eぶらあぼ 2016.2月号
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62タンブッコ(パーカッション・アンサンブル)新たな“音楽の地平線”を求めて取材・文:寺西 肇Interview 衝撃的なパフォーマンスで聴衆を魅了、グラミー賞ノミネートも4度というメキシコの世界的打楽器アンサンブル「タンブッコ」が、2015年の日本ツアーと平行して録音された新アルバム『カフェ・ジェゴッグ』をマイスター・ミュージックより発表する。タンブッコは1993年、メキシコ大学で学んだ奏者4人で結成。打楽器のためのオリジナル作品からクラシックの古典や前衛音楽までを“叩きこなす”一方、様々なジャンルの名手との共演にも積極的。映画『007 スペクター』に音楽で参加を果たすなど、新機軸も開拓している。アーティスティック・ディレクターのリカルド・ガヤルドは「ソロで活動していたものの、どうしても室内楽のプロジェクトに挑戦したくてグループを始めました。グループ名は、メキシコの作曲家カルロス・チャベスが64年に書いた、有名な打楽器のための作品から採りました」とグループ結成当時を振り返る。 新アルバムは、バッハからライヒ、邦人作曲家による現代作品まで、彩り豊かな7曲を収録。 「クラシック音楽の演奏家とその聴衆は、もっと音楽の多様性を認識する必要があります。演奏のみならず、どう聴くかも含め、我々は様々なジャンルの音楽に影響を受けているからです。このアルバムでは、タンブッコがどんな音楽から想像力を得たのかを表現しました。打楽器の豊かなサウンドを通じて、新たな“音楽の地平線”を発見してもらえれば幸いです」 さらに、「音楽に国境はない」と強調。邦人作曲家の紹介にも積極的で、当盤にも武満徹「雨の樹」と三木稔「マリンバ・スピリチュアル」の2作品が収められている。 「武満の作品には、豊かな色彩感や喚情的な音風景があり、三木の作品には、原始的な響きと祭りのようなリズムが存在する。私たちは作曲家独自の表現言語と、その創作課程について、きちんと理解するように務めています」 そして、アルバム・タイトルにもなったのが、名古屋音大の常設ガムラン・アンサンブル「スカルサクラ」との共演によるガヤルドの自作だ。 「私は金属製のガムランしか知りませんでしたが、今回の録音に使用したのは、竹製の『ガムラン・ジェゴッグ』です。2013年に来日した際に、名古屋音大でこの素晴らしい楽器とアンサンブルに出会ったことが、私に新作のアイディアを与えてくれました。また、打楽器アンサンブルの録音は非常に難しいのですが、私たちは今回のサウンドにとても満足しています」 「自分たちが培ってきたものを、若い世代と分かち合いたい」とガヤルド。そんな彼らの夢をきいてみた。 「新たな地平線、試み、そして創造…常に探検をしなくてはいけません。打楽器こそ、私たちの全て。それは出発点であり、終着点であり、道であり、その道を走るための車でもあります。音楽の無限の可能性を、聴衆のみなさんと分かち合う。それが、タンブッコの夢です」3/16(水)19:00 トッパンホール問 プロアルテムジケ03-3943-6677http://www.proarte.co.jp井上千ちもと本(ピアノ)大きな花束のような選曲で魅了文:笹田和人©K.Miuraソロはもとより、室内楽や歌唱伴奏の分野でも卓越した音楽性を発揮する、ピアニストの井上千本。東京芸大を経て渡墺し、名匠イェルク・デームスの薫陶を受け、1991年にはザルツブルク音楽祭への出演を果たすなど、精力的な演奏活動を展開する。日本女子大や立教大で指導にあたる一方、東京芸大大学院では伴奏助手として、第一線で活躍する声楽家の育成にも貢献。 2009年に同じトッパンホールで開催したリサイタルでは、20世紀フランスのシャミナードを軸とした独創的なプログラムから、骨太で奥行きのある世界観を構築し、聴衆の深い共感を得た。今回は、ベートーヴェンのソナタ第17番「テンペスト」を核として、ショパンのワルツ集からの5曲に「幻想ポロネーズ」、シューマン「アラベスク」、チャイコフスキー「四季」から「6月」と「11月」、ドビュッシー「月の光」「喜びの島」、そして、バルトーク「ルーマニア民族舞曲」で締めるという、咲き乱れる大きな花束のような選曲。果たして、どんな色彩豊かなプレイで、我々を魅せてくれるのか。CD『カフェ・ジェゴッグ/タンブッコ』マイスター・ミュージックMM-3067¥3000+税1/25(月)発売

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