eぶらあぼ 2016.9月号
48/195

45下野竜也(指揮) 東京都交響楽団20世紀の傑作2曲と「チャイ5」を併せた好選曲文:江藤光紀ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団欧州へ発信する、東西文化の連繋文:柴田克彦第816回 定期演奏会 Cシリーズ10/15(土)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp第121回 名曲全集10/8(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール第94回 東京オペラシティシリーズ10/9(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp 10月の都響定期Cシリーズでは、下野竜也がチャイコフスキーの交響曲第5番を軸にしたプログラムを披露する。仕事ざかりに差し掛かった下野が都響をリードし、この超有名曲をどう料理するか見ものだが、抜群の選曲力を生かしたプログラミングにも注目だ。 はじめにペンデレツキ「ポーランド・レクイエム」より、弦楽合奏のための「シャコンヌ」。「ポーランド・レクイエム」はもともとペンデレツキが祖国ポーランドのために犠牲になったり国に尽くした人々を追悼した大作で、1984年に初演された。「シャコンヌ」はローマ教皇ヨハネ・パウロ2世を悼み2005年になって追加された楽章で、不安と悲嘆の入り混じったセンチメンタルな気分に貫かれている。 続いて今年没後20年を迎える武満徹の「ア・ストリング・アラウンド・オータム」。フランス革命200周年記念行事「パリの秋」フェスティバルの委嘱で1989年に書かれた。武満トーンは、ここでドビュッ 創立70周年を迎えた東京交響楽団は、今秋ヨーロッパ公演を行う。指揮は音楽監督のジョナサン・ノット。そこで出発を控えた10月に、ツアーの演目が披露される。 バンベルク響の首席指揮者を長く務め、2017年からスイス・ロマンド管の音楽監督にも就任する世界的指揮者ノットは、東響の音楽監督の任期を26年まで延長した。彼は、異例の長期契約を結んだその意欲を存分に発揮し、頻繁に登場する中で急速に一体感を醸成。古典と現代の縦断を軸にした斬新なプログラミングを通して、精緻な東響に多彩な色調と重層的な綾を付与し、高い評価を得ている。その成果を広く知らしめるのが今回のヨーロッパ公演。事前のお披露目にも当然力が入る。 2つのプログラムの内、ミューザ川崎と東京オペラシティでは、武満徹「弦楽のためのレクイエム」に始まり、ドビュッシー、ラヴェル、メシアンなどに連なるフランス風の甘美な夢の世界に変容する。独奏ヴィオラを務めるのは、都響のソロ首席・鈴木学。リンツ・ブルックナー管の首席を経ての現職で、ソロや室内楽奏者としても知られる名手だ。 どちらの曲も心に染み入るような美が格調高く歌われている。かつて前衛シー「海」を経て、ブラームスの交響曲第1番に至るプログラムが演奏される。 武満の出世作「弦楽のためのレクイエム」は、1957年に東響が委嘱初演した作品。楽団の歴史と日本音楽の“看板”であり、現代曲を十八番とするノットの真骨頂を示す曲でもある。葛飾北斎の版画「神奈川沖浪裏」にインスパイアされた「海」は、東西文化を結ぶ意味をもつと同時に、当コンビの精緻な綾がモノを言う作品だ。そして今回の訪問地である中欧を代表するブラームスの1番。この超名作は「ノットが大切に温めてきた」とのことだし、彼ならば間違いなく清新なインパクトをの旗手とも見られていた二人の作曲家から、芸術の秋にふさわしい内省を具えた曲を選ぶしたたかさ。さらに哀愁を帯びた旋律が勝利の凱歌へと変わるチャイコフスキーの5番と組み合わせたあたりに、下野らしいホスピタリティ精神が表れている。現代音楽に開眼する一日になるかも!?与えてくれる。日欧のつながりを示す意義あるプログラムで、1音1音が耳を惹き付けるその演奏に酔いしれよう!鈴木 学 ©M.Okubo下野竜也 ©Naoya Yamaguchi(Studio Diva)ジョナサン・ノット ©K.Miura

元のページ 

page 48

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です