eぶらあぼ 2016.3月号
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180CDCDCDCDガルッピ:6つのトリオ・ソナタ/アンサンブル・リクレアツィオン・ダルカディアサウンド オブ ザ スカイ/植草ひろみ&早川りさこソロ~左手のためのピアノ編曲集/ニコラス・マッカーシーJ.S.バッハ=ラインベルガー:2台のピアノのためのゴルトベルク変奏曲/ピアノデュオ ドゥオールバルダッサーレ・ガルッピ:トリオ・ソナタ第1番~第6番アンサンブル・リクレアツィオン・ダルカディア[松永綾子、山口幸恵(以上バロック・ヴァイオリン)、懸田貴嗣(バロック・チェロ)、渡邊孝(チェンバロ)]ショパン:ノクターン第2番/ピアソラ:カフェ1930/マスネ:タイスの瞑想曲/ヒナステラ:忘れる木のうた/ガリアーノ:セーヌのブルース/マイヤース:『ディア・ハンター』より「カヴァティーナ」/ギャニオン:明日 他植草ひろみ(チェロ)早川りさこ(ハープ)エイナウディ:I Giorni/プッチーニ:私のお父さん/ショパン:練習曲第12番「大洋」/リスト:愛の夢第3番/スクリャービン:練習曲第12番「悲愴」、2つの左手のための小品第2番「夜想曲」/ブルーメンフェルト:左手のための練習曲op.36 他ニコラス・マッカーシー(ピアノ)J.S.バッハ=ラインベルガー:2台のピアノのためのゴルトベルク変奏曲ピアノデュオ ドゥオール[藤井隆史&白水芳枝]コジマ録音ALCD-1155 ¥2800+税HD-ImpressionHDI-80004 ¥2315+税ワーナーミュージックWPCS-13330 ¥2600+税Studio N.A.TNAT-15291 ¥2700+税まるで朝の光に照らされてゆくような、ソナタ第1番の魅力的な歌い出しを聴くだけでも、このアルバムに対する期待は高まろう。国際的に活躍する精鋭で構成された古楽集団が光を当てたのは、18世紀ヴェネツィアの巨匠ガルッピが遺した「小箱に収められた宝石」(チェンバロの渡邊孝)のようなトリオ・ソナタ集。シンプルながらも、丁々発止のやり取りや情熱的で濃厚な旋律などの創意に溢れて、聴く者を飽きさせない。スウェーデンに残された筆写譜を基に、精緻な彫琢や様式感に準じた装飾を施した、しなやかな4人の秀演。“隠れた名曲”へ、より一層の輝きを与えている。(寺西 肇)親しみやすい旋律が並ぶさまのみを見れば、よくある名曲集のように思われるかもしれない。しかし、一聴すれば、このアルバムを裏付ける、しっかりとした音楽性を感じるだろう。それもそのはず、植草と早川はプロのオーケストラの現場に身を置き、先鋭的な活動を行って来た名手たちなのだから。楽曲ごとはもちろん、同じ曲中での色彩の違いを的確に表現する一方、時に音の擦れすら、大胆に表現へ採り込む。何より、ぴたりと寄り添う阿吽の呼吸から醸し出す温かな雰囲気は、幼少から互いを知り、共に高めあってきた2人なればこそ。これは、長い時間が織り上げた響きでもある。 (笹田和人)1989年イギリス生まれの俊英によるデビュー盤。生まれつき右手に障害を持つ彼は、全曲を左手のみで演奏・録音。こうしたプロフィールを知らなければ、多くの聴き手は両手の演奏と錯覚してしまうだろう。マッカーシーのピアノはそれほど緻密で、かつ洗練されている。中でも、ショパンとスクリャービンの練習曲で見せる超絶技巧の数々は圧巻の一言。その一方で、エイナウディやブルーメンフェルトの静謐な作品では、繊細な歌心と透き通るような美音で陶酔に誘う。まさに、彼のモットーである「Anything is possible」を体現した1枚だ。(渡辺謙太郎)バッハの最重要鍵盤作品といえる「ゴルトベルク変奏曲」を、ロマン派の作曲家ラインベルガーが2台ピアノ用に編曲。原曲を単純に分割するのではなく、新しい旋律や変奏を付け加えることで、より複雑に旋律同士が絡んでいく。つまり奏者には、それぞれのパートの精密さが求められ、相手の音色や歌い回しを尊重し、高め合うアンサンブルをしなくてはならない。ドゥオールの演奏は、それらを難なくクリアしており、編曲によって様々な要素の反復が増えているのにも関わらず、まったくそれを感じさせない変化に富んだ演奏。新たな発見や驚きに満ちた時間を楽しむことができる。(長井進之介)

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