eぶらあぼ 2016.7月号
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39高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団第300回を壮大に彩る充実の音楽ドラマ文:柴田克彦日生劇場 × びわ湖ホール × 藤原歌劇団 × 日本センチュリー交響楽団 共同制作公演《ドン・パスクワーレ》名歌手たちと注目の演出でおくる大人のコメディ文:岸 純信(オペラ研究家)定期演奏会 第300回記念演奏会 ベルリオーズ:劇的物語「ファウストの劫罰」9/10(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp7/1(金)18:30、7/2(土)14:00、7/3(日)14:00 日生劇場問 日本オペラ振興会チケットセンター044-959-5067 https://www.jof.or.jp いま、高関健&東京シティ・フィルへの注目度が増している。高関の常任指揮者就任披露となった昨年4月のスメタナ「わが祖国」以来、音楽的な充実度の高い公演が続き、特に今年5月のシベリウスの交響曲第7番とマーラー「大地の歌」では、この難プログラムの美感を精緻かつ的確に描いた、密度の濃い名演を展開。機能やサウンド面での進境も示し、群響で証明した高関のオーケストラ・ビルディングの手腕を実感させると同時に、就任2年目のシーズンへの期待を大きくさせた。 さて、第300回記念演奏会でもある9月の定期では、ベルリオーズの劇的物語「ファウストの劫罰」が披露される。ゲーテの「ファウスト」を脚色した本作は、大編成の管弦楽に、4人の独唱、6部の合唱と児童合唱を加えた全4部の大作。ドラマ性や迫力はもとより、叙情味や愉しさなども盛り込まれた、聴きごたえ満点の音楽であり、「ラコッ 功成り名遂げたローマの老紳士。時間もお金もあるから支配欲が年々強まり、頼みの甥にも小言ばかり。挙句の果てには「口答えするなら出て行け! 遺産もやらんぞ!」と怒鳴り散らす。そこで甥が反旗を翻し、老紳士かかりつけの医者と組んで自分の恋人を送り込み、屋敷をひっかきまわすよう仕向ける。その結果、女性に振り回された老人は散々な目に。彼の頑固さは改まるのか…? ベルカント・オペラの大家ドニゼッティの《ドン・パスクワーレ》は、名歌手たちの丁々発止のやりとりが楽しい喜劇のオペラ。ツィ行進曲」「妖精の踊り」「鬼火のメヌエット」などの名曲も耳を楽しませる。 そしてこの壮大な音楽ドラマは、ブルックナーなどで実績ある高関の類い稀な構築力がフルに生きる作品。今年3月のドヴォルザーク「レクイエム」や「大地の歌」で示した声楽付き大作での巧みなバランス感覚も多大な効果を発揮するであろう。ソリストには、西村悟 7月の日生劇場での菊池彦典指揮による公演では、老紳士パスクワーレ役で重鎮、折江忠道と牧野正人が競演し、彼を手玉に取るノリーナ役では名ソプラノの佐藤美枝子と新星の坂口裕子が美声を競うほか、新進テノール藤田卓也、今を盛りのバリトン森口賢二など歌役者の面々が集うので、舞台がそれは賑やかになるだろう。 ちなみに、今回は、気鋭の演出家フランチェスコ・ベッロットのステージングも(ファウスト)、福島明也(メフィストフェレス)、林美智子(マルグリット)、北川辰彦(ブランデル)と日本屈指の歌手たちが揃い、東京シティ・フィル・コーアも記念公演だけに渾身の名唱必至。高関&東京シティ・フィルの充実ぶりを確かめつつ、「自己犠牲によって究極の愛を勝ち得た男のスーパーロマン」(チラシより)を、存分に堪能したい。注目の的。彼のコンセプトは「ドン・パスクワーレの内面の移り変わりを、舞台セットの変化で表す」もので、邸内の豪華な調度品がノリーナの手でどんどん売り払われ、彼女がパスクワーレを平手打ちにする名場面では、老人の世界観が一挙に崩れるさまを描き出すとのこと。騒動が済んで平和を取り戻した男のもとに残るのは自由、それとも孤独? 大人のコメディならではのユーモア溢れる舞台づくりをお楽しみに。西村 悟©Yoshinobu Fukaya(aura)フランチェスコ・ベッロット福島明也林 美智子©Toru Hiraiwa北川辰彦高関 健©Masahide Sato折江忠道牧野正人佐藤美枝子坂口裕子菊池彦典

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