eぶらあぼ 2016.6月号
165/211

178CDCDCDCDシューベルト:ピアノ・ソナタD.784&D.845/高橋アキベートーヴェン:「ラズモフスキー」全3曲/クァルテット・エクセルシオ目覚めよと呼ぶ声あり~J.S.バッハ作品集 5~/福田進一J.S.バッハ:6つのトリオ・ソナタ集/椎名雄一郎シューベルト:ピアノ・ソナタ第14番D.784・第16番D.845高橋アキ(ピアノ)ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第7番~第9番「ラズモフスキー第1番~第3番」クァルテット・エクセルシオJ.S.バッハ(福田進一編):プレリュード ニ短調BWV999、フーガ イ短調BWV1000、パルティータ ハ短調BWV997、ソナタ ハ長調BWV1005、コラール・プレリュード「目覚めよと呼ぶ声あり」福田進一(ギター)J.S.バッハ:トリオ・ソナタ第1番BWV525~第6番BWV530椎名雄一郎(オルガン)カメラータ・トウキョウCMCD-28334 ¥2800+税ナミ・レコードWWCC-7807~8 ¥3500+税マイスター・ミュージックMM-3075 ¥3000+税コジマ録音ALCD-1157 ¥2800+税現代音楽の名手、高橋アキが2007年から取り組んでいるシューベルトのピアノ・ソナタ集の第5弾。中期のソナタ群から、イ短調の2作品を収録。「D.784」の1楽章は、脳内に響く音をそのまま再現するかのような深い音が、強い印象を残す。柔らかな音と重厚な音を巧みに使い分けながら、救いを求めてさまよう魂の物語を描く。「D.845」ではベーゼンドルファー・インペリアルのまろやかで密度の濃い音を存分に歌わせる。自問自答を繰り返すように、静かに内向的な世界に入り込んでゆく。心の奥底をのぞき込むような2つのソナタを続けて聴くことになるが、聴き終えるとシューベルトの心に一歩近づいたような気持ちになる。(高坂はる香)第12番・第16番に次ぐ、クァルテット・エクセルシオのベートーヴェン第2弾。今春復帰した第1ヴァイオリンの西野ゆかの休養前に収録されている。演奏は実に素晴らしい。全体に正攻法のアプローチの中、4楽器が絶妙なバランスで絡み合いながら、自然な呼吸感と流動性をもった、変幻自在の音楽が展開。第1番は特に魅力的で、第3楽章の哀しい美しさが耳を奪う。内省的な第2番も活力十分だし、第3番も、序奏の透徹した響きや終楽章のフーガが鮮やかな、堂々たる名奏。日本屈指の四重奏団の実力を存分に示した本作は、室内楽ファン以外もぜひ聴いて欲しい。(柴田克彦)福田進一が着々とマイスター・ミュージックに録音を進めているJ.S.バッハ作品集。この第5集は「リュート作品に、無伴奏ヴァイオリン・ソナタの第3番(BWV1005)を加えたプログラム」(ライナーノートより演奏者自身の言)。まずはアレンジが秀逸だ。曲によっては移調を施したり調弦を工夫したりしながら、バッハの原曲のもつポリフォニックで豊富な響きによる多層的な味わいを殺すことなく、かつ新鮮な魅力を付加することに成功しているのだが、むろんそれは福田の圧倒的な演奏力があってこそ。タイトル曲の「目覚めよと〜」での3声部のコントロールの自然なバランスと巧みさには感嘆。(藤原 聡)椎名が「大迫力のサウンドを…」などというタイプのオルガニストでないことは、誰もが知るところだろう。バッハ自身も弾いた銘器ジルバーマンをプロトタイプに、現代の名工ユルゲン・アーレントが製作したオルガンを用いた録音の第4弾で取り上げたのは、6つのトリオ・ソナタ。本来、2つの上声と通奏低音で奏でられる楽曲を、左右の手と足鍵盤に割り当てた、極めて室内楽的な発想の作品は、彼の持ち味を存分に活かすもののひとつかも。その妙技は、各声部が対位法上の拮抗を際立たせつつ、魅力的に薫り立つ。レジストレーションも実に自然で、奇を衒うことは一切ない。(寺西 肇)

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 165

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です