eぶらあぼ 2016.10月号
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89「すみだ北斎美術館」開館記念企画 パスカル・ロジェ(ピアノ)ドビュッシーと北斎の幸せな出会い文:オヤマダアツシ澤 和樹(ヴァイオリン) & 蓼沼恵美子(ピアノ) デュオ結成40周年記念リサイタル名手デュオならではの円熟を極めたハーモニー文:笹田和人11/19(土)19:00 すみだトリフォニーホール問 パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831 http://www.pacific-concert.co.jp11/6(日)14:00 東京文化会館(小)問 アスペン03-5467-0081 http://www.aspen.jp クロード・ドビュッシーが、日本の浮世絵や蒔絵などの工芸品に強い関心をもっていたというエピソードは、よく知られている。そうした中には葛飾北斎作の浮世絵「神奈川沖浪裏」があり、後に管弦楽曲「海」の初版スコアで表紙を飾ったことも有名だ。その北斎は1760年に現在の墨田区亀沢町あたりで生まれたが、そうした縁もあって錦糸町のすみだトリフォニーホールでも、一角に北斎の紹介コーナーがある。さらには今年の11月22日、両国駅にほど近い緑町公園内に「すみだ北斎美術館」がオープン予定。とくれば音楽ファンとしては、やはりドビュッシーの音楽が聴きたくなるではないか。 美術館のオープンを前にした11月19日、すみだトリフォニーホールのステージへ登場するのは、ドビュッシー弾きとして高い評価を得ているパスカル・ロジェ。いまやベテランの風格も漂うマエストロが演奏するのは、多彩な色 ヴァイオリンの澤和樹とピアノの蓼沼恵美子、深淵な音楽性と美しい音色を兼ね備えた2人の名手がデュオを結成してから、40周年を迎えた。記念リサイタルでは、これまでの幅広い取り組みを俯瞰する、古今の佳品をプログラミング。阿吽の呼吸によって織り上げられる、円熟を極めたハーモニーで魅せる。 ロン=ティボーとヴィエニャフスキ、両国際コンクールなどで入賞を重ねた澤が、蓼沼とデュオを組んだのは、東京芸大在学中の1976年。同大学院修了後の80年からは、文化庁在外研修員として共にロンドンへ留学、その3年後には、“超難関”として知られるミュンヘン国際音楽コンクールのデュオ部門で、第3位入賞を果たした。 帰国後、澤はソロ活動や自ら主宰する弦楽四重奏団、蓼沼も妹の明美とのピアノ・デュオでの成果を、このデュオ活動へとフィードバック。現在は東京と光が現れては消えるような「前奏曲集第1巻・第2巻」の全24曲だ。「俳句を連想させる」というこの曲集を、1曲1曲丹念に弾き込まれるような演奏で聴けるのは幸福なこと。しかも今回は特別な趣向として、ステージ後方のスクリー芸大学長を務めるなど、特に澤は後進の教育でも多忙を極めるが、デュオとしての活動は絶えず継続し、そのハーモニーを磨き上げてきた。また、ヘンシェル弦楽四重奏団を交えて、五重奏の形でも名演を披露するなど、多層的な活動も展開する。 記念リサイタルでは、まず、大切に弾き込んできたベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタから第6番を。次に、澤は楽器を持ち替え、ヒンデミットのヴィオラ・ソナタを披露。そして、再びヴァイオリンを手に、シマノフスキ「ロマンス」と武満徹「11月の霧と菊の彼方から」(1983)、フォーレのソナタ第1番と、彩り豊かに聴かせてゆく。ンへ北斎の名作が映し出されるという。ロジェ自身も「ハーモニーは色であり、フレーズは風景画のよう」と語り、ドビュッシーと北斎の幸福な出会いを称賛。こんなコンサートを体験したかった! という方は、お聴きのがしなく。©Nick Granito 葛飾北斎 冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏

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