eぶらあぼ 2016.9月号
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滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールは、関西随一のオペラ劇場として、一流のオペラやバレエに加えコンサートも開催。また、国内外の実力派アーティストが充実したアンサンブルやソロも披露するほか、講座なども開催しています。このコーナーではびわ湖ホールが主催する注目の公演をご紹介します。びわ湖ホールPreviewびわ湖ホールチケットセンター077-523-7136 https://www.biwako-hall.or.jp/田中とびわ湖ホール声楽アンサンブルは、10年前から東京公演を含めて7回も共演しており、気心も知れた間柄である。今回はグレゴリオ聖歌に始まり、フランスと日本の優れた合唱作品を配したバランスの良い魅力的なプログラムとなった。 グレゴリオ聖歌では、キリスト教最大の祝日である「復活祭のミサ」から、「第3旋法の入祭唱」、「第2旋法の昇階唱」、「第1旋法の続唱」がユニゾンで厳かに歌われる。ドビュッシーの「シャルル・ドルレアンの詩による3つのシャンソン」はこの作曲家特有の色彩感を持つ4声から8声のア・カペラ作品で、女性の美を賛美し、太鼓の音にも我関せず、冬の寒さを憎む、という内容を表現する。メシアン「おお聖なる饗宴」はピアノ伴奏による清澄な宗教曲である。プーランク「クリスマスのための4つのモテット」はクリスマスのためのア・カペラ作品で、作曲者晩年の無調的な響きが美しい。 後半は日本の作品。まず林光「月 わたし 風」は宗左近のテキストに付曲し、1992年に田中信昭の指揮で初演された。百人一首を題材に情感豊かに、やや皮肉に人間観照する。三善晃「ゆったて哀歌集」は2004年初演の五木寛之の書き下ろし詩による組曲で、人生の悲しさ虚しさを歌う。ア・カペラとピアノ伴奏が交代する20分弱の叙情の世界。三善晃「生きる」は、谷川俊太郎のテキストで、生きる意味を熱く力強く歌い上げる。びわ湖ホール声楽アンサンブルの高度なアンサンブル技術が遺憾なく発揮される豪華な作品のラインアップで、実演が大いに期待される。 びわ湖ホール声楽アンサンブルは、びわ湖ホール開館の1998年に創設され、厳しいオーディションで選ばれたプロの声楽家集団である。ホール主催の大規模なオペラ公演では合唱の中核となり、最近の公演では東京公演での《ドン・パスクワーレ》や、沼尻竜典オペラセレクション《竹取物語》での合唱の雄弁な活躍が音楽的成功の大きな力となった。中小規模のオペラではメンバーがソリストとして出演する。《ルサルカ》《フィガロの結婚》《ドン・キホーテ》では清新な魅力で楽しませてくれた。また、年に数回の定期公演は昨年2月に60回を超え、様々な合唱作品の他、オペラや受難曲なども取り上げて、常にハイレベルな合唱アンサンブルが高く評価されている。そして滋賀県内の学校を対象とした「巡回公演」や「ふれあい音楽教室」で合唱や音楽の楽しさを広めている。 びわ湖ホール声楽アンサンブルは、若手声楽家の登竜門のようでもある。年に数十回の舞台経験を積むことにより、オペラ歌手として、ソリストとして、アンサンブルとしての実力を飛躍的に向上させる。このアンサンブルで学んだ卒業生は、「ソロ登録メンバー」となって、びわ湖ホール公演のソリストとして活躍しているばかりか、ほかのオペラ公演の主役級に抜擢されることも多い。 このように多彩な活動を行いながら着実に能力を高めてきたびわ湖ホール声楽アンサンブルにとっても、定期公演は自らの力を世に問う絶好の機会である。ましてや定期公演と連動した東京公演の場合には、より広い聴衆にアピールすべくメンバーの意気込みも尋常ではなく、大きな成果が期待できることは過去の東京公演からも明らかであろう。 今回は合唱界の大御所・田中信昭を指揮者に迎える。びわ湖ホール声楽アンサンブル 東京公演 vol.9“美しく楽しい合唱曲”の夕9/6(火)19:00 東京文化会館 小ホール指揮:田中信昭 ピアノ:中嶋 香文:横原千史びわ湖ホール声楽アンサンブル東京公演 vol.9オペラやコンサートで活躍する精鋭たちの妙技を東京で聴くびわ湖ホール声楽アンサンブル田中信昭 ©駒崎共一

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