eぶらあぼ 2016.6月号
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ウィーン国立歌劇場2016年日本公演世界で最も贅沢なオペラを味わう一流の指揮者と豪華な歌手陣、洗練された演出と美術、そしてウィーン・フィルの母体である歌劇場管弦楽団の馥郁たる美しいサウンドが混然一体となって繰り広げられる、ウィーン国立歌劇場の舞台、それは他では求められない華麗なる魅力に溢れている。今回の公演でも多くのファンが真のオペラを聴く悦びと醍醐味とを味わうことができるだろう。文:田辺秀樹(音楽評論/ドイツ文学) 今秋、4年ぶりの来日公演を行うウィーン国立歌劇場。1869年の開設以来、150年近い歴史を誇る名門中の名門だ。歴代の総監督にはグスタフ・マーラー、リヒャルト・シュトラウス、カール・ベーム、ヘルベルト・フォン・カラヤンなど錚々たる顔ぶれが並ぶ。座付きオーケストラは言わずと知れたウィーン・フィルとあって、世界中で最も贅沢なオペラを見せ、聴かせてくれるのがこの歌劇場だ。 今回の来日公演では、モーツァルト、ワーグナー、R.シュトラウスというドイツ・オペラの3本柱の作曲家による3演目で真価を問う。《ナクソス島のアリアドネ》は今年がアニバーサリー! 初日の日付順に、まずはR.シュトラウスの《ナクソス島のアリアドネ》。 オペラ上演の舞台裏をすこぶる面白く描いた〈楽屋落ち歌劇〉の傑作だ。今年2016年は、このオペラの改訂版(ウィーン版)が当時のウィーン宮廷歌劇場(現在は国立歌劇場)で初演されて、ちょうど100周年にあたり、記念の年にふさわしい充実した舞台が期待できる。指揮はR.シュトラウス作品の指揮者として定評あるマレク・ヤノフスキ。プリマドンナ/アリアドネを歌うのは、前回の日本公演で《サロメ》のタイトル・ロールを歌って絶賛されたグン=ブリット・バークミン、テノール歌手/バッカスは、当代随一のヘルデン・テノールであるヨハン・ボータ、超絶技巧のコロラトゥーラを聴かせるツェルビネッタは、この役のいま一番旬の歌い手と思われるダニエラ・ファリー、それに〈ズボン役〉の作曲家はヴェッセリーナ・カサロヴァ。まさに最高の顔ぶれだ。演出も、いつもセンスの良さを感じさせるスヴェン=エリック・べヒトルフとあって、万全といえるだろう。ウィーン国立歌劇場ならではの豪華な《ワルキューレ》 ワーグナーでは《ワルキューレ》が選ばれた。ウィーン国立歌劇場が《ニーベルングの指環》の演目を日本に持ってくるのは、今回が初めて。そして、《指環》4部作のなかでもっとも聴きどころや見どころが多く、人気が高いのがこの《ワルキューレ》だ。熱烈ワグネリアンならずとも、ワーグナ-の楽劇の醍醐味をたっぷり味わえる。 指揮はコアなワグネリアンの厚い信頼を得ている実力派アダム・フィッシャー。彼は今年1月、ウィーン国立歌劇場で《指環》全作を指揮して絶賛された。演出は《アリアドネ》と同じべヒトルフ。クリストファー・ヴェントリス(ジークムント)、ペトラ・ラング(ジークリンデ)、ニーナ・シュテンメ(ブリュンヒルphoto:Wiener Staatsoper/Michael Poehn

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