eぶらあぼ 2016.3月号
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260Catch Up『Ballet Princess~バレエの世界のお姫様たち~』プリンセスたちの華麗なる饗宴文:守山実花『現代舞踊公演 柳下規夫/山本 裕/能美健志』三者三様の世界観に浸る文:高橋森彦3/31(木)18:30 新宿文化センター問 サンライズプロモーション東京  0570-00-3337 http://www.chacott-jp.com3/17(木)、3/18(金)各日19:00 東京芸術劇場 プレイハウス問 現代舞踊協会事務局03-5457-7731 http://www.gendaibuyou.or.jp 「一度は観てみたいのだけど…」「子どもを連れていきたいけど、あきちゃったらどうしよう」 バレエへの漠然とした憧れはあっても、実際に公演に足を運ぶとなると躊躇してしまう、そんな声をしばしば耳にする。 その声が届いたのだろうか、本公演は、バレエ鑑賞普及啓発公演として、多くの人をバレエの世界に招き入れるもの。主催・企画制作のチャコット株式会 「男性振付家3名が送る、自由で真摯な現代のダンスパフォーマンス!!」という触れこみだ。 柳下規夫は独自の美意識に富んだ作風で知られる重鎮。『楢山節考』(深川七郎原作、1979年)により数々の賞を受けるなど、若き日から存在感を示し息長く踊り続ける。『冷たい満月 ニジンスキーの影に翔る』には柳下がオマージュを捧げる舞踊家ニジンスキーの名が冠されている。不世出の天才と称されるも神経を病み、表舞台から消えたカリスマの生と死が、いかに反映されるのか——。ベテラン・バレリーナの川口ゆり子と柳下の共演も見逃せない。 山本裕は新進気鋭のダンサー・振付家として評価を高め、国内外で活動の幅を広げている。出世作『モザイク紳士』は自作自演の独舞で、不思議な存社は、ウエアやシューズをはじめ、メイク用品などバレエ・ダンス関連商品の販売にとどまらず、レッスンの提供まで、バレエ・ダンス芸術と最も近いところにある。そのチャコットならではの豊かなアイディアで、バレエ鑑賞の楽しみを広く様々な世代の人たちに知ってもらおうとする、新たな試みだ。 演出・振付は、作品世界を丁寧に描きあげることに定評がある伊藤範子。『眠れる森の美女』、『シンデレラ』、『白雪姫』、在感と意表を付く動きが相まって新鮮な感性が光っていた。『The color of owers』は山本と若手ダンサー15名によって踊られる。若く才気あふれる創り手が紡ぎ出す、みずみずしい踊りに期待したい。 能美健志は1990年代から第一線で活躍する。緻密かつ骨太な構成力を持ち味とし、小品から長編作品まで洗練されたタッチで仕上げる才人だ。『春の祭典』ではストラヴィンスキーの同名バレエでもおなじみの三人のプリンセスの物語で構成され、「難しいでのでは?」などという心配は一切無用。三つの異なる作品をハイライト的に観られるだけでなく、それらがどのように一つのストーリーとして結ばれていくのかを楽しめる。 新国立劇場バレエ団プリンシパルとして活躍する米沢唯、長田佳世をはじめ、橋本直樹、浅田良和、高岸直樹ら実力派の男性ダンサー、さらに次世代を担うフレッシュなダンサー、木村優里、池田理沙子らが出演。観る者を非日常へと誘いこんでくれる。 季節は春、新たな世界の扉を開けるのにピッタリだ。曲にチャレンジし、一筋縄にはいかない大曲と四つに組む。新境地に挑むであろうことは想像に難くないだけに注目される。 世代も個性も異なる実力者が放つ三者三様のダンスの世界を楽しみたい。伊藤範子木村優里米沢 唯池田理沙子能美健志山本 裕柳下規夫

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