eぶらあぼ 2016.4月号
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74ノエ・乾いぬい(ヴァイオリン)伝統に培われた深みのある音色と造形美文:渡辺謙太郎ベルリンフィル12人のチェリストたち情熱的なピアソラとエレガントなパリの音楽を文:東端哲也6/11(土)19:00 東京文化会館(小)問 藍インターナショナル03-6228-3732 http://www.ai-international.co.jp7/10(日)14:00 サントリーホール問 ノア・チケット03-3417-7000 http://www.noah.jpn.com 3/19(土)発売 フランコ・ベルギー派の直系の奏者に師事したヴァイオリニスト、ノエ・乾が、2010年以来6年ぶりに東京でリサイタルを行う。日本人の父とギリシャ人の母の下、1985年生まれの彼は、地元ベルギーや、フランス、ドイツで研鑽。コンクールでも、ナポリ・クルチ国際や、ニューヨーク・ヤング・アーティスト国際などで優勝を重ね、世界各地で活動を続けている。 そんな彼が今回の公演のプログラムの中心に据えたのは、昨年発表した最新盤で、権威あるICMA国際クラシック音楽賞にもノミネートされている『IDENTITY』(独・Ars Produktion)の収録曲。シュルホフ「ソナタ第2番」、ヤナーチェク「ソナタ」、シマノフスキ「夜想曲とタランテラ」といった東欧の傑作だ。いずれも独特の憂いと綿密な構成を特徴とするが、乾は持ち前の美音と知的な解釈で、流麗な演奏を 世界最高峰のオーケストラ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のチェロ・セクションのメンバーによって構成された「ベルリンフィル12人のチェリストたち」。このゴージャスなアンサンブルは1972年にザルツブルクで誕生したのだが、意外にもフル・プログラムによる初めての公演は翌年の10月に東京の早稲田大学大隈記念講堂で行われ、この年に彼らのために作曲された最初のオリジナル作品(ボリス・ブラッヒャー作)も同時に初演されたという。その後も、多くの著名な作曲家たちがこの「12人~」のために作品を書き、彼らは世界各地で演奏を行い、レコーディングを重ねてきた。 幾多の世代交代を経験し、結成から44年を経てなお、音楽ファンに愛され続ける彼らが今年7月、14回目となる来日公演を開催する。今回のプログラム・テーマは「パリ — ブエノスアイレス」。メインとなるのはニュー・アルバムにも収録予定のピアソラ作曲のタンゴ曲の数々で、第1ソロを務めるルードウィッ聴かせてくれることだろう。 そして今回は、乾が最も敬愛する作曲家の一人、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第3番が演奏されるのも聴きどころ。この作品はピアノに高度な技巧が求められるため、共演のピアニスト、マリオ・へリングにも注目が集まる。89年ドイツ生まれで、ドイツ人の父と日本人の母を持つ彼は、これまでにコンクールで16回優勝。巨匠パウル・バドゥラ=スコダも絶賛する逸材ヒ・クワントの言葉によると「楽しい『レヴィラード』から悲しい『ソレダード』、情熱的な『愛のデュオ』、名人芸の『エスクアロ』」など、いずれも日本で初めて演奏するものばかりだとか。なお前半はピアソラの音楽遍歴にとって重要な街だ。ベルギーとドイツの正統派が織りなす深みのある音色と、美しい造形美を心ゆくまで堪能しよう。であるパリに着目し、同時代の作曲家たちに影響を与えたフォーレからシャンソンの名曲「パリの空の下」などを披露し、“花の都”の音楽風景を再現する。オープニングを飾るお馴染みジャン・フランセ「朝のセレナーデ」も楽しみだ。©Yannis GutmannPhoto:Stephan Röhl

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