eぶらあぼ 2016.8月号
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41セバスティアン・ヴァイグレ(指揮) 読売日本交響楽団R.シュトラウスの華麗なるサウンドに浸る一夜文:江藤光紀エリアフ・インバル(指揮) 東京都交響楽団80歳の巨匠による精緻な20世紀“協奏曲”プロ文:江藤光紀第561回 定期演奏会 8/23(火)19:00 サントリーホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp第814回 定期演奏会 Aシリーズ 9/15(木)19:00 東京文化会館問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp 7月にコルネリウス・マイスター(来年度から首席客演指揮者に就任)、アレクサンダー・リープライヒと立て続けにドイツの若手・中堅指揮者を招聘する読響だが、8月にはさらに、今、ドイツで最も熱い劇場を率いるマエストロ、セバスティアン・ヴァイグレが登場する。 ヴァイグレはもともとシュターツカペレ・ベルリンの第1ホルン奏者だったが、1990年代より指揮活動も開始、バルセロナ・リセウ大劇場の音楽総監督を経て、2008年よりフランクフルト歌劇場の音楽総監督を務めている。読響現常任指揮者のカンブルランがかつて黄金時代を築いたことで知られる歌劇場だが、昨年もドイツのオペラ専門誌で年間最優秀歌劇場に選ばれるなど、現支配人とヴァイグレのコンビの手腕も高く評価されている。 さて、今回ヴァイグレが披露してくれるのは、R.シュトラウスが“音符で描く物語”だ。「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」では、中世のト インバルが常任だった時代に都響の音はぐんと重く、厳しくなった。現在の隆盛を導いた忘れがたいマエストロも80歳。さらに今年は両者の初共演から四半世紀にもあたるそうだ。現在、桂冠指揮者のポストにある名匠が指揮する9月定期は、両者の名演に胸を熱くしてきたファンならずとも聴き逃せない。 9月15日の定期Aシリーズは膨大なレパートリーを誇るインバルの精緻な読みがとりわけ映える近現代プログラム。前半はロシアもので、グリンカ《ルスランとリュドミラ》序曲に続いて、プロコフィエフ「ピアノ協奏曲第2番」。第一次大戦勃発前夜に書かれたが、まだ20代前半だった作曲家の筆致はモダニズムの極北を走り、グロテスクなバーバリズム、巨大でメカニックな技巧性、ひんやりとした抒情など、後年のプロコフィエフの創作を特徴づける要素が余すところなく表れている。ソロのアンナ・ヴィニツカヤは2007年のエリーザベリックスターが行く先々でみせる他愛のない悪行、そして捕まって縛り首になるまでを小気味よく描写していく。「家庭交響曲」は、妻と子供に囲まれたシュトラウス自身を描いてしまうといういささか露悪的なアイディアで作られている作品。何の変哲もない日常がこの作曲家の手にかかるとゴージャスなシンフォニーに様変わりするのだから不思ト王妃国際の覇者だが、その時に彼女が選んだのがこの曲。第3番に隠れて今一つ影の薄い難曲の、鮮やかな“捌きっぷり”は評判を呼んだ。今回もお得意のレパートリーで真価を問う。 後半はバルトーク「管弦楽のための協奏曲」。最晩年の傑作で、5楽章構成の大管弦楽のところどころに各楽器の議だ。ヴァイグレもオーケストラをオペラティックに歌わせてくれるだろう。 前半には「4つの最後の歌」もとりあげられる。2012/13年シーズンまでフランクフルト歌劇場の専属で、現在はMETなど世界の劇場に大きく羽ばたいているソプラノ、エルザ・ファン・デン・ヘーヴァーが登場。ヴァイグレと息の合ったところを見せてくれるだろう。エルザ・ファン・デン・ヘーヴァー ©Roberto Giostraセバスティアン・ヴァイグレ ©Wolfgang Runkelアンナ・ヴィニツカヤ ©Gela Megrelidzeエリアフ・インバル ©堀田力丸ソリスティックな妙技が挟まれる。中央にバルトーク特有の夜想的楽章を置き、ダイナミックなうえに知的な仕掛けも随所に組み込まれた作品で、マーラー指揮者としてのインバルの腕がとりわけ冴えそうだ。統率のきいたリードのもと、都響の名手たちが競う妙技にも期待したい。

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