eぶらあぼ 2016.6月号
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180CDCDSACDCDフランク&R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 他/諏訪内晶子ベルトミュー:猫 他/ザ・フルート・カルテット信時 潔:交聲曲「海道東征」/湯浅卓雄&東京芸大シンフォニーオーケストラピレネーを越えて/上野由恵&新井伴典R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ武満 徹:悲歌フランク:ヴァイオリン・ソナタ諏訪内晶子(ヴァイオリン)エンリコ・パーチェ(ピアノ)ベルトミュー:猫/ボザ:4本のフルートのための3つの小品/サン=サーンス:交響曲第3番より「アダージョ」/ドヴォルザーク:交響曲第8番第3楽章/グリーグ:組曲「ホルベアの時代」より前奏曲/ワーグナー:《ローエングリン》第3幕への前奏曲 他ザ・フルート・カルテット[相澤政宏、大村友樹、神田寛明、柴田 勲]信時 潔:交聲曲「海道東征」、我国と音楽との関係を思ひて、絃楽四部合奏-弦楽オーケストラ版-(湯浅卓雄編)湯浅卓雄(指揮)、東京芸大シンフォニーオーケストラ、菅 英三子(ソプラノ)、寺谷千枝子(アルト)、永田峰雄(テノール)、甲斐栄次郎(バリトン)他イベール:寓話/アルベニス:タンゴ、ティエルラの門/モンポウ:「内なる印象」より/ファリャ:「三角帽子」より/ラヴェル:ハバネラ形式の小品/グラナドス:ムーア風舞曲、アラブの歌、アンダルーサ/カザルス:鳥の歌 他上野由恵(フルート)新井伴典(ギター)ユニバーサル ミュージックUCCD-1427 ¥3000+税マイスター・ミュージックMM-3072 ¥3000+税収録:2015.11/28、東京芸術大学奏楽堂(ライヴ)ナクソス・ジャパンNYCC-27300 ¥3000+税オクタヴィア・レコードOVCC-00123 ¥3000+税歌い出しの艶やかな音色を一聴するだけで、たちまち虜になってしまうだろう。1990年にチャイコフスキー国際コンクールのヴァイオリン部門を制して以来、国際的な活躍を続ける諏訪内。チャリティや教育にも主眼を置いた国際音楽祭NIPPONを立ち上げるなど、活動の幅を広げている。今回の録音でのパーチェとの共演も、同音楽祭がきっかけだと言う。没後20年の武満の佳品を核に、2つの近代の名ソナタを有機的に結び付けた快演。特に、フランクの冒頭楽章での、緩やかなテンポ取りと静謐さが際立つ多層的な音楽創りなど、初録音から20年という時間が育んだ、音楽的な醸成を強く印象付ける。(笹田和人)1997年に4つの在京オーケストラに所属するフルート奏者が結成したカルテット。当盤は2001年録音のリマスターで、HDDからダイレクト・カッティングした高音質を楽しめる。収録曲は、フルートの魅力を存分に味わえるオリジナル作品(ベルトミュー&ボザ)。そして、彼らが普段から慣れ親しんでいるサン=サーンスやワーグナーの管弦楽曲の編曲だ。ブックレットにはパート割をすべて記載。だが、それが簡単に判別できないほど、4人の技巧と音楽性は高次元で親和している。中でも、神田寛明がファーストを担当するドヴォルザークとグリーグの切れ味が素晴らしい。 (渡辺謙太郎)戦前に作曲された最大規模、かつ東京音楽学校(現・芸大)の看板曲として頻繁に上演された「海道東征」が、同大の演奏陣によってCD化された。「海ゆかば」の作曲家としても知られる信時潔は、西洋のクラシカルな語法を基礎にしつつ、日本人の耳に心地よく響く日本語のうたを作り上げた。神武天皇の即位2600年を祝った本曲に接した同時代人は、自国が経済・軍事・政治面だけでなく、文化的にも欧米列強に伍する実力を得たと感じたのではないだろうか。戦後はタブー視されたが、没後50年を経て登場した本盤によって空白が埋まる。近代音楽にとって戦争とは何だったのかを考えずにはおれない問題作だ。 (江藤光紀)フルートの若き名手・上野由恵の最新ソロ・アルバム。中堅実力派ギタリスト・新井伴典とのデュオで、スペインへの想いをこめた作品が収録されている。大半が新井による編曲ものだが、これがセンス抜群。まるでオリジナル曲のようにナチュラルだ。演奏自体は、“爽やかな熱さ”ともいうべきトーンが支配。「三角帽子」をはじめ、随所に登場する民俗的な舞曲も、情熱の押し売りにならず、心地良く弾む。同時に、艶やかで美しい上野のフルートと、哀感漂う新井のギターが相乗効果を発揮して、味わい深さも十分。両楽器の相性の良さを再認識させられる好ディスクだ。 (柴田克彦)

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