eぶらあぼ 2016.10月号
57/233

54ユリアン・プレガルディエン & 鈴木優人 シューベルト 歌曲集「冬の旅」2017.1/11(水)19:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 http://www.kioi-hall.or.jp他公演 2017.1/13(金)いずみホール(06-6944-1188)ユリアン・プレガルディエン(テノール)声楽界のサラブレッドが魅せる新しい「冬の旅」取材・文:宮本 明Interview 父クリストフ譲りの深い表現で、宗教曲やリートを中心に、次世代テノールの注目株に躍り出たユリアン・プレガルディエン。鈴木優人のフォルテピアノで「冬の旅」を歌う。2世アーティスト同士。今年5月に来日した際、宣伝写真の撮影も兼ねて初めて顔を合わせた。 「こんにちはと挨拶した1分後にはシューベルトについて真剣に話し合っていました。カメラマンが『あのー…、撮影してもいいですか?』と割って入るぐらい熱中してね。使用するピアノのこと、調性(キー)のこと、休憩を入れるかどうか…。いろいろなことをダイレクトに意見交換しました。優人さんはハーグにいるので、今後もっと詳細を詰めて、コンサートにベストを尽くせると思います」 父親同士も共演歴がある。 「マタイ受難曲だったと思います。私の父も日本でそこそこ名前を知られているらしいですが(笑)、優人さんの父親・雅明さんはとても著名な音楽家。その息子同士がまた共演するのは素晴らしいこと。この世界には2代目が結構いるのですが、みな会った途端に共通項を感じます」 「冬の旅」には、父クリストフがさまざまなアプローチを試みてきた。現代ピアノ、フォルテピアノ、オーケストラ編曲、室内楽版…。ユリアンもまた、そのほとんどにチャレンジ済みで、今年1月にはルクセンブルクで、作曲家ハンス・ツェンダーの現代的オーケストレーションによる刺激的編曲の、しかも演出付き、オペラ形式の「冬の旅」に出演した。 「エクストリームな編曲にさらに創造的な可能性を加える解釈でした。私自身は常に作品のオリジナルに忠実であることに興味があるのですが、『冬の旅』に関してはさまざまな形があると考えています。そのあらゆるバージョンを体験することはとても面白いですし、今度の優人さんとのフォルテピアノ伴奏も、私の中ではオペラ形式のツェンダー版と、互いに影響し合っているのです」 今年、P.RHÉIというCDレーベルを立ち上げた。その第1弾もツェンダー版「冬の旅」になる予定。 「P.RHÉIはパンタ・レイ。万物は流転する、という古代ギリシャの哲学者ヘラクレイトスの言葉です。音楽も常に変わっている。『決して同じ川の流れには入らない』が私たちのモットーです。因襲にとらわれずに、どんな形の演奏がいいのか、どんどん疑問を抱いていただきたい。『冬の旅』の拡大解釈に挑んだツェンダーの編曲は、その最適な例だと思いました」 こだわり、熟考するユリアン。「冬の旅」の新しい顔を見せてくれる予感がする。アンドレイ・イオニーツァ(チェロ) チャイコフスキー・コンクールの覇者、日本初リサイタル文:笹田和人©Thomas von Wittich まさに“今が旬”の俊英が紡ぐサウンドに、いち早く触れる好機となろう。アンドレイ・イオニーツァは、昨年初夏に開かれた、チャイコフスキー国際コンクールのチェロ部門の覇者。審査員はもちろん、聴衆や批評家からも絶賛を受けて、一躍“時の人”となった。ルーマニアの首都ブカレストに生まれ、8歳でチェロを始めて、ベルリン芸術大学で名匠イェンス=ペーター・マインツに師事。2014年にはミュンヘン国際で第2位となったほか、09年のダヴィッド・ポッパーをはじめコンクールでの優勝や、サンクトペテルブルク・フィルなど一線楽団との共演も既に数多く経験しているにもかかわらず、今年でまだ弱冠22歳という逸材だ。 日本での初リサイタルは、ピアノの薗田奈緒子と共演。シューベルトの「アルペジオーネ」とショスタコーヴィチ、2つの名ソナタをはじめ、「ペッツォ・カプリチオーソ」「アンダンテ・カンタービレ」と滋味あふれるチャイコフスキーの調べを。さらに、大バッハの無伴奏チェロ組曲から第3番も弾く。©Marco Borggreve10/27(木)19:00 浜離宮朝日ホール問 パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831※全国公演の詳細は右記ウェブサイトでご確認ください。 http://www.pacific-concert.co.jp

元のページ 

page 57

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です