eぶらあぼ 2016.3月号
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52ユンディ・リ(ピアノ)貴公子がショパン作品に回帰文:伊熊よし子広上淳一(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団「日本フィル・シリーズ」10年ぶりの“新作”文:江藤光紀6/7(火)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp 2/21(日)発売※全国公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。第678回 東京定期演奏会3/4(金)19:00、3/5(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jpユンディ・リがショパン国際ピアノ・コンクールで優勝の栄冠に輝いてから、はや15年が経過した。この間、レパートリーの根幹には常にショパンがあり、そこからさまざまな作品へと翼を広げていった。そして2015年10月、彼はショパン国際ピアノ・コンクールの最年少審査員として、審査員席に並んだ。 「コンクールの審査員として若きピアニストの演奏を数多く聴くなかで、また自分のなかでショパンに対する愛情に目覚め、作品の新たな面も発見し、ショパンの作品により深く関わりたいと思うようになりました」コンクール後、彼はこう述べている。優勝から15年を経て、ユンディ・リは再びショパンの作品へと回帰してきたのである。 「ショパンの音楽は流れるような旋律、舞曲に根差したリズム、色彩感あふれるフレーズ、絶妙の和音やルバートが用いられ、ピアノを知り尽くしている人が とうとう来たぞ、「日本フィル・シリーズ」最新作! のっけから興奮気味に書いてしまった。順を追って説明しよう。「日本フィル・シリーズ」とは、同団の創立者・渡邉曉雄が1958年にスタートさせた管弦楽の邦人作品委嘱初演企画で、戦後間もない時期の作曲家たちを奮い立たせ、数多くの名曲が生まれた。2006年に第40作目が発表されたのを最後に沈黙が続き、代わりに数年前からシリーズの名曲を再び世に問う蘇演企画が行われていた。そこには時代の熱気をダイレクトに伝える音のドキュメントがあった。 しかし再演が重なるにつれ頭をもたげるのは「新しいシリーズ作は?」という思いである。そんな渇望に答えてくれたのが、3月の定期というわけなのだ。白羽の矢がたったのは芸大名誉教授・尾高惇忠。指揮者・尚忠を父に、忠明を弟に持つ音楽一族で、数年前には尾高賞も受賞している。奇をてらわない堅実な書法が特徴で、難解な現代音楽は苦手という人も十分に楽しめる作風だ。書いたという作品ばかり。演奏はそう難しいとは思われないかもしれませんが、実はとても難しい音楽です。ピアニストのすべてがあらわになってしまうから。いずれも美しい流麗な音楽に見えますが、細部をしっかり勉強して全体像をつかまないと、聴き手の感動する音楽にはなりません」ユンディ・リは「24の前奏曲」を15年6月、バラード全曲を同年12月に録音。これらの作品を今回の日本公演で披 この新作「ピアノ協奏曲」のソロを務めるのは野田清隆。現代ものにも目が利き、尾高のピアノ・ソナタも初演していて作曲家からの信頼も厚い。指揮は尾高と師弟関係にある広上淳一。曲の聴かせどころをつかむのが巧く、熱い躍動感を引き出してくれるだろう。露する。彼のショパンは当初からの美音を縦軸に、深い表現力を横軸に、いま成熟のときを迎える。カップリングはシューベルト「未完成」とベートーヴェン「運命」。西洋クラシック音楽の頂点に聳える2大交響楽をあえてぶつけてきたところに、「新しい時代を創る」という意気込みもうかがえる。なんとも頼もしい「日本フィル・シリーズ」の再出発だ。野田清隆 ©Naoya Yamaguchi広上淳一

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