eぶらあぼ 2016.10月号
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67フライブルク・バロック・オーケストラ瑞々しく響くバロック・コンチェルトの傑作文:寺西 肇オッコ・カム(指揮) 神奈川フィルハーモニー管弦楽団フィンランドの巨匠が贈るオール・シベリウス・プログラム文:柴田克彦プログラムⅠ 10/21(金)19:00 プログラムⅡ 10/24(月)19:00トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 http://www.toppanhall.com他公演10/23(日)三鷹市芸術文化センター 風のホール(0422-47-5122)10/25(火)兵庫県立芸術文化センター(0798-68-0255)第323回 定期演奏会10/15(土)14:00 横浜みなとみらいホール問 神奈川フィル・チケットサービス045-226-5107 http://www.kanaphil.or.jp 来年で結成から30年、今やドイツのみならず、ヨーロッパ古楽界を代表する名アンサンブルとなったフライブルク・バロック・オーケストラ(FBO)。2年ぶりに日本の音楽ファンの前に降臨。初登場となるトッパンホールでは、2夜にわたって、大バッハを中心とするドイツ、ヴィヴァルディなどイタリアと、協奏曲の傑作を揃えたラインナップを、鮮烈なサウンドで聴かせてくれる。 今や名指揮者として知られるトーマス・ヘンゲルブロックを中心に、音楽大学の若き学生たちによって結成されたFBO。現在はバロック・ヴァイオリンの名手、ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツとペトラ・ミュレヤンスが、共同で音楽監督を務める。たとえ聴きなれた“名曲”でも、作品への深い思い入れと丁寧なアプローチがあれば、まるで初演のように瑞々しく響かせられることを、常に証明してきた彼ら。日本では2012年にバッハの「管弦楽組曲」、14年には「ブランデンブルク協奏曲」 かくも早く、再びオッコ・カムが振るシベリウスを聴けるとは! その喜びを抑えることができない。10月の神奈川フィル定期で、カムがシベリウスの交響詩「フィンランディア」、交響曲第7番、第1番を指揮する。1946年フィンランド生まれの彼は、69年の第1回カラヤン国際指揮者コンクールで優勝後、主に北欧の団体で地に足の着いた活動を続け、世界各地にも客演しながら熟成度を高めてきた。そして昨年11月日本で、2011年からの手兵ラハティ響と共にシベリウスの交響曲全曲を披露。曲想の変化を自然体で表出すると同時に、濃密な有機体となった音が雄弁に語る感動的名演を展開し、真の巨匠たることを実感させた。 特に感銘深かったのが、最終日の交響曲第7番とアンコールの「フィンランディア」。今回はまずこれらを前半で聴けるのが嬉しい。「フィンランディア」は、シンパシーに充ちた“本物”の高揚を披露し、強烈な印象を残した。 今回は、まずプログラムⅠ(10/21)で、バッハのヴァイオリン協奏曲第2番や、チェンバロ協奏曲から再構築された3つのヴァイオリンのための協奏曲を軸に、ヘンデル(op.6-11)やコレッリ(op.6-1)の合奏協奏曲、ヴィヴァルディのシンフォ感が、聴き慣れた耳を一新させること必至。幻想的かつ凝縮された究極の交響曲といえる第7番では、昨年魅せた清澄さと強靭さと緻密さを相持つ表現で、その真価を伝えてくれるであろう。旋律美に溢れた国民楽派的な交響曲の第1番は、有名な第2番以上に親しみやすい名作。これもスケールの大きな構築の中にロマンと民族色を漂わせた演奏で、曲の魅力を再認識させてくれるに違いない。 フレッシュな勢いを増している神奈川ニアほかを。プログラムⅡ(10/24)では、バッハのヴァイオリン協奏曲第1番や2つのヴァイオリンのための協奏曲に、ヘンデル(op.6-10)やコレッリ(op.6-2)、ヴィヴァルディ「調和の霊感」から第10番と、やはり合奏協奏曲を披露。ソリストは、2人の音楽監督が中心となって務める。フィルが、いかに応えるか? も、むろん大きな見どころ。何より最初と最後の交響曲、つまり作曲者25年の変貌を本場の巨匠のタクトで体感できる本公演は、シベリウス・ファンならずとも必聴だ。©Marco Borggreveオッコ・カム ©Markus Henttonen

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