eぶらあぼ 2016.5月号
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45下野竜也 ©Naoya Yamaguchi Studio Diva下野竜也(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団戦後を築いた日本の大家の名作を聴く文:江藤光紀イジー・シュトルンツ(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団独創性と親しみやすさが調和した名曲を集めて文:飯尾洋一#559 定期演奏会 トリフォニー・シリーズ5/27(金)19:15、5/28(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp6/9(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp 日本の作曲家はどんなオーケストラ曲を書いてきたのだろう? 三善晃、矢代秋雄、黛敏郎…。戦後を築いた大家たちの代表作を並べた新日本フィル5月定期は、そういう疑問にストレートに答 イジー・シュトルンツを指揮台に迎える東京シティ・フィル6月の定期演奏会では、スメタナの歌劇《売られた花嫁》序曲、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、ドヴォルザークの交響曲第7番の3曲が演奏される。 添えられたキャッチは「グローバル化を模索した3人の作曲家」。3人の作曲家はいずれも自国の民謡や音楽語法を創作力の源泉としながらも、西欧の古典音楽のスタイルにのっとった交響曲やオペラを書いて、独自の道を切り開いた。形態は古典的、でも素材は民族的。後世から見ればローカリズムの部分がクローズアップされがちだが、3人の作曲家が目を向けていたのは当時の基準でグローバルな存在とみなされたブラームスらの音楽だった、という視点での選曲なのだろう。結果として、オリジナリティと親しみやすさが完全に調和した名曲が並ぶのがおもしろいところ。えてくれる。日本の現代音楽に足を踏み入れたい人は、まずこれを聴くべし。 実はこの3人には共通点がある。いずれも戦後混乱期にパリで学んでいるが、矢代や三善が洒脱な和声、アカデミックな作風を持っているのに対し、黛はジャズや電子音楽といった新しい潮流を持ち帰った。その後、彼はそれらを日本の伝統美に接続する。 この日はまず、管弦楽の各パートが緊密に対話する「管弦楽のための協奏曲」で始まる。オーケストラと独奏の厳しい対峙を追求した、三善のいわゆる「協奏曲の時代」を代表する作品で、短いながら激しいエネルギーを放出する。 「ピアノ協奏曲」は、寡作だが質の高い作品を残した矢代の創作の中でも、 チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲でソロを務めるのは三浦文彰。2009年に世界最難関ともいわれるハノーファー国際コンクールで、史上最年少の16歳で優勝し、以来着実に活動の幅を広げる気鋭の若手奏者である。NHK大河ドラマ『真田丸』テーマ曲でソロを演ひときわ人気の高い曲。不規則なリズムや独特なハーモニーに彩られており、両端楽章のテーマの執拗な反復はハマる。ソロは現代ものを得意とするトーマス・ヘル。日本人奏者とはひと味違う解釈が聴かれるかもしれない。 後半は黛の代表作「涅槃交響曲」。鐘の音を電気的に解析し管弦楽で再現するとか、お経を狭い音程で重ねるなど、伝統的な素材を新しい手法で大胆に扱った本作は、同時代人に衝撃を与えた。戦後音楽史を語る上ではずせない名曲だ。 指揮は下野竜也。いま、邦人作品といえばこの人。現代音楽をおもしろく聴かせることにかけて右にでるものはいない。奏したことでも話題を呼んでいる。 指揮のイジー・シュトルンツは、1969年、チェコ出身で、プラハ国立歌劇場他で豊富なオペラの経験を誇るほか、プラハ・フィル他でコンサート指揮者としても活躍する。「お国もの」ならではの好演を期待できそうだ。三浦文彰 ©Yuji Horiイジー・シュトルンツ

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