eぶらあぼ 2016.5月号
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168SACDCDCDCDラ・カンパネラ~革命のピアニズム/金子三勇士おとぎ話/小沢麻由子オホーツク幻想/冨田 勲RAGGIO-光-/富田泰子モーツァルト:きらきら星変奏曲/ショパン:エチュード「革命」、幻想即興曲/ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番「月光」/ドビュッシー:月の光/リスト:ハンガリー狂詩曲第2番、愛の夢第3番、ラ・カンパネラ金子三勇士(ピアノ)シューマン:謝肉祭、子供の情景、子供の領分/ショパン:子守歌/シューマン=リスト:献呈/ドビュッシー:夢小沢麻由子(ピアノ)冨田 勲:オホーツク幻想、こどものための交響詩「銀河鉄道の夜」/ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ、マ・メール・ロワ冨田 勲(シンセサイザー)武満徹:小さな空、めぐり逢い、小さな部屋で、翼/サルティ:いとしい人から遠く離れて/トスティ:愛らしい口元、セレナータ/プーランク:愛の小路/ピアソラ:チキリン・デ・バチン、オブリヴィオン 他富田泰子(ソプラノ)植木昭雄(チェロ)山田武彦(ピアノ/鍵盤ハーモニカ)ユニバーサルミュージックUCCY-1062 ¥3000+税ナミ・レコードWWCC-7803 ¥2500+税日本コロムビアCOGQ-89 ¥3000+税コジマ録音ALCD-9157 ¥2800+税日本とハンガリーの血を引く金子による、リストを中心に据えた録音。王道の名曲を集めていながら、フレッシュな表現が詰まった1枚だ。奏者の人柄を表すような、品のある優しい音によるモーツァルトの「きらきら星変奏曲」に始まる。ベートーヴェン「月光」第2楽章では、繊細な表情の揺れが印象的。得意のリストからは、卓越したリズム感と遊び心が効いたハンガリー狂詩曲第2番で、鮮烈な音楽を聴かせる。ライナーノーツに「21世紀のピアニストとして作曲家の想いに向き合いたい」とあるが、本人のその宣言通り、丁寧な優しい筆致で、作品の細やかな表情を真摯に描き出している。(高坂はる香)シューマン「謝肉祭」第1曲冒頭のコードを聴くだけで、小沢麻由子というピアニストの非凡さが感じ取れよう。「」の指示だからと決して力任せに処理せず、極めて繊細な意識をもって対峙し、しかも、続いて同じ音型があっても、表現には別の彩りを与える。ドビュッシー「子供の領分」第1曲の16分音符の連なりがもたらす、音楽的な揺らぎの心地よさ。あるいは、ショパン「子守歌」に溢れる、温かな愛情。「おとぎ話」のイメージで選ばれた、様々な成立背景を持つ楽曲が、彼女自身の変幻自在な語法と美しい音色によって結び付けられ、饒舌に、しかし優しく語り掛けてくる。 (笹田和人)「宮沢賢治のファンタジー」をテーマに、1979年に発表されたラヴェルを題材とするアルバムを軸として、幅広い時代の作品から再構成。最初期のMOOGを使った楽曲を含め、今の私たちの耳にも、鮮烈な感動を呼ぶ。シンセサイザーの技術は飛躍的に上がり、かつて冨田が一部屋分の機材と膨大な時間を費やしたプログラミングによって手に入れた音の数々は、今や机上のパソコン一つで瞬時に作ることが可能に。しかし、楽器は単に道具であり、どう音楽を奏でるかが重要なのだ。冨田サウンドがもたらした衝撃を、現在の電子音楽が未だ凌駕するに至らないことは、それを証明している。(寺西 肇)まず選曲が素敵だ。武蔵野音大、同大学院からローマに留学して研鑽を積んだソプラノ富田泰子のデビュー盤は、イタリア古典歌曲からピアソラ、武満徹まで、さまざまな佳曲による詞華集。心に直接歌いかけてくるような旋律が並ぶ。しかし声がそれにもたれかかることはない。実に清潔なアプローチで、歌の形をきちんと示している。ピアノの山田武彦、14曲中9曲で参加しているチェロの植木昭雄の好サポートの力も大きい。特に最初と最後に4曲選ばれた武満では、おなじみの旋律に豊かな発想が加わり、ここでしか聴けない新しい武満のソングが生まれている。(宮本 明)

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