eぶらあぼ 2016.5月号
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58山田和樹(指揮) バーミンガム市交響楽団共演:山根一仁(ヴァイオリン)6/29(水)19:00 横浜みなとみらいホール問 横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000 http://www.yaf.or.jp/mmh山根一仁(ヴァイオリン)新鮮だと思えるチャイコフスキーを弾きたい取材・文:山田真一Interview 6年前、中学生としては26年ぶりに日本音楽コンクールを制覇したヴァイオリンの山根一仁が、この6月にバーミンガム市交響楽団と共演する。山根にとっては、初めてになる本格的な海外オーケストラとの共演。指揮は今、日本の若手指揮者で最も注目を集める山田和樹。これは話題のコンサートとなるだろう。 山根は現在20歳とまだ若いが、すでにN響、東響、新日本フィル、日本フィルなど国内主要オーケストラと共演するなど多くの実績があり、日本各地で彼のヴァイオリンを耳にした音楽ファンも少なくないだろう。そんな山根だが、昨年の秋、ミュンヘンへ留学。ドイツを代表する音楽家で多くの優れたヴァイオリニストを教えてきたクリストフ・ポッペンに師事している。 「ヨーロッパはクラシック誕生の地。そこで暮らすことは、とても刺激的です。また、喧噪から離れて、自分とヴァイオリンだけの時間を持てることは、音楽的にも非常に大きいです」 一人で生活し、音楽とだけ接する機会を増やした成果から、一回り成長した山根を聴く機会になる。 山根のレパートリーは広く、古典から20世紀の作品までこなし、40分を超える大作でも難なく演奏する。今回取り上げるチャイコフスキーの協奏曲の演奏は、演奏回数がすでに二桁に及ぶ得意曲だが、それでも準備は簡単でないという。 「チャイコフスキーはヴァイオリニストなら誰でも知っている曲。それだけに本当の曲の姿が見えづらくなっている。僕は他人の演奏を聴くよりも、スコアそのものから勉強して曲を理解しています。この曲は、とても多くの可能性を秘めていて、しかもここが難しいと一言で言えないほどの難曲。ですから、僕がやっていることを新鮮だと思ってくれると嬉しいし、自分のベストの演奏をしたいですね」 指揮の山田和樹とは、4年前オーケストラ・アンサンブル金沢の札幌公演で初共演し、山田が正指揮者を務める日本フィルと共に、今回と同じチャイコフスキーを演奏している。 「山田さんの指揮するオーケストラに加わった経験もあり、その指揮ぶりと音楽づくりをみることもできました。僕のやろうとしていることを認めてくれ、とても自由に演奏させてもらえる。尊敬しています」 そんな2人の相性を知る機会にもなるだろう。演奏も、当然「以前のチャイコフスキー」と同じにはならないはずだ。 山根は、横浜市出身で、横浜文化賞文化芸術奨励賞を最年少で受賞し、この3月にも出光音楽賞を受賞したばかり。そんな“ハマっ子”の弾きぶりに注目だ。5/21(土)14:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677http://www.proarte.co.jp津留崎直紀(チェロ) & 野平一郎(ピアノ) 共鳴しあうベートーヴェンと現代文:笹田和人津留崎直紀 ©Akira Muto 30年以上にわたって在籍した名門リヨン国立歌劇場管弦楽団を自ら辞し、ソロ活動と作曲に専念するチェロの津留崎直紀。その盟友であり、やはり作曲の最前線に身を置きながら、ピアノの名手としても知られる野平一郎。自作の初演を含めて、室内楽のステージで名演を重ねてきた2人は、5年前にチェロ・ソナタ全5曲に取り組んで快演を聴かせるなど、ベートーヴェンの作品へ格別の思い入れを示している。 今回のステージでは、そんな2人の名手が、「ベートーヴェン」という“窓”から、21世紀を展望。まずは、「《魔笛》の主題による7つの変奏曲」とチェロ・ソナタ第5番、同第4番と楽聖の佳品を大枠に。ここへ津留崎の自作「独奏チェロの為のリチェルカーレ」や、フランスのブルノ・マントヴァーニによる「クレーの為の5つの小品」、西村朗の「リチュアル」と、現代の多彩な響きを挟み込む。時空の跳躍を何度も経験するうち、2つの時代と空間が不思議な共鳴を起こす瞬間を、聴衆は目の当たりにすることとなる。野平一郎©K.Miura

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