eぶらあぼ 2016.9月号
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75アンドレイ・ググニン(ピアノ)話題の新星によるリサイタルが早くも実現!文:高坂はる香生誕130周年記念 山田耕筰の音楽室内楽やピアノ曲から見えてくる山田耕筰の美学文:江藤光紀9/28(水)19:00 浜離宮朝日ホール問 サンライズプロモーション東京0570-00-3337 http://miy-com.co.jp10/2(日)15:00 文京シビックホール(小)問 シビックチケット03-5803-1111 http://bunkyocivichall.jp 7月に開催されたシドニー国際ピアノコンクールで優勝に輝いたばかりの、アンドレイ・ググニン。彼のリサイタルを、さっそく東京の浜離宮朝日ホールで聴くことができる。 ググニンは、1987年生まれ。モスクワ音楽院で、名教師として知られる故ヴェラ・ゴルノスタエヴァのもと学んだ。ロシアのピアニストらしい強靭なタッチと卓越したテクニックを持ち、誠実な音楽づくり、過剰な味付けなしで生き生きと響く音楽に魅力がある。すでに世界のコンサートホールで演奏活動を行っていたが、今回の優勝でまたひとつ華やかなキャリアを積むことになった。 今回彼が取り上げるのは、ベートーヴェンとリスト。冒頭に、シドニーでも弾いたベートーヴェンの「幻想曲」を演奏する。続く「熱情ソナタ」では、情感豊かながら、品格を感じさせるまっすぐなベートーヴェンの世界に期待したい。 さらに後半にはリストの「超絶技巧練 今年生誕130年を迎える山田耕筰は戦前、唱歌・軍歌・童謡にはじまり管弦楽曲からオペラまで旺盛に創作しただけでなく、楽団運営から政治との関わりに至るまで、まさに音楽界のボスとして頂点に“君臨”していた。明治・大正・昭和を生き、日本における西洋音楽の礎を築いた巨人だが、一部の歌曲を除いてその創作実態を知る人はあまりいないだろう。それもそのはず、楽譜の出版が本格化したのすら今世紀に入ってからという状況だったのだ。しかし、その全貌をうかがう環境がようやく整ってきた。 アニヴァーサリー・イヤーに山田の出生地である文京区のシビックホールが『山田耕筰の音楽』と題したコンサートを企画している。 合唱(NHK東京児童合唱団 他)が披露する、三善晃編曲「山田耕筰による五つの歌」では、西洋のスタイルに拠りながら、日本語の自然な抑揚と美を引き出した歌の世界に、とっぷりと浸るこ習曲集」で、前半とはまた一風異なる、華麗かつ繊細な表現力を披露する。磨き上げられた技巧に圧倒されることだろう。ボリュームたっぷりのプログラムで、さまざまな側面からググニンの実力を確認することができそうだ。 シドニー国際ピアノコンクールは、ゲルギエフをアーティスティック・パトロンに招いたことで彼との共演を含む副賞の演奏会も増え、これまで以上に注目を集めていた。優勝したググニとができるだろう。また、メゾソプラノの高橋由樹のソロで「この道」をはじめとする名曲も歌われる。一方、他の選曲はちょっとひねりが効いている。まず2曲のピアノ曲「哀詩―荒城の月を主題とする変奏曲」、「子供とおったん」より(ピアノ:浅井道子)。いずれもベルリン留学から帰った少し後の作品で、「哀詩」では瀧廉太郎の旋律がロマンンは、これからしばらく世界の舞台で間違いなく熱い視線を浴びることになる。この来日の機会に、ぜひ聴いておきたい。派的に色づけられていく。3曲の弦楽四重奏曲(YAMATO String Quartet)は、いずれも留学前に書かれたもの。第1番・第3番は未完、第2番は単一楽章で、西洋音楽の語法を吸収するプロセスが生々しく表れている。 名歌曲が生まれる“根っこ”にどのような歩みがあったのか、これらの作品を通じて確認したい。高橋由樹浅井道子YAMATO String Quartet

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