eぶらあぼ 2016.6月号
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62れを聴き分けて合わせるので、耳のパレットが増えて柔軟になる。それを重ねるうちに、ヴィブラートをどうするかといったことも、いちいち言わなくても揃ってくると思うんですね。そもそもヴィブラートの有無をことさらに問題にするのは本質的ではないこと。それよりもオーケストラで古典派の音楽を演奏する時は、音をどういうシェイプで減衰させるか、それを揃えることが重要なのです」 弦楽パートの規模も、原則的に最大で8型(第1ヴァイオリンが8人)の編成だ。 「僕にとって8型は十分に大きな編成。とはいえ、弦の編成がこれ以上に大きいと管楽器はすごく大きく吹かないとバランスが取れないのですが、8型ならそういう問題が解消されます。ベートーヴェンの音楽の偉大で堅固な印象というのは音量や人数によるものではなく、それ以外のところにたくさんの ©K.Miura山形交響楽団特別演奏会 さくらんぼコンサート 2016 大阪公演6/22(水)19:00 いずみホール問 KCMチケットサービス0570-00-8255 http://www.kojimacm.com鈴木秀美(指揮/チェロ)指揮とチェロで古典派の傑作に深く迫る取材・文:宮本 明Interview 日本古楽界の中心的存在の一人である鈴木秀美。チェロ奏者としてはもちろん、近年は指揮者としての活動も活発だ。6月には、2013年から首席客演指揮者を務める山形交響楽団を振る。 「意識としてはチェロと指揮は半々。どちらに重きを置いているというわけでもありません。指揮には子供の頃から興味があって、桐朋時代は尾高忠明先生や秋山和慶先生に教えていただきました」 メンデルスゾーン12歳の時の弦楽シンフォニア第3番をオーケストラの中で、ハイドンのチェロ協奏曲第2番を独奏で弾き振り、そして山形交響楽団が今シーズンのテーマにしているベートーヴェン交響曲全曲演奏の一環となる第7番で指揮台に立つという“三変化”だ。 「簡単ではありません。でも最初に手を振り回してしまうと次に協奏曲を弾けませんから。それにメンデルゾーンは弦楽オーケストラなので、弦楽器奏者としてのコミュニケーションができるのもいいですね」 山形交響楽団は2004年から常任指揮者を務める飯森範親の提唱で、古典派の作品を演奏する時にはナチュラル・ホルンやナチュラル・トランペット、木製フルートを用いている。 「大英断だったと思います。オーケストラ全体に与える影響は非常に大きいです。音色がずいぶん違いますし、弦もそ魅力があるのです。僕はベートーヴェンは大好きですから楽しみですね」 今回のコンサートでは山形名産さくらんぼのプレゼントや恒例のロビーでの物産展も。音楽的にも、山形での2回の定期を経て乗り込む大阪では、さらに完成度の高い演奏が期待されるはず。プレ・トークには山響音楽監督の飯森範親もかけつける。幾重にも、まさに“垂涎”のコンサートだ。7/17(日)15:00 よこすか芸術劇場問 横須賀芸術劇場046-823-9999 http://www.yokosuka-arts.or.jp横須賀芸術劇場 ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団ノット&東響が横須賀に初登場!文:オヤマダアツシジョナサン・ノット ©K.Miura 2014/15シーズンから東京交響楽団の音楽監督を務め、登場するコンサートのすべてが注目されるというジョナサン・ノット。透明感があってスマートな印象の響きを実現し、作品自体に魅力を語らせるようなアプローチは「この曲であればどうなるのだろう」という期待を抱かせてくれるのだ。 オペラハウスを模した「よこすか芸術劇場」へ初登場となるコンサートでは、このコンビだからこそ聴いてみたい作品のひとつ、ブルックナーの交響曲第8番が演奏される。作曲者が追究してたどり着いた響き、神への信仰心、周到な対位法,オルガニストとして培った感覚などが集約された大作だ。金子三勇士が共演するモーツァルトのピアノ協奏曲第20番も含め、この日は「短調の奥深さ」を堪能できるコンサートでもあるだろう。ブルックナーはサントリーホールでも演奏されるが、モーツァルトが加わるのはこの回のみ。サントリーホールに行けないという方も、足を延ばして横須賀へ。金子三勇士 ©Akira Muto

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