eぶらあぼ 2016.7月号
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31ノット&東響 モーツァルト《コジ・ファン・トゥッテ》(演奏会形式)名匠が満を持した特別な舞台文:柴田克彦アラン・ギルバート(指揮) 東京都交響楽団ウィーンとニューヨークを繋ぐ“伝統”文:江藤光紀12/9(金)18:30 ミューザ川崎シンフォニーホール12/11(日)15:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 ミューザ川崎シンフォニーホール044-520-0200  東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296https://www.kawasaki-sym-hall.jp http://www.geigeki.jp都響スペシャル 7/24(日)14:00第812回 定期演奏会 Bシリーズ 7/25(月)19:00サントリーホール問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp 2014年4月から東京交響楽団の音楽監督を務めるジョナサン・ノットは、就任前の取材時にこう語っていた。「モーツァルトの『ダ・ポンテ3部作』を演奏会形式でやりたい」。ドイツの歌劇場でキャリアを開始した彼は、オペラにも造詣が深く、13年のルツェルン音楽祭では、《ニーベルングの指環》の全曲上演(演奏会形式)で話題を呼んでいる。今年12月、ミューザ川崎と東京芸術劇場で行う《コジ・ファン・トゥッテ》は、そんな彼の念願が叶った待望の上演だ。 本公演にはいくつかポイントがある。まず東響にとってモーツァルトのオペラは、新国立劇場での経験と、名物企画「モーツァルト・マチネ」で培った演奏様式が融合する最上の演目であ 現ニューヨーク・フィル音楽監督のアラン・ギルバート。音楽一家に育ったニューヨーカーだが、日系人ということで親近感を抱いている人も多いだろう。就任直後、そして一昨年の同団との来日で活躍ぶりも伝わってきたが、そちらが多忙なのか、日本のオーケストラに登場する機会はあまり多くなかった。 都響とも2011年の初共演の後しばらく間が空いたが、今年の1月に久しぶりに再共演を果たし、ワーグナー《指環》のギルバート自身による抜粋版などを披露した。そこから半年での再々共演だから、関係性もぐんと深まってくるはずだ。 今回のプログラムでは、ウィーンからニューヨークへと受け継がれる“伝統”が味わえそう。モーツァルトの交響曲第25番は、若き作曲家がウィーンに旅行した際、当時この都市に起こりつつあったシュトルム・ウント・ドランク(疾風怒濤)運動に影響を受けて書かれた。第40番の交響曲と同じト短調ること。また演奏会形式によって、愉しくも緻密なアンサンブル・オペラ《コジ》の真価がより明確に表出されること。ノットも「一丸となって聴衆に向かい合い、巻き込みながら一緒にコンサートを作るという特別な体験」(チラシより)と語る。加えて、レチタティーヴォをノット自身がハンマークラヴィーアで演奏する点も見逃せない。そして舞台監修とドン・アルフォンソ役を、現代最高のバリトン歌手の一人、トーマス・アレンが務めるほか、歌手陣にで書かれ、自己の内面への厳しい眼差しが感じられる。 後半はマーラーの交響曲第5番だが、指揮者としてのマーラーにとっても、モーツァルトは大切な作曲家であった。マーラーはウィーン宮廷歌劇場の音楽監督から大西洋をまたぎニューヨーク・メトロポリタン歌劇場に移籍しているが、このとき彼はニューヨーク・フィルの音楽監督も務めている(ちなみにウィーン・フィルとニューヨーク・フィルは同じ1842年の創立)。ニューヨーク・フィルの仕事ではいつも歴史を肌に感じると語ったギルバートだが、大西洋を越えた伝統を、今度は太平洋をまたいで都響にもたらしてくれるだろう。も、ミア・パーション、マイテ・ボーモン、ヴァレンティナ・ファルカス、ショーン・マゼイ、マルクス・ウェルバと、ザルツブルク音楽祭やウィーン、METなどで活躍中の豪華な実力派が揃う。 これは、持ち前の精緻さに立体感を加えて評価も高いノット&東響の、3シーズン目の進化を知ると同時に、演奏会形式での上演が意外に少ないモーツァルト・オペラを再発見する機会でもある。さあここで、傑作の真の愉しさを味わおう。マルクス・ウェルバ ©Francesco Lucianiアラン・ギルバート ©Pascal Perichジョナサン・ノット ©K.Miuraミア・パーション ©Mina artistbilderヴァレンティナ・ファルカストーマス・アレン ©Sussie Ahlburgマイテ・ボーモン ©Kirsten Nijhofショーン・マゼイ ©Barbara Aumüller

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