eぶらあぼ 2016.8月号
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滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールは、関西随一のオペラ劇場として、一流のオペラやバレエに加えコンサートも開催。また、国内外の実力派アーティストが充実したアンサンブルやソロも披露するほか、講座なども開催しています。このコーナーではびわ湖ホールで行われる注目公演をご紹介します。びわ湖ホールPreviewびわ湖ホールチケットセンター077-523-7136 https://www.biwako-hall.or.jp/いのもうなずける。 びわ湖ホールへの登場は5回目だが、リサイタルでは今回が初めて。またこの公演は、プラハ国立歌劇場の《ノルマ》の横須賀と東京公演の合間に行う唯一の来日リサイタルでもある。本領ヴェルディの彼女の代名詞ともいうべき《運命の力》レオノーラのアリアも、最近よく取り上げているプッチーニの名アリアも大いに楽しめるだろう。14年東京でのリサイタルが伝説的になっているだけに、このリサイタルへの期待は高まる一方だ。 2つめは、今年創立20周年のザクセン声楽アンサンブル(SVE)の記念公演。ア・カペラ(無伴奏合唱)音楽の最高峰のハーモニーが聴けるのは嬉しい。本拠地ドレスデンでは、ペーター・シュライアーなど多くの名歌手を輩出した聖十字架教会合唱団が有名であるが、SVEの団員の多くも同合唱団出身だ。また、SVEの指揮者のマティアス・ユングも一時期、同合唱団 今月は声楽の魅力的な2公演についてご紹介したい。 まずは現代最高のソプラノ歌手ディミトラ・テオドッシュウのリサイタル。テオドッシュウといえば、当代随一のヴェルディ歌いとして名高い。ここ数年毎年のようにヴェルディのオペラ全曲盤CD/DVDをリリースし、その主役を歌っている。《ナブッコ》《十字軍のロンバルディア人》《運命の力》《レニャーノの戦い》《マクベス》など、どれも名盤だ。ヴェルディ以外でも、ドニゼッティ《ロベルト・デヴェリュー》、《ルクレツィア・ボルジア》、ベッリーニ《テンダのベアトリーチェ》がある。オペラ全曲盤の新譜がめっきり少なくなった現在、これは驚異的なことだ。 テオドッシュウはヴェルディ作品に要求される劇の葛藤を歌いきるドラマティコであり、野太い低音から柔らかな高音まできれいに伸ばす幅広い音域をもつ。装飾音が軽やかなコロラトゥーラも巧い。またドラマティコでありながら、同時に抒情的で繊細なピアニッシモも、とても美しく響かせることができる。彼女はギリシャ系でもあり、20世紀最大のソプラノと言われるマリア・カラスの再来との呼び声が高特別コンサート ディミトラ・テオドッシュウ ソプラノ・リサイタル10/28(金)14:00 大ホール特別コンサート ザクセン声楽アンサンブル10/29(土)19:00 小ホール文:横原千史ディミトラ・テオドッシュウ ソプラノ・リサイタル & ザクセン声楽アンサンブル華麗なるディーヴァ唯一のリサイタルと名門合唱団の記念公演を愉しむディミトラ・テオドッシュウザクセン声楽アンサンブル ©C.Eckeltマティアス・ユング ©C.Eckeltを指導し、音楽監督代行も務めていた。ユングはその後にSVEを創設し、長年にわたり鍛え、練りに練り、世界最高レベルの合唱アンサンブルを作り上げた。ユングはびわ湖ホール声楽アンサンブルの定期公演を2回指揮しており、昨年のバッハ「ヨハネ受難曲」の名演は語り草となっている。 今回の記念公演のプログラムはバッハとその周辺作曲家のモテット。大バッハのモテットは複雑な対位法の精妙なテクスチュアで書かれた難曲で、バッハ自身、手兵の複数の合唱団のうち、最上レベルの合唱団員にしか歌わせなかったほどだ。またバッハの後継カントールのゴットリープ・ハラー、弟子のゴットフリート・アウグスト・ホミリウス、「子供の歌の父」といわれるヨハン・アダム・ヒラーらの珍しいモテットが聴けるのも楽しみだ。ドイツ・プロテスタント教会の合唱モテットの精華を極上の演奏で聴けるのは、まさに耳の愉悦に他ならない。

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