eぶらあぼ 2016.6月号
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71ユーリ・バシュメット(指揮/ヴィオラ) 水戸室内管弦楽団名奏者との理想的な共演が実現文:江藤光紀神奈川フィルハーモニー管弦楽団、6月と7月の公演よりショスタコーヴィチの対照的な2つの交響曲を聴く文:笹田和人第96回 定期演奏会6/4(土)18:30、6/5(日)14:00 水戸芸術館コンサートホールATM問 水戸芸術館チケット予約センター029-231-8000 http://www11.arttowermito.or.jp名古屋フィル + 神奈川フィル スペシャル・ジョイント・コンサート6/25(土)14:00 横浜みなとみらいホール問 神奈川芸術協会045-453-5080第320回 定期演奏会7/28(木)19:00 横浜みなとみらいホール問 神奈川フィル・チケットサービス045-226-5107 http://www.kanaphil.or.jp 6月の水戸室内管弦楽団定期にユーリ・バシュメットが客演する。バシュメットはヴィオラがソロ楽器としてまだ認知されていない時代から道を切り開いてきた、ソ連~ロシアを代表するヴィオラ奏者。リヒテルやロストロポーヴィチ、クレーメルといった名だたる演奏家と共演してきただけでなく、モスクワ・ソロイスツ合奏団を自ら設立し、指揮者としても長年の実績を持つ。ソリスト級の精鋭からなる水戸室内管は、通常協奏曲では団員が独奏者となるが、指揮者としてもソリストとしても経験豊富なバシュメットは理想的で、まるでメンバーとなったかのように、互いの長所を引き出しあう共演になるのではないか。 プログラムははじめにハイドン、最後にシューベルトのシンフォニーをバランスよく配置。ハイドンの交響曲第83番の「めんどり」という俗称は第1楽章第2主題に由来するが、作曲者本人が付け 神奈川フィルハーモニー管弦楽団が、それぞれの指揮者の個性が滲む、ショスタコーヴィチの交響曲を軸とした2つのステージで、本格的な夏の訪れを告げる。 まずは、常任指揮者を務める川瀬賢太郎のタクトによる、名古屋フィルハーモニー交響楽団と合同のスペシャル・ジョイント・コンサート(6/25)。2014年に神奈川フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者に就任して以降、その溌剌とした音楽創りが、広く音楽ファンの支持を得ている川瀬が、名古屋フィルの指揮者も兼ねていることから、“夢の共演”が実現した。 ここでは、重量級の傑作・第7番「レニングラード」を取り上げる。ナチス・ドイツとのレニングラード(現・サンクトペテルブルク)攻防戦を題材にファシズムとの闘争を描くと共に、スターリン批判の思いも込めたとされる複層的な作品。若きマエストロが2つのオーケストラの総勢130人と共に紡ぐ、圧倒的な迫力のサウンドでぜひ体感したい。ピアたものではなく、曲はいたって真面目。熟練の技法に彩られた充実した音楽だ。シューベルトの第5番には室内楽的な軽やかさと爽やかさがある。いずれも水戸室内管、水戸芸術館のコンサートホールにぴったりの規模・編成の曲だ。 その間にはバシュメットが2曲の協奏的作品、ブルッフ「コル・ニドライ」、パガノの菊池洋子を独奏に据えての、モーツァルトの協奏曲第21番も楽しみだ。 そして、もうひとつが、名匠・高関健を指揮台に迎えての交響曲第15番(7/28)。ショスタコーヴィチ最後の交響曲は、古典の形式に立ち返る一方、作曲家が自らの生涯を振り返る内省的な場面や、ニーニ「ヴィオラ協奏曲」を聴かせる。原曲はいずれも別の楽器・編成(ブルッフ:チェロ/パガニーニ:ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ギターの四重奏曲)のためのものだが、バシュメットのテクニックとインスピレーションが、水戸室内管の名手たちとのコラボを通じて、原曲の世界をどう広げていくかを楽しみたい。室内楽的な手法も目立つだけに、大胆かつ繊細な高関の音楽創りがいっそう映えるはず。さらに、この交響曲にも引用されているロッシーニの歌劇《ウィリアム・テル》序曲と、ソロ・コンサートマスターの石田泰尚の独奏によるバーバーの詩情豊かな協奏曲も披露される。水戸室内管弦楽団ユーリ・バシュメット ©Oleg Nachinkin菊池洋子©Marco Borggreve高関 健 ©Masahide Sato石田泰尚 ©井村重人川瀬賢太郎 ©Yoshinori Kurosawa

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