eぶらあぼ 2016.10月号
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69アレクサンドル・ラザレフ(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団ショスタコの次はグラズノフ!文:江藤光紀アンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団《イリス》で露わになるマスカーニの知られざる側面文:飯尾洋一第685回 東京定期演奏会 ラザレフが刻むロシアの魂 Season Ⅳ グラズノフ111/25(金)19:00、11/26(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp第886回 オーチャード定期演奏会10/16(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール第105回 東京オペラシティ定期シリーズ10/19(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール第887回 サントリー定期シリーズ10/20(木)19:00 サントリーホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp 2008年の首席指揮者就任以来、厳しいリハーサルによって日本フィルの演奏レベルをぐんと引き上げたアレクサンドル・ラザレフ。この秋からは首席指揮者をピエタリ・インキネンに譲り、自らは桂冠指揮者兼芸術顧問に移る。より厚みのある体制で次の飛躍に臨もうというわけだ。 リハーサルが徹底していると言っても、コワオモテではない。温かく磊落な人柄は、コンサートに足を運べばすぐに伝わってくる。ロシア音楽そのもののようなマエストロなのだ。就任以来、数多くのロシア音楽を取り上げてきたが、とりわけプロコフィエフの交響曲連続上演の後を次いで始まった『ラザレフが刻むロシアの魂』シリーズは、ラフマニノフ、スクリャービン、ショスタコーヴィチといった20世紀の大家への理解を深めてくれた。 この秋よりスタートするシリーズ第4弾はグラズノフだ。まだまだ日本で 日本を舞台にしたイタリア・オペラといえば、まっさきに挙げられるのが、プッチーニの《蝶々夫人》。しかし、もう一作、《蝶々夫人》に先駆けて作曲されたのがマスカーニの《イリス(あやめ)》である。 イタリアの若きカリスマ、アンドレア・バッティストーニがこの《イリス》を東京フィルの10月定期演奏会(演奏会形式 10/16,10/20)でとりあげる。東京フィルは7月にチョン・ミョンフンの指揮で《蝶々夫人》を演奏したばかり。日本イタリア国交150周年を記念して、ふたつのジャポネスク・オペラが演奏会形式で上演されることになる。 バッティストーニによれば、《イリス》を聴けば、《カヴァレリア・ルスティカーナ》のマスカーニとはまったく別の作曲家を発見することになるという。ここで描かれる日本は想像のなかの夢の国であり、やはり空想上の中国を題材としたプッチーニの《トゥーランドッは知られていない作曲家だが、そのオーケストレーションは色彩感にあふれ、メロディー・メーカーとしても大変な才能の持ち主。先だってもラザレフと日本フィルは伸び伸びと明るいバレエ音楽「四季」を聴かせてくれたが、作風は素直で変に屈折せず、人気がないのが不思議なくらい。今回はドイツ風に重々しく始まり、にぎやかに終わる交響曲第5番だ。 プログラム前半は、これまた『魂』第3シリーズで取り組んできたショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番。こちらはグラズノフとは正反対の深刻な音楽だが、実はグラズノフとショスタコーヴィチは師弟関ト》のモデルになっているのが《イリス》だと、バッティストーニは語る。 欧州における東洋趣味が生み出した作品にわたしたち日本人がどう接するか、というのは《蝶々夫人》でも常々議論になるところだが、イマジネーションが生み出した日本を世界中のだれよりも楽しめるのが当の日本人であるはず。上演機会の限られた作品だけに、大きなインパクトを残してくれるのではないだろうか。 なお、同月、バッティストーニはベートーヴェンの交響曲第5番「運命」を中心係にある。ここらへんの対比の妙も楽しみたい。ソロは現在ウィーンで学び、今後さらなる活躍が期待される若手・郷古廉だ。としたプログラムも指揮する(10/19)。オペラとシンフォニーの両輪にわたっての活躍が続く。アレクサンドル・ラザレフ ©浦野俊之アンドレア・バッティストーニ ©上野隆文

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