eぶらあぼ 2016.11月号
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188CDCDSACDCDベートーヴェン:交響曲第7番・第2番/スクロヴァチェフスキ&読響エキノクス 武満 徹へのオマージュ/松尾俊介ショパン:ワルツ/宮谷理香テレマン:無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジア/ファビオ・ビオンディベートーヴェン:交響曲第7番・第2番スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(指揮)読売日本交響楽団武満 徹:エキノクス、イエスタデイ*、すべては薄明のなかで、オーバー・ザ・レインボー*、ロンドンデリーの歌*、フォリオス、早春賦*、ラスト・ワルツ*、ギターのための小品、シークレット・ラヴ*、ミッシェル*、森のなかで(武満 徹編*)松尾俊介(ギター)ショパン:ワルツ全19曲(op.18・op.34・op.42・op.64・遺作 他)宮谷理香(ピアノ)テレマン:無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジアファビオ・ビオンディ(ヴァイオリン)収録:2014.10/11、2012.9/29、横浜みなとみらいホール(ライヴ)日本コロムビアCOGQ-95 ¥3000+税マイスター・ミュージックMM-3089 ¥3000+税イマジンベストコレクションIMGN-1108 ¥3000+税東京エムプラスPGCD-923406 ¥2857+税インテンポで各声部を太く歌わせながら、その重ね合わせや強弱の素早い対比で鮮やかな造形美を見せる。硬い撥を使ったティンパニをはじめ、テンポやフレージングにはピリオド奏法を思わせるスピード感があるが、同時にモダン・オーケストラらしい量感も。7番が刺激的なまでに面白い。本年1月にも読響と神々しいブルックナーを聴かせたスクロヴァチェフスキも93歳。指揮者は経験の積み重ねがモノを言う仕事だが、老境の諦観なんてものは微塵もない。読響の性能を十全に引き出しながら新天地に向かって驀進していくこのエネルギーは、一体どこから湧いてくるのだろう。 (江藤光紀)武満ギター作品に対する深い敬愛と理解が、よく伝わってくる1枚。オリジナルと編曲を織り交ぜた全12曲が並び、冒頭に「エキノクス」、中央に「フォリオス」、最後に「森のなかで」を配置して、アルバムの骨格を形成。力強く温かみのある音色を基調に、リズムに細やかな起伏や揺れを付けて“間”を持たせることで、作品の知性や官能美を玄妙に描出している。また、「12の歌」から抜粋した7曲など、編曲ものの弾き分けも巧み。特にビートルズ2曲の対照性がみごとで、「イエスタデイ」は緻密な構成美を、「ミッシェル」は自由な歌心を、それぞれ際立たせている。 (渡辺謙太郎)「1995年ショパン国際ピアノコンクール第5位入賞」という実績があるのだから当然なのかもしれないが、改めて宮谷理香の演奏を聴くと、ショパンの作品との相性が良いピアニストであることを実感させられる。隅々まで配慮が行き届き、明瞭な響きを放つ美しいタッチと、正確でありながらも、和声の色調の変化や旋律の流れに合わせて微細にゆらぎを作るセンスなど、全てがショパンの求める音楽と合致しているのだ。ワルツは場面転換が多く、変化も早いが、その切り替えについても、各楽想のつながりを意識させる統一感のもと、自然に行われている。(長井進之介)バッハの偉大な作品の陰に隠れてはいても、テレマンの無伴奏ヴァイオリンのための作品は、独特の魅力にあふれている。そして、これら無伴奏作品においては、実際に聞こえていない音をいかに“暗示”するかが、演奏上の重要なポイント。バッハに比べて、音数が少ないテレマンの方が、実は、その難度は逆に上がる。時に、前の音の印象が残るうちに弾き出したいがため、過度に急速になったりもしがちだが、鬼才ビオンディは、落ち着いたテンポ取りを基本に、じっくり音楽に対峙。シンプルな書法ゆえに可能な、華麗な装飾や即興も交えつつ、しなやかで変幻自在な響きの宇宙を形創る。(寺西 肇)

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