eぶらあぼ 2016.11月号
67/217

64©Hikaru★豊嶋泰嗣&中野振一郎 デュオ・リサイタル11/25(金)19:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700 http://www.hakujuhall.jp豊嶋泰嗣(ヴァイオリン)デビュー30周年で挑む“バロック・デュオ”取材・文:那須田 務Interview 11月にHakuju Hallで豊嶋泰嗣と中野振一郎のデュオ・リサイタルが開催される。豊嶋は新日本フィルなどでコンサートマスターとして活躍するヴァイオリンの名手、中野は日本を代表する古楽器奏者でチェンバリスト。ちょっと意外な組み合わせだが、実はこの二人、桐朋学園大学時代の同級生で今年デビュー30周年、京都市立芸術大学で教鞭をとるなどの共通点がある。 「もちろん中野さんのことは学生時代から知っていましたが、分野が違うのでさほど付き合いはありませんでした。5年前に京都で教えるようになってからよく話をするようになり、一緒にやろうと」 プログラムがすばらしい。近年発見されたヴィヴァルディのマンチェスター・ソナタ第5番に始まり、ビーバーの無伴奏曲「パッサカリア」、バッハのチェンバロとヴァイオリンのソナタ第4番、タルティーニの名曲「悪魔のトリル」に、ルクレールの「ソナタ op.5-8」など。 「人気曲と通好みの名品を組み合わせていますが、選曲にあたって意識したのは『夜の音楽』です。『悪魔』や『天使』の異名を持つ作曲家や曲を後半に置きましたので、そのテーマでも楽しんでいただけると思います」 22歳で新日本フィルのコンマスとなった豊嶋にとってバロック音楽は、それほど馴染みのジャンルではなかったという。 「もちろんバッハの無伴奏はずっと勉強していますが、なにしろロマン派以後に膨大な作品がありますので。でも、キャリアを積むうちにバロックの本当の良さが分かってきました。魅力的な曲がたくさんあるので演奏しないで済ませてしまうのはもったいない。中野さんはバロック音楽にとても詳しいし、作曲家の小話もたくさん知っています。教えてもらいながら世界を拡げていけたらいいなと思っています」 ヴァイオリン演奏のスタイルに縛られてはいない。 「大切なのは楽器や演奏習慣ではなく、楽譜からどう音楽の本質を読み取るかです。そのことを新日本フィルを晩年に指揮した故ブリュッヘンから学びました。中野さんも同じ考えを持っているので共演していてとても気持ちがいい。ですから、『悪魔のトリル』もそうですが、楽譜はロマンティックな校訂版ではなく、オリジナル版を使います。Hakuju Hallはバロック音楽にちょうどいいサイズ。無理なく濃やかなニュアンスや多彩な音色が出せます。普段あまり聴いていない人もその魅力を楽しんでいただけることでしょう」 晩秋の夜長、二人の名手の奏でるバロックの響きに心ゆくまで耳を傾けたい。11/12(土)15:00 京都/青山音楽記念館バロックザール 問 青山音楽記念館075-393-0011 http://www.barocksaal.com11/24(木)19:00 Hakuju Hall 問 アスペン03-5467-0081 http://www.aspen.jp鈴木愛理(ヴァイオリン) 得意の近現代作品に聴く音楽の“香り”文:笹田和人 2006年、17歳の時にヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールで第2位入賞を果たし、国内外から一躍、熱い注目を浴びた鈴木愛理。10年からはドイツ・ハノーファー音楽演劇大学で研鑽を積みつつ、12年にはハノーファー・ヨーゼフ・ヨアヒム国際ヴァイオリン・コンクールでも入賞を果たすなど、さらなる実績を重ね、その翌春にはアムステルダム・コンセルトヘボウでのリサイタル開催をはじめ、精力的かつ着実な演奏活動を続けている。 一時帰国してのリサイタルは、国際舞台で活躍する若手ピアニストの雄・佐藤卓史を共演に迎えて。メンデルスゾーンのヘ長調(1838)とR.シュトラウス、2つのソナタに加え、ストラヴィンスキー「ディヴェルティメント」、ブロッホ「ニーグン」という骨太なラインナップ。「特に近現代の作品では、愛理さんしか出せない“香り”が現れる。時に静謐に、時に激しく、時間と空間を彩ることの出来る彼女のヴァイオリンを、ぜひ聴いてほしい」と、親交のある若手指揮者、山田和樹は語る。

元のページ 

page 67

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です