eぶらあぼ 2016.7月号
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246©田中克佳(2点とも)7/13(水)~7/24(日) 東急シアターオーブ問 Bunkamuraチケットセンター03-3477-9999 http://theatre-orb.com『ヨセフと不思議なテクニカラー・ドリームコート』話題の振付家が巨匠のデビュー作を新演出!文:伊達なつめ 1967年、まだ10代の作曲家志望の学生が、小学校の音楽の先生から学芸会で発表するための楽曲を依頼され、先輩に作詞を頼んで15分の小品を完成させた。この「学生」が、アンドリュー・ロイド=ウェバー(『キャッツ』『オペラ座の怪人』『エビータ*』)、「先輩」がティム・ライス(『ジーザス・クライスト・スーパースター*』『ライオンキング』)、そして「小品」が、『ヨセフと不思議なテクニカラー・ドリームコート』の原型(*は2人のコンビ作品)。つまり、この作品は天才クリエイター誕生のキラキラする瞬間をとらえた、若さと希望に満ちた初々しいミュージカルなのだ。 父に溺愛されて美しいコートを授かったことで、他の兄弟に疎まれ波乱の半生を送る、旧約聖書のエピソードに基づくヨセフのストーリー。学校劇からスタートした小品はいつしか長尺のミュージカルに進化し、1980年代以降はブロードウェイなど北米での上演も盛んになった。特に92年にトロントで開幕したダニー・オズモンド主演版(スティーブン・ピムロット演出)は、ロングランし映像化もされたことで、その、子どもがたくさん出てきて合唱するオープニング場面が定着。2011年、東日本大震災の影響で途中で公演中止になってしまった初の来日版も、このスタイルを踏襲していた。 「そんな子ども目線を改めるためにはどうしたらいいかをまず考えた」と語るのは、今回の振付・演出を担ったアンディ・ブランケンビューラー。いまブロードウェイで社会現象的大ヒットを続け、トニー賞史上最多の16部門でのノミネートを記録した『ハミルトン』で振付を手がけ(もちろん振付賞候補)、俄然注目を集める俊英だ。その演出は、おとなの共感を引き寄せるべく、子どもの合唱を廃し、現実に押し潰され夢を見ることを忘れてしまった青年の姿を見せる導入部から、ひと味違う。 さらに、今もっともイキのいい振付家らしく、ノンストップで流れる楽曲にあわせて踊りまくるダンス・シーンが圧巻。ロック、カントリー等あらゆる曲調を繰り出すロイド=ウェバーに負けじと、バレエ、ヒップホップ、ジェローム・ロビンズ、ボブ・フォッシーなど、レジェンドからストリートまで潤沢なダンスのボキャブラリーを惜しみなく繰り出し、見事なレビューショーを完成させている。巨匠のルーツと旬の才能による、ノリノリのエンタテインメントでスカッとしよう!7/2(土)、7/3(日)各日15:00 京都芸術劇場 春秋座 特設客席問 京都芸術劇場チケットセンター  075-791-8240 http://www.k-pac.org笠井 叡 × 山田せつ子 新作ダンス公演『燃え上がる耳』ダンス界の先端を行く“師弟”のクリエイション文:高橋森彦左:山田せつ子 右:笠井 叡 撮影:笠井爾示 押しも押されもせぬ大御所にして、意気盛んに独舞や群舞作品を世に問う笠井叡。笠井が創立した舞踏研究所「天使館」の初期のメンバーで、独立後は国内外で活動し、ダンスカンパニー「枇杷系」を主宰する山田せつ子。長年第一線を疾走する師弟が初夏の京都で共演する。 構成・振付も担当する笠井は大きな評判を呼んだ『nobody Eve―誰でもないもののイヴ』(2003年)、『今晩は荒れ模様』(15年)でも山田を起用した。その表情豊かで抒情性に富んだダンスは得難い魅力を放つ。笠井自身も今年2月の独舞『冬の旅』で初のセルフコレオグラフィーに挑み、シューベルトの名曲集を鮮烈に踊るなど活動のボルテージは高い。 佐伯有香、野田まどか、福岡まな実、松尾恵美という、関西を拠点に幅広く活躍する個性的かつ実力派のコンテンポラリーダンサーが集い、笠井、山田とクリエイションを行うのも見どころである。遠方からでも駆けつけたい要注目の舞台だ。

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