eぶらあぼ 2016.9月号
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170CDCDCDCDMy Favorites/小林正枝&須関裕子ショスタコーヴィチ:交響曲第7番「レニングラード」/ラザレフ&日本フィル高橋アキ プレイズ エリック・サティ 3ルベル:四大元素 他/ゲーベル&ムジカ・アンティクヮ・ケルンマスネ:タイスの瞑想曲/クライスラー:愛の喜び/サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン/ドヴォルザーク:我が母の教え給いし歌/ポンセ:エストレリータ/サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ/フランク:ヴァイオリン・ソナタ 他小林正枝(ヴァイオリン)須関裕子(ピアノ)ショスタコーヴィチ:交響曲第7番「レニングラード」アレクサンドル・ラザレフ(指揮)日本フィルハーモニー交響楽団サティ:冷たい小品集、サラバンド、オジーヴ、天国の英雄的な門への前奏曲、夢みる魚、幻想ワルツ、メドゥーサの罠、(犬のための)ぶよぶよした本当の前奏曲 他高橋アキ(ピアノ)ルベル:四大元素/テレマン:ソナタ(七重奏曲)ホ短調/グルック:バレエ「アレクサンドロス大王」ラインハルト・ゲーベル(指揮)ムジカ・アンティクヮ・ケルンナミ・レコードWWCC-7817 ¥2500+税収録:2014.3/14,3/15、サントリーホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00598 ¥3000+税カメラータ・トウキョウCMCD-28338 ¥2800+税TOWER RECORDS/ユニバーサル ミュージックPROC-1972 ¥1143+税ブランデンブルグ州立歌劇場オーケストラに籍を置く傍ら、ソロや室内楽でも活躍する小林正枝。ドイツに渡って10年目となる節目に発表した当盤には、タイトルが示す通り、多彩な9つの“お気に入り”が収められている。彼女はこれらの名曲を、透明感のある音色とフレッシュな歌心で、端正に表現。サラサーテやサン=サーンスの技巧的な箇所も知的にきりりと弾き進めてゆく。そして、トリを飾るフランクのソナタでは、共演の須関裕子と充実した音楽の“対話”を展開。一つひとつの音を美しく響かせながら、情熱と抒情が調和したアンサンブルを織り上げている。(渡辺謙太郎)日本フィルでのラザレフのリハーサルは毎回かなり緻密で厳しいと聞くが、こういう「レニングラード」に接すると「さもありなん」と深く頷いてしまう。きっちり彫琢された第1楽章の戦争のテーマ、突然音楽が動き出す第3楽章中間部の迫力や、立体的に構築されたフィナーレなど、淀みない流れの中に様々な美質が浮かび上がってくる。弱音には緊張感が、爆音には力強さに加え豊かさがあり、時に人間精神の限界に迫る楽曲の大きな振幅を的確に捕らえる。彼は今後、首席指揮者から桂冠指揮者兼芸術顧問へと移行するが、日本フィルがその下でいかに豊かなパレットを手に入れたかが分かる。得難いマエストロだ。(江藤光紀)サティ演奏の第一人者として知られる高橋アキが、2013年から再び録音に取り組んでいるサティ作品集の第3弾。冒頭、やわらかな音で魅惑的に奏する「冷たい小品集」から、瞬く間にサティ・ワールドに引き込む。「サラバンド」や「オジーヴ」は、浮遊するように移り変わる和音一つひとつを慈しむような演奏。深い響きに、いくつもの美しい水彩画が目に浮かぶよう。喜劇のために書かれた「メドゥーサの罠」では、硬質に響く鮮やかな高音、不思議な響きの和音が思い切って鳴らされるたびに、高橋とサティの遊び心や自由な精神がぴたりと呼応するように感じられる。 (高坂はる香)これは、現代音楽なのか?! 初めて聴く人は、きっと驚きを隠せないはずだ。冒頭に収められたルベル「四大元素」のカオスの場面における、ぐいぐいと迫ってくる不協和音の嵐。古楽復興の波の中、このフレンチ・バロックの問題作も一躍脚光を浴びることとなったが、ゲーベルの演奏は、群を抜いて衝撃的だった。あれから20年。再発になった録音を改めて聴いても、その鮮烈さは些かも削がれてはいない。それどころか、併録のテレマンやグルックもあいまって、今も感性へダイレクトに語り掛けてくる。ゲーベル&ムジカ・アンティクヮ・ケルンが持っていた、桁外れのパワーを再認識させる1枚と言えよう。 (寺西 肇)

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