eぶらあぼ 2016.11月号
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65ヤクブ・フルシャ(指揮) 東京都交響楽団満を持してマーラーと向き合う文:江藤光紀河竹黙阿弥生誕200年 & ウィリアム・シェイクスピア没後400年 尾上菊之助『歌舞伎とシェイクスピアの音楽』東西2大劇作家へのオマージュ文:山下シオン第820回 定期演奏会 Cシリーズ 12/13(火)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール第821回 定期演奏会 Bシリーズ 12/14(水)19:00 サントリーホール問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp11/29(火)19:00 すみだトリフォニーホール問 トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212 http://www.triphony.com 台頭著しい30代指揮者の中でも、ヤクブ・フルシャは欧州で着実に地歩を固めている一人。エリシュカやビエロフラーヴェクといったチェコを代表する現役指揮者たちに学んだフルシャの“チェコ・ブランド”は筋金入りだ。この9月からはノットの後を継いでバンベルク響の首席指揮者に就任。この楽団は、プラハ在住のドイツ人が戦後ドイツに帰還して作った団体で、中欧のバランスのよいサウンドを今に伝える。相性のいい名門のシェフに収まり、さらなる展開を胸に期しているはずだ。 首席客演指揮者を務める都響との12月定期も、強みを生かしたフルシャらしい選曲になっている。メイン曲はマーラー「巨人」。マーラーの生地はフルシャの生地ブルノとプラハの真ん中あたりに位置する。いわば同郷の作曲家なのだが、意外にもフルシャが都響でマーラーを振るのはこれが初めて。若杉、ベルティーニ、インバルらとマーラー演奏の 2016年は、歌舞伎の狂言作者である河竹黙阿弥の生誕200年、そしてイギリスを代表する劇作家ウィリアム・シェイクスピアの没後400年というメモリアルイヤー。これを機に河竹黙阿弥ゆかりの地である墨田区のすみだトリフォニーホールで、『歌舞伎とシェイクスピアの音楽』と題したコンサートが行われる。この公演に出演し、歌舞伎とシェイクスピア作品を体現するのが、今を時めく歌舞伎役者、尾上菊之助である。 尾上菊之助が属する尾上菊五郎家、音羽屋のお家芸には河竹黙阿弥の書いた『青砥稿花紅彩画』、通称『白浪五人男』という有名な演目がある。菊之助は1996年5月に歌舞伎座にて、この『白浪五人男』の弁天小僧を演じ、5代目尾上菊之助を襲名した。そして、20 05年にはシェイクスピア作品を歌舞伎化した『NINAGAWA 十二夜』で主演を務め、初演からわずか2年後の07年金字塔を築いてきた都響。若きマエストロとの共演に注目が集まる。見通しのよいタクトが、巨大管弦楽をどう鳴らすか。 前半に演奏されるのは、やはりお国の作曲家ドヴォルザークの「ヴァイオリン協奏曲」で、ソロはヨゼフ・シュパチェク。シュパチェクは2011年から15年まで、チェコ・フィル史上もっとも若いコンサーに同作品のロンドン公演を果たしている。菊之助は、東洋と西洋を代表する二人の作家へのオマージュを捧げるのに、ふさわしい人物なのである。 コンサートの第1部では菊之助が弁天小僧菊之助の台詞を実演するほか、『京鹿子娘道成寺』の一部を素踊りでトマスターとして責を担っていた。現在はソリストとして活躍の場を広げている。もちろん同フィル常任客演指揮者を務めるフルシャとは旧知の仲だろう。 年の瀬、“「第九」レース”が始まる直前だが、チェコの哀愁、ボヘミアの深い森の空気に新世代の息吹を聴きとるのも一興だ。踊る。第2部ではプロコフィエフのバレエ組曲「ロメオとジュリエット」(抜粋)に合わせ、菊之助が、黙阿弥と同時代に活躍した作家、坪内逍遥の訳をもとにしたオリジナル台本で、名場面を語る。一度限りの素晴らしいステージをぜひ体験していただきたい。ヨゼフ・シュパチェク ©Radovan Subinヤクブ・フルシャ ©堀田力丸新日本フィルハーモニー交響楽団 ©K.MIURA尾上菊之助

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