eぶらあぼ 2016.6月号
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176CDCDCDCD二つの魂 ―広田智之 vs. TOMO Hirota―/広田智之ドント:24のエチュードとカプリス/島根 恵ショパン:ピアノ・ソナタ第3番 他/シャルル・リシャール=アムランクライスレリアーナ~シューマン名作選/多 紗於里シューベルト:「冬の旅」より、「美しき水車小屋の娘」より、ます、野ばら、魔王/シューマン:「詩人の恋」より/セイリング、ヒューマン・ネイチャー、明日に架ける橋、人間の証明、イマジン 他広田智之(オーボエ)三輪 郁(ピアノ)大久保治信(キーボード/編曲) 他ドント:24のエチュードとカプリスop.35島根 恵(ヴァイオリン)ショパン:ピアノ・ソナタ第3番、幻想ポロネーズ、ノクターン第17番・第18番シャルル・リシャール=アムラン(ピアノ)シューマン:フモレスケ、クライスレリアーナ、アベッグ変奏曲多 紗於里(ピアノ)オクタヴィア・レコードOVCC-00122(2枚組) ¥3700+税コジマ録音ALCD-9159 ¥2800+税東京エムプラスPAN-29127 ¥2857+税ナミ・レコードWWCC-7809 ¥2500+税日本を代表する人気オーボエ奏者がプロ生活30周年を記念してリリースした2枚組豪華盤だが、それぞれ趣の異なる2つの“歌”の世界に魂の居場所をみつけた意欲作。ドイツ歌曲の雄・シューベルト&シューマン作品を王道スタイルで紡いでいくDISC-1に対し、DISC-2では青春時代を彩ったロック・バラードの名曲たちを仲間のミュージシャンと堂々カヴァー。癖のある男性ヴォーカルものばかりとあって、サウンドはかなり骨太でずっしり系だが音色は意外と爽やか。特にマイケル・ジャクソンの人間讃歌「ヒューマン・ネイチャー」で花開く開放感は見事。締めのプログレ風「魔王」も魅せる。(東端哲也)カイザーなど、ヴァイオリン学習者にお馴染みながら、音楽的には軽視されがちな教則用の楽曲を次々に録音し、快演によって新たな魅力を開拓している島根。今回は、19世紀ドイツのヴァイオリニストで名教師のヤコブ・ドントの練習曲を取り上げた。とりわけ地道な訓練に徹した曲ながら、島根は「どの技巧の上達を意図しているのか」を明示した上で、美しい音色と卓越した音楽センスで魔法をかけて、24曲がひと連なりとなった、魅力的な芸術作品へと変貌させてしまう。「どう美しく響かせるか」に重きを置いた、奏者自身によるライナー中の一言コメントも、的確かつ実践的だ。(寺西 肇)2015年ショパン国際ピアノコンクールで第2位に入賞したシャルル・リシャール=アムランのデビューアルバム。録音はコンクール前の5月に行われたもので、ショパンの後期作品を集めた意欲作。のちにソナタ賞を受賞することになるソナタ第3番は、落ち着きのある優しい歌いまわしで、緻密に構築されたソナタの世界を創り上げている。一音ずつかみしめながら丁寧に歌い上げる「幻想ポロネーズ」、余計なものをそぎ落とし、やわらかな音で奏でてゆくノクターンと、どこまでも自然な表現力が際立つ。20代半ばにして晩年のショパンの精神に寄り添うような、包容力のある音楽が魅力のピアニストだ。(高坂はる香)欧米で長年研鑽を積んだ実力派ピアニストによる約6年ぶりの新譜。今年が没後160年にあたるシューマンの作品集で、彼の初作品「アベッグ変奏曲」など、20代の頃に残した3つの傑作が収められている。彼女の演奏は前作のラヴェル作品集と同様、音色とダイナミックレンジのバランスが美しく、全体に端正な仕上がりを印象づける。また、「フモレスケ」の第4曲「親密に」や、「クライスレリアーナ」の第2曲「心をこめて、速すぎずに」といった、静謐でメランコリック楽曲の彫琢も実にキメ細やか。シューマンの知的かつ内省的な音楽性をみごとに捉えている。(渡辺謙太郎)

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