演奏の機会をいただいたことをはじめ、これからは学生ではなく、ひとりの演奏家としてピアノと向き合わなければ、と気持ちが引き締まりました。また、以前ならリサイタルのプログラムをここまでチャレンジ精神旺盛な内容にはしていなかったと思います。素敵な曲ばかりなので、ぜひリサイタルでは“いま”の私の挑戦を楽しんでいただきたいです」 大学卒業後は「早く海外に出てもっと沢山のことを学び、個性を磨きたい」と語ってくれた鶴澤に、今後どんなピアニストになりたいかと尋ねた。 「まだ具体的なビジョンがあるわけではないですが、いつも誰かのための演奏をしたいですね。やはり“対自分”よりも、相手のために弾く方が音楽もより充実したものになります。そして音にももっとこだわっていきたいです。音楽家は奏でる音によって、現実とはかけ離れた夢のような世界に聴く人を連れていかなければならないと思っているので」11/5(土)18:00、11/6(日)15:00 KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ問 チケットかながわ0570-015-415 http://www.kaat.jpジャグリングカンパニー 頭と口『WHITEST』“ダンス”に変容するジャグリング文:乗越たかお上:渡邉 尚 下:山村佑理 強い身体性と高い芸術性で、世界で注目を集めるコンテンポラリー・サーカス。 今年ジャグリング用のお手玉とパンツ一丁で振付のコンペティションに登場し、ダンス界の皆さんを大きくどよめかせたのが渡邉尚だ。ケモノのような強靱で柔軟な筋肉、しかも球は投げ上げられることなく身体と床をつなぐメディアとして(「フロア・ジャグリング」と名づけられた画期的なスタイルだ)みごとに「ダンス」にしてみせた。 その渡邉が共にカンパニー「頭と口」を立ち上げた相手が山村佑理である。若くしてジャグリングの世界では知らぬ者なしの頭角を現し、今年フランスのエリート・サーカス学校を卒業した。殺気を含んだ技術の高さはフランスでも折り紙付き。この二人が満を持して新作に挑む。 カンパニーの旗揚げ2作目にしていきなりKAATで公演というのも、なかなかの抜擢ぶりだ。初演はそれぞれのソロだったので、今回は二人がガッツリと組んで創る初めての作品となる。 新しい舞台芸術が生まれる瞬間を見逃すな!

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